SWEET SWEET SWEET

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赤い激流・第十八回 レビュー

第十七回はコチラ

「死刑判決に父と母の涙」

あらすじ

敏夫の判決が出る裁判が、2日後に迫った。判決の内容を恐れておびえる由美子だが、敏夫はひたすらピアノを弾いてすごし恐怖と戦っている。ピアノの音色を聞いて、武は由美子を励まし、妹の妙子は涙した。山田弁護士は、今のままでは敏夫に死刑判決が下る見通しが高いと説明する。しかし、高裁、最高裁まで戦うと言う。五年、十年はかかると言う山田に武は反論する。「そんなに待てない。ピアノが弾けなくては、敏夫君は生きている甲斐がない。敏夫が生きるには、高裁も最高裁もない。明後日の判決を無罪にするしかない」そのためには、真犯人を見つけるしかなかった。
大沢家に、髪を切ってさっぱりした明彦が訪れた。毎朝コンクールの本選の課題曲が決まったと言う。ベートーベンのテンペスト。明彦は二次予選で敗れたが、敏夫に優勝してほしくて、伝えに来たと言う。敏夫は明彦の分まで頑張ると宣言し、二人は握手を交わした。
敏夫が武のテンペストの楽譜を開くと、由美子が若いころの写真が挟まっていた。
武は弟の実とともに、検察庁の信一のもとへ行き、敏夫の無実を証明する方法を尋ねる。
信一は、敏夫が犯人だと納得させるため、本当は許されないことだが、検察庁の資料室へ二人を通し、資料を読むように話す。信一は父武の姿を見かねて、清司が死の前に言った、「これから1億円持ってくるやつがいる」という言葉を、もう一度洗いなおしたらどうかと去り際に言い残す。刑事は黙殺したが、1億円を持ってきた人間が清司に最後に会った人物には間違いない。武は、今まですっかり忘れていた事実を、実に話す。実は、それを聞いてアメリカに発つ前、宮島家の人間が清司にゆすられていたことを思い出す。宮島学長がゆすりの理由を実に教えるという約束を果たしてもらうため、宮島家に乗り込む。東山夫妻は、宮島学長が不在だと言い、武をゆすり呼ばわりし、名誉棄損で訴えると怒る。実は、宮島学長が真実を話す約束をしていたことを理由に迫るが、そこへ宮島あやが「大沢家や敏夫のことは心配しているが、ゆすられていた事実はない」と断言する。学長は、宮島家にはいなかった。
その押し問答を明彦が聞いていた。明彦は華江に武と実の訪問を話す。東山夫妻とあやは、華江を止めるが、武や敏夫の窮状を黙ってみていられない華江。あやは、そんな華江に迫る。「あなたも宮島家の人間なら、私たちの苦しさが分かるでしょう。田代清司にゆすられていた事実が知れれば、宮島家も、大学もおしまいなのよ。大学を失って、おじい様はどうやって生きていくの?おじい様を苦しめないで」しかし、華江は祖父と敏夫への愛に心を裂かれながらも、敏夫に会って、宮島学長が入院している病院を話す。
敏夫は学長が入院する病院に行き、「このままでは死刑になる。清司にゆすられていた理由を教えてほしい」と迫る。敏夫は、学長が弾いてくれた「ラ・カンパネラ」を聞かせ、このピアノを聞いて、うれしくて泣いたことを話す。「ピアニストって何です?一生ピアノを弾くことでしょ?これを聞いて、おじいちゃんみたいなピアニストになりたいって思った。一生ピアノを弾きたいって思った。死にたくない。助けてほしいい。大沢先生のことも助けてほしい。大沢先生の後を継ぐ俺が死んだら、大沢先生のピアノも死んじゃうよ。これほど素晴らしいピアノを弾く人ならば、教えてほしい」と話す。
「わかった。武君を呼んでくれ。真相を話す」ついに学長が覚悟した。
病院に駆け付けた武は、そこで友人の西条医師に会う。西条医師も敏夫を心配し、裁判を傍聴すると言った。学長は、正彦の裏口入学を話す。その場にあやも居合わせ、武に大学の不正を世間に公表しないでほしいと暗に要請する。武は正彦にその話をし、1億円のことも聞いてみる。が、正彦はもちろん認めず、さらにアリバイがあることを話し、嘲る。正彦は不倫相手のマンションにいたのだ。武と由美子はアリバイの検証をしてみるが、その結果、殺害がそれほど不可能ではないことが分かる。清司のマンションと不倫相手のバーのマダム・真山玲子が住むマンションは目と鼻の先だった。マダムは、正彦の様子がいつもと変わりなかったと話す。武は真実を話してほしいと頼むが、追い返される。マダムは正彦に連絡するが、その電話を菊子が聞いていた。菊子はバーに乗り込み、マダムに嫌味を言いつくして、手切れ金を渡す。
敏夫はマダムが店から出てくるのを見計らって、マダムを車に拉致する。敏夫は正彦の帰り際、マダムが「私が一言しゃべれば大変なことになる」と話しかけるのを聞いていた。敏夫は車を散々飛ばしてマダムを怖がらせる。敏夫の度胸を認めたマダムは、恥をかかされたお返しと、証言することを決める。
大沢家に来たマダム・真山は、山田弁護士に、一億円を用意した人物を知っているので、裁判で証言すると約束する。しかし、その人物がだれかはその場では言わなかった。これが実現すれば、裁判が無効になる可能性がある。弁護士とマダムが帰った後、武は喜んで、テンペストの新しい楽譜を取り出すが、敏夫は古い武の楽譜でいいと言う。敏夫は由美子の写真を取り出し、テンペストは先生と母さんの思いでの曲だろ?と聞く。昔、武は由美子にテンペストを良く弾いて聞かせたと言う。武は敏夫に、思い出の曲、テンペストを弾いて聞かせた。大沢家は希望にあふれた。
マダムが自宅に戻ると、札束が詰まったアタッシュケースと航空券、さらに椅子に腰かけ、酒を飲む人物が待っていた。「取引しようってわけ?」マダムがにやりと笑った。
裁判当日、武と実がマダム・真山の自宅に行くが、近所の女性が、真山は旅行に出かけたと教えてくれる。兄弟はあわてて羽田空港に向かい、真山を探す。
敏夫は裁判所で大沢兄弟と真山の到着を待つ。宮島家も裁判所に来て、華江と明彦が敏夫を励ました。飛行場で武と実は真山をついに見つけるが、真山に証言する気はもはやなく、二人から逃れ、どこかへ旅立ってしまった。
裁判が始まった。山田弁護士は、証人が遅れていることを理由に裁判の延期を申し出るが、裁判官は、その必要を認めず、判決が読み上げられた。
「被告人、田代敏夫を死刑に処する
武は、真犯人に怒りを燃やすしかなかった。
敏夫は東京刑務所に収監される。護送車に乗り込む敏夫に、武と由美子は追いすがる。テンペストの楽譜を返すと言う敏夫に、武は諦めるなと叫ぶ。武は「きっと真山玲子を探し出し、助ける」と断言した。親子が、護送車の窓越しに見詰め合う。
「先生、母さん、さようなら」
「生きて!どんなことがあっても、生きて!」
由美子は護送車を追いかけながら泣き崩れた。


感想。

すっきりしない回である。
全くすっきりしない。
すっきりしたのは、明彦の髪型だけだった。

すべてが空回りの回だ。
武と実は、勇んで宮島家に真相を尋ねに行くが、あっさりと追い返される。宮島家に抵抗する華江を、あやは、やはり論点をすり替えて引き留め、敏夫は学長から真相を引き出すことに成功するが、論点をすり替えたあやによって、真実の公表は止められる。正彦に真実を迫るが、あっさりとはぐらかされ、マダム・真山には翻弄されるだけ。
山田弁護士は、優秀なはずなのに、裁判のその時まで証言の本当の内容を確認しないまま終わってしまった。
大体、今まで1億円云々のくだりを忘れていたとは何事かね。しかも、信一も今頃言うなって話である。

そもそも、敏夫の死刑と、宮島音楽大学+学長の生き死には、同列ではない。それは全く別の話としてとらえるべきである。それなのに、敏夫の死刑の話をすると、あやは必ず宮島家の名誉に論点をすり替えて、華江や武の情に訴えて話の進展を妨害する。
ではどうすれば良かったのかというと、やはり正彦を免職すべきだったのだ。清司に脅された時点でそうしておけば、まだ傷は浅かったかもしれない。
その責任問題に蓋をして、宮島家の保身のみを訴えるあやは、やはり論点をすり替えているとしか言いようがない。まぁ、それは客観的に見ている者だけが言えることで、実際そうなってみれば、なりふり構っていられないのだろう。
それにしても、マダムの証言とは一体何なのだろう。一億円用意した人物が、正彦とは限らないと、マダムはほのめかしている。それほどの証言を今まで黙っていたとなると、なんだか別の問題も出てきそうだ。自分が一言いえば、大変なことになると正彦を脅してもいるが、正彦はこんなことになっても、まだ大学や宮島家に居座るつもりなのか。しかも、菊子にばれるまで、愛人関係も解消しようとしていない。ひどいね。
全く反省してないな、この男。

第十九回につづく・・・
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赤い激流・第十七回レビュー

第十六回はコチラ
「私の息子を殺さないで!」

あらすじ

毎朝音楽コンクール第二次予選まで、あと3日。
敏夫は大沢家でピアノを練習を続けた。今日は検察による論告求刑の日である。不安で一睡もできない大沢夫妻だが、武は、どんな求刑だろうと、敏夫君は私が守ると決意する。
裁判が始まった。検察側の証人として、大沢信一検事が呼ばれる。信一は、今までの敏夫に迷惑をかけられていたことを強調して・・・というより、ありのままに話す。乱暴でうそつき、自分に何度も喧嘩を吹っかけていたこと、何度も父親を殺したいと言っていたこと、妙子の気持ちを傷つけ、華江にちょっかいを出していたことも話す。弁護側の証人は武だった。武は、乱暴でうそつきということを否定し、繊細で、傷つきやすく、それゆえいつも悩んでいる青年だと証言する。真の芸術家が人を殺せるわけがないことを訴えた。
正反対の証言だが、検察側は、武が義理の息子、ピアノの弟子として敏夫をかばっていること、弁護側は、信一が華江にちょっかいを出す敏夫を憎んでいることを指摘する。
検察側の求刑は、尊属殺及び放火の罪で、死刑だった。
敏夫は死刑の求刑に絶望し、検察庁の屋上で父に「生きているなら出てきてくれ」と語りかける。そんな敏夫を華江は勇気づけようとし、敏夫は華江を連れて出かけようとするが、信一が止める。信一は敏夫と清司の今までの行為を責め、こうなったのも田代親子の責任だと言う。敏夫は、「自分が責められるのはいいが、父さんを侮辱されるのは許せない」と、信一を殴りつける。そんな二人を、東山夫妻は、冷笑的に眺めていた。それを武と由美子が止める。敏夫は、信一の大事な華江をめちゃくちゃにすると言って、華江を連れ去る。信一は、すぐに保釈の取り消しを求めようとするが、武と由美子に、「死刑の求刑をされたのだから、少し落ち着かないだけだ」と止められる。由美子が信一に取りすがって「あの子は華江さんに乱暴をするような子ではない」と、息子が死刑になる恐怖におののきながら訴えるさまを見て、「今回だけは見逃すが、次はない」と言って信一は去る。
敏夫と華江は、海辺に来た。帰れと言う敏夫に、華江は、命令されるのは嫌い!と言って、どこまでもついてくる。敏夫は、華江をめちゃくちゃにすると言って、襲いかかろうとするが、華江が無抵抗なのを見て、すぐにやめる。敏夫は、「あんたは信一のような上品な奴らに飽きているだけ。俺みたいのが珍しいだけだ」と言って笑う。華江は「確かに信一さんと婚約しているけど、私が好きなのはあなたです」と告白してしまう。
敏夫は、「何も信じられない。裁判所や検事に殺されるくらいなら自分で死ぬ」と、海に飛び込む。華江も追いかけるが、やはり敏夫は死にきれない。
華江に助けられ、海や空、自然が生きていることを感じて、「死にたくない。生きていたい」と漏らす。
東山夫妻は中川検事に敏夫が華江を連れて逃げたことを伝え、中川検事は、敏夫の保釈取り消しを決める。宮島家では華江のことを心配していたが、華江から電話があり、宮島家の別荘に二人でいることがわかる。敏夫はその別荘でひたすらピアノを弾いていた。武と由美子が別荘につくと、敏夫は「ピアノさえあれば、裁判も、死刑も、何もかも忘れて生きられる。俺は何も怖くない」と話す。その時、別荘に検事が来た。保釈を取り消すと言う。弁護士の山田は、たった一度、保釈の要件を破っただけで保釈取り消しはやりすぎだと訴えるが、聞く耳は持たれない。
宮島学長と、東山正彦が大沢家を訪れた。宮島学長がコンクールの審査委員長、正彦が審査員に選ばれたのだ。コンクールの内規では、犯罪の容疑者は、出場を認められないと言う。武には、どうしようもなかった。
拘置所で、武は敏夫に保釈が認められないことと、コンクールに出場できないことを伝える。敏夫はやけになり、「先生は俺をだました」と言って笑いながら面会室を出て行く。武は、自分の力のなさを謝るが、由美子はあなたを責められる人間は誰もいないと言う。
武の弟、実がアメリカのコンサートツアーから戻った。久しぶりに飲み屋で語り合う兄弟。法律と内規の前に、自分の無力さを嘆く武に、「法律は、人間が作ったもの。それは人間にしか壊せない。規則や法律よりも強いもの、それは真実だ。真実が、負けるはずがない」と、諦め顔の武を励ます。どうすればいいのかわからないと言う武に、「負けと決めてかかるのは兄貴らしくない。コンクールのほうは俺がやる。兄貴は検事のほうをあたれ。真実の塊になってぶつかれ。」「兄貴、相撲と同じだ」と、昔武が相撲で強かったことを上げて、「真実で思いっきりぶつかれそうすれば、相手はひっくり返る」と励ます。その言葉に、武は命懸けでやることを誓う。
コンクール当日。実は審査員の前で、訴えた。「内規により田代敏夫という素晴らしい才能が消えようとしている。尊属殺の容疑者、それだけで出場を認めないのはばかげている。犯罪の容疑くらいで、音楽的才能を見捨てるのか。それはこのコンクールをつぶすことだ。くだらないことは忘れて音楽だけを愛してください。田代敏夫のピアノを聞いてあげてください。音楽の前に人間は平等だ。音楽の才能を発見するのがあなた方の仕事だ。真実の音楽を殺さないでいただきたい」一人の音楽家として、大沢実が頭を下げた。
「実君。わかった。田代敏夫を出場させる」宮島学長が、敏夫の出場を許可した。
変わって検察庁。
武が相変わらず中川検事に頼み込んでいるところに、山田弁護士が、華江を連れてきた。敏夫が東京を出たのは、華江が無理やり連れだしたからだと。華江の証言だけでは信じられないと言う中川に、山田は証人をもう一人連れてくる。信一だった。信一は、確かに華江が敏夫を連れ出すのを見たと言う。今から裁判所が保釈を認めるのでは間に合わないため、検事の権限で即保釈にしてほしいと信一は中川に頼んだ。
信一は、「華江さんのためじゃない。父さんのために証言した」と言って、部屋を出て行った。
拘置所から敏夫が出てきた。武と由美子はそれを迎えるが、敏夫の手を見て、武は仰天する。やけになった敏夫が拘置所の壁で手を傷つけ、血だらけだったのだ。こんな手では、ピアノは弾けないと言う武に、敏夫と由美子は、ピアノを弾かせてほしいと頼む。怒っていた武だが、由美子の剣幕に押されて、ピアノを弾くことを許可する。
コンクール会場では、敏夫の順番が来ていた。会場の客席入口から姿を現す敏夫。舞台に近づきながら、武は、「私や由美子、田代君を愛しているなら、その愛をこめて、力いっぱい弾いてくれ」と最後に話す。舞台に上がろうとする息子を止め、由美子は血だらけの手を口で拭い、送り出す。敏夫が弾き始める。由美子は泣き崩れながら聞いていた。
演奏が終わる。武は、「技術はともかく最高に心のこもった美しい、きれいなカンパネラだった」と弟子をほめた。敏夫は、「これからは、先生のために、母さんのために、おやじのために、俺を愛してくれるみんなのために、弾いて弾いて、弾き続ける」と宣言する。


感想

今回は、なんというか・・・いろいろとアレな回だった。

まぁ、最もアレな内容は、最後に回すとして。

とうとう敏夫の死刑が求刑された。
検察側の証人・信一と弁護側の証人・武の意見の食い違いがここまで顕著なのは、かなり笑えるが、ここまで周囲の者に対する印象が違う敏夫という人間を、どこかの研究者が論文のテーマにしてもいいのではないかと思う。

あー、それにしても東山夫妻は頭にくる。あんたら一体何がしたいんだと言う感じ。検事に告げ口するわ、コンクールの審査員になるわ、いいとこなしである。この時点で、視聴者が考える容疑者No.1に、正彦先生が躍り出たはずだが、どうだろう。大体、息子の明彦がコンクールに出ると言うのに、審査員になるのはどうなんじゃ。それこそ辞退すれば?それを言うなら、宮島学長もだけど。孫が出場するんだもんね。

今回もおいしいところは実叔父さんが持って行ってしまった。
さらに、名言きた。
兄貴、相撲と同じだよ
ど、どどど、どこら辺がですかー?(@_@;)
と言うのは現代の視聴者の突っ込みであるが、ここでも時代を感じる。
当時の相撲人気は、それこそ現代と比べ物にならなかったんだろう。
「相撲だよ」というセリフで得心した視聴者が多かったんだろう。そうなんだろう。
そういうことにしておこうゼ☆
さらに、「尊属殺人、それだけで」とか「(殺人の容疑者だとか、)くだらないことは忘れて
・・・マエストロ・大沢実にしか言えないセリフであろう・・・。
凡人には、結構くだらなくないように聞こえるがな。

敏夫が海で自殺未遂。
華江が、敏夫の水難を救助するのは、これで三度目の春。
なかなか艶っぽいシーンであったが、なるほど、敏夫がカナヅチだという設定は、ここで生きてきたのね。海の波が結構高かったので、割と危険な撮影だったのだろう。宮島華江は、真っ赤なワンピースでの撮影だった。
本当に体当たりの演技だ。

そして残念だったのは、武が保釈になった敏夫の傷ついた手を見て、激怒するが、由美子の剣幕に押されてピアノ演奏を許可する・・・というところ。これが、かなり駆け足になっちゃって、視聴者的に「なんだったの、いまのは・・・(?Д?)」と、ぽかーんとするシーンになってしまった。「時間が足りない詰め込み最終回」みたいな駆け足シーンだった。
しかし、敏夫の演奏が、完璧で素晴らしいと言うことにしなかったのは好感が持てた。武も、「技術はともかく」と言っている。いくらなんでもほとんど本物のピアノで練習していないのに、最高の演奏というのは嘘であろうから。そこはバランスが取れていてよかった。

とにかく、今回のピアノ演奏で、敏夫はピアノを弾くことが自分の人生であること、さらにピアノを弾くことは武、由美子、清司、さらには自分が愛する者のためであることを悟る。今までひたすら恩返しの為に弾いていた敏夫から、一つ成長したと言えるだろう。

さて、最後に、最もアレな部分。
今回は編集の問題だが、また時系列が狂っちゃったんだよね。
コンクールが始まって、観客席にいたはずの華江が、なぜか次のシーンで検察庁にいて、敏夫のために証言する。で、喜んだ武と由美子が敏夫を連れてコンクール会場に来ると、また華江が客席にいる・・・と。ちょっとつじつまが合わないのでした・・・。

第十七回につづく・・・。
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赤い激流の人々。

今まで、すべて文字だけで説明してきたましたが、ここらで絵で分かってもらうのもいいかと思って、ちょっとあげてみることにしました。
ひとまず、休憩です。
何か不都合がありましたら、コメント残してください。
すぐ削除しますんで。

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主人公二人。田代敏夫(水谷豊)と大沢武(宇津井健)
ピアノの練習中に、清司に邪魔されているところ。

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ウナギの弁当を拾う武。

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大沢実(石立鉄男)カッターシャツのセンスに脱帽。

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感動のプールで説得の場面。スーツ台無し。

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すべての元凶・田代清司(緒方拳)。ルンペン時代。若い。

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ストライプ×ストライプの効果やいかに。

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この笑顔は、後の緒方拳をほうふつとさせる。

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ピアノを弾く東山正彦(前田吟)。このときのかっこよさは異常。

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正彦先生と宮島学長(小沢栄太郎)。学長の背広は茶系が多い。

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寝間着にナイトキャップの宮島あや(赤木春江)。高齢者は早寝なので、騒ぎの最中に寝間着のことが多い。

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昭和を代表する大沢由美子(松尾嘉代)。

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大沢信一(中島久之)と三択の女王・宮島華江(竹下景子)。

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信一が父に向かって笑うのは結構珍しい。

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なかなか融通の利かない江上刑事(加藤武)。

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パパに頭が上がらない頃の東山明彦(堀内正美)。

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ちょっとしっかりしてきた明彦と華江。東山夫妻との対立が激化。

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東山・バッバァ・菊子(馬淵晴子)。この冷徹な瞳にしびれる。

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ひそかに片思い中の大沢妙子(久木田美弥)。

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最後に、公園で追いかけっこする武と敏夫。

いかがでしょう。今回はこの辺で。
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赤い激流・第十六回 レビュー

赤い激流第十五回はコチラ

「死んだ父さんの復讐が始まる」

あらすじ

毎朝音楽コンクール第二次予選まで、あと一週間。
敏夫の中川検事(中山仁)からの取り調べも最後の日になった。検事は罪を認めろと迫るが、敏夫はピアノの練習で取り調べも上の空だ。本物のピアノ弾けないことで、敏夫の精神力も限界になっていた。大沢家にはマスコミが押し寄せ、敏夫とコンクールについて武に取材をする。そんな時も、清司を名乗る男から電話がかかってくる。
武が面会に訪れ、レッスンをするが、敏夫はピアノが弾けないことにいら立っている。山田弁護士(原智佐子)が保釈の申請をしていた。中川検事は強硬に反対するが、武が敏夫の保釈を望むのは、一時間でも長くピアノを練習させたいから。敏夫も同じ気持ちであることを訴える。敏夫の夢をつぶさないでほしいと、裁判官を説得し、保釈の許可が下りた。
しかし、保釈金は500万円に設定された。大学の退職金は、由美子や敏夫の弁護料でかなり減っていた。貯金を合わせても、半分は足りない。武は金策に走り回るが、ローンは組めない。最後の手段で宮島家に借金を申し込むが、学長夫妻は不在で、東山夫妻は首を縦に振らなかった。殺人犯に金を貸せないと言う。武は敏夫が殺人犯ではないこと、それはコンクールでの演奏を聞けば分かるはずと、正彦に詰め寄る。話を聞いていた華江と明彦も同調するが、武はそんな二人に礼を言って立ち去る。華江は、東山夫妻が清司に脅されていたことをばらされたくないから敏夫の保釈に反対なのだと言って、責め、宮島家には、全員アリバイがないことを指摘した。東山夫妻は、殺人などするわけはないと怒る。
そこへまた清司から東山夫妻に手紙が届く。武や敏夫をいじめると、許さないと言う内容だ。
万策尽きて、武は家を売ることにする。信一は、敏夫のために武が財産を手放すことに怒るが、妙子は敏夫兄さんのためなら、家などいらないと言う。
信一は、敏夫のことなど弟とは思わない、家を売るなら自分は出て行くと言う。由美子は、この家を手放すなど、亡くなった奥様に顔向けできないと嘆くが、武は「息子が拘置所にいるのに、親が家でぬくぬくとしているなんてありえない。子供を助けるためなら、親は死んだっていいんだ。私のやることは、500万円作ることだけだ」と断言する。「信一も、薄情な子ではない。わかってくれる」と由美子を慰めた。
敏夫が保釈された。敏夫は武に抱きついて喜ぶが、江上刑事が保釈中は敏夫に張り付くことが分かる。家に戻った敏夫は、まっすぐピアノに向かい、練習を始める。
「カンパネラは教会の鐘。神の声だ。大空から見下ろす、神の声を歌い上げろ」武の指導も開始された。由美子と妙子が作った料理を、敏夫は喜んで食べる。敏夫は、家のありがたさをかみしめていた。信一が仕事から戻るが、敏夫に保釈中の注意を与え、これから自分は検察庁の寮で暮らすと話す。「未決囚と検事は一緒に暮らせない。父が敏夫のために家を売り、無一文になったことをよく考え、絶対に忘れるな」とののしる。武はそんな信一を思わず殴った。「信一、なぜ私が殴ったか分かるか。家を売ったのは、みんな私が勝手にやったことだ。敏夫君に恩を着せるな」武はそういって叱るが、信一は出て行く。敏夫はそのやり取りを聞いて、「ありがとうございます。本当にすみません」と頭を下げた。「こうなったら、必ずコンクールに優勝し、一流ピアニストになって恩返しする」と言って、ピアノに向かうのだった。自分の部屋に一人になった敏夫は、辛さに涙する。
夜中、敏夫は宮島家に忍び込んだ。明彦と華江は、敏夫を歓迎し、東山夫妻の寝室に案内する。敏夫は正彦に武を大学に戻すように願い出る。敏夫が殺人で逮捕されているからそんなことはありえないと笑う正彦に、敏夫は怒る。正彦は敏夫を挑発し、敏夫が殴りかかろうとするのを、華江と明彦は止める。警察に連絡しようとする菊子を、明彦は「そんなことしたら、ただじゃおかないぞ!バッバァ!」と電話をひったくった。華江に説得されて、敏夫は今夜は諦めた。宮島家から出てきた敏夫を、江上刑事が迎える。保釈を取りけすと言う刑事を、武が駆けつけて止めた。敏夫は、自分のために武が無一文になったことを嘆く。武は「私は無一文だろうとへこたれない。敏夫がコンクールに優勝すれば満足だ。君が田代君を殺していないことが真実だ。真実とともに生きるんだ」と励ます。
ピアノのレッスンを続ける敏夫に、リストの本が届いた。やはり清司からだった。さらに山田弁護士にも、田代清司から電話がかかる。「あの焼け焦げの死体は田代清司ではない。それを証明しろ」という内容だ。山田弁護士は、清司が生きていれば、裁判自体が無効になることを指摘し、次の公判でその点をついてみることにする。
山田弁護士は、徹底的に証拠の不備を指摘するが、中川検事はそれに反論し、証拠を提出する。武も検察側の証人として証言させられる。武が清司の叫び声を聞いて、火事に気付くまで、30から40秒しか経っていないことが分かった。死体の骨格などからも、清司の死体に間違いないことを検察は主張する。しかし、敏夫はどうしてもそれを認めたくなかった。武は、敏夫がピアノを弾いている限り、清司は敏夫の血、体に生きていると話し、由美子と3人で家に戻った。


感想

明彦の髪型がすっきりした。

ってことだけで、今日は勘弁・・・。
というわけにもいかんのだろう。

えーと。
今回も濃かった。
みんな辛い回だ。

敏夫もつらい。
が、拘置所でピアノが弾けなくて怒って壁を叩いて八つ当たりする。そこはやはりピアニストとして、なぜ手を大事にしないのかと突っ込んでおくべきなのだろう。
それにしても、武の無職を自分のせいにされ、武の無一文を自分のせいにされ、武の腕のけがも自分のせいにされ、清司が死んだのも自分のせいにされている。
自分ではどうしようもないのに・・・本当につらい。
それにしても、さっそく宮島家に潜り込んだのには吹いてしまった。
お前、自分の立場が分かっていないだろうと。
明彦も同じように思ったらしい。
「やっぱり君ってすごいね
なんて、やはりちょっととらえ方がずれていたが。

信一もつらい。
彼は長男として、父と家を守りたいだけなのだ。
しかし、その言動は相手を傷つけ、父を怒らせるだけだった。
前々回、ちょっと信一は態度を軟化したかと思われたが、やはり「僕は敏夫を弟とは思っていない!」と宣言してしまった。ま、仕方ないか。
それにしても、信一の家でのファッションは、マンシングウエアが多い。あのペンギンのマークね。当時流行っていたんだろうか。きっと箪笥はマンシングのシャツでいっぱいなのだろう。無難だしな。

武だって辛い。
何しろ、金がない。次々と借金を断られる。愛する者のためには何でもやるのが彼の信条だが、そうは言っても、正彦に借金を頼むのは辛かっただろう。こんな時に限って、宮島学長とあやおばあちゃんは、伊豆に療養に行ってしまっていて、役に立たない。
そして、彼の正直さ加減が、視聴者にとってもだんだん辛くなってくる。
何しろ、正直なのだ。
中川検事に、敏夫の保釈のためなら何でもやると言われ、裁判官の前で、「そりゃそうですよ。なんでもやります」と元気に答える。それを逆手に取られて、敏夫の逃亡の手助けもしかねないなんて言われてしまう。
でも!
最後には武の誠意がいつだって勝つのだ。そこに視聴者はホッとする。
よかったね。

そんな中、東山夫妻の憎たらしさは異常。
正彦先生こそ大学を辞めるべきなのに・・・(ってまだ言ってる)。
明彦はコンクール直前のパイプ乱打事件以来、本当に吹っ切れたようだな。バッバァの言い方もサマになってきた。
ここで「バッバァ」について説明する。初期のころ、明彦が気の弱さを敏夫に相談したとき、母親を「ママ」なんて呼んでいてはだめだ、ババァと呼んでみろ、と教えを受けた。明彦は、それ以来なぜだか「バッバァ」と、そこはかとなく珍妙な発音で母を呼ぶようになり、それが母菊子の悩みの種となっているのだ。
華江と東山夫妻の対立は、深刻なものになりつつある。そんな親戚と一つ屋根の下で暮らさなくてはならないのだから、華江もつらいところだ。っていうか、同年代の従弟と同じ家で暮らすってどうだろう。しかも、明彦って一応、華江にプロポーズしてんのよね。信一はそこんとこどう思っているわけ?
まぁ、いいけど。

清司生存説に、ようやく決着がつきそうだ。これもまた時代だ。現代ならDNA鑑定とやらで一発だっただろう。それなのに、裁判という場で、生死の是非が問われるのだから、大変だ。いや、放送当時だって、「今頃それ?」って思った視聴者はいただろう。

第十七回につづく・・・
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赤い激流・第十五回 レビュー

第十四回レビューはコチラ

「殺された夫からの電話?」

あらすじ

敏夫が留置所に入れられた。警察は頭から敏夫を犯人と決め付け、敏夫の供述を全く信用しない。母由美子は敏夫の好きなものばかりを弁当に詰めて、武に差し入れしてもらう。武はいつものように江上刑事に誠意で当たり、敏夫の無実を訴えるが、半分迷惑がられている。敏夫の供述で、清司と敏夫が昼間ナイフを持って格闘した公園を大規模に捜索したが、格闘した痕跡や血痕、ナイフはついに見つからない。武と由美子も警察に混ざって捜索を手伝うが、無駄骨に終わる。
大沢家では、親戚一同が集まり、武や敏夫のことを心配していた。東山正彦は、その場で武に大学の退職金を渡す。信一は、清司が亡くなったのだから、父を大学の楽理の教授にしてもいいはずと、学長や叔父の正彦に詰め寄る。しかし、正彦は武の義理の息子の敏夫が殺人容疑で逮捕された以上、大学に戻ることは無理だと拒否する。信一は、そもそもなぜ清司が、武の辞職を宮島家に要求できたのかを知りたがるが、祖母のあやは、「華江の婚約者なら、宮島家を侮辱することはやめなさい」と、やはり論点をすり替えて説教し、黙らせた。そんな時、華江が大沢家に届いた手紙を見つける。その手紙とは、田代清司からの手紙だった。内容は、敏夫のコンクール一次予選一位通過を喜び、武に引き続き指導を頼むと言うものだった。正彦たちは、清司が生きているのかと驚くが、信一は、単なるイタズラだろうと、一笑に付す。
敏夫の拘留は続く。敏夫に有利な証拠を見つけられないまま、時間だけが過ぎて行った。敏夫のアリバイがないと言う警察に、武は何でもいいから思い出せと敏夫に詰め寄る。敏夫は、ようやくあの晩、公園で酒を飲んで浮かれていた時に、「Rykiel」と書かれたセーターを着た女性に抱きついたことを思い出した。すると華江が、そのセーターをファッション誌で見つけ出し、ブランドを特定する。そのセーターの色は、パリでしか売り出されていないものだった。武は喜んで、毎朝新聞の知り合いに、尋ね人の広告を出すことを依頼する。毎朝新聞の記者は、毎朝テレビや新聞で、大々的に広く情報を募ることを約束してくれる。
しかし、いくら待っても「Rの女」本人はおろか、目撃者すら現れなかった。そんな時、警察に一本の電話がかかってきた。田代清司を名乗る人物からだ。「俺は生きている。敏夫は俺を殺していない」と言う内容だ。警察は、いたずらとして相手にしないが、大沢家にも田代を名乗る手紙が届いていることを知る。
ついに、敏夫の起訴が決まった。
信一は静かに起訴を武に教えるが、武は、清司がフランスに恋人を持っていたことを思い出し、その女が清司を殺しにやってきたのかも…と推測を述べる。信一は、推測では何の役に立たないこと、絶対的な証拠がなければ、敏夫は尊属殺人で死刑になることを告げ、部屋を出て行く。
それを聞いていた由美子は、半狂乱になって泣き叫ぶ。
しかし武は由美子を抱きしめ、「泣いてどうする。私たちが泣いてどうする。私たちしか、敏夫君の味方はいない。私たちで必ず敏夫君を助ける」と励ますのだった。
毎朝音楽コンクールの第二次予選課題曲が決まった。
リストの「ラ・カンパネラ」。
しかし、武の指では、敏夫に最高の演奏を聞かせることはできない。武は考え抜いたすえ、宮島学長にピアノの演奏を依頼する。宮島学長は、かつてリストの演奏で世界的に評価されたピアニストだったのだ。しかし、病み上がりの学長に超絶技巧の曲は難しい。敏夫は、「学長の音楽の技術と精神を敏夫に伝えたい」と口説き落とす。妻のあやは、「あなたのピアノが、敏夫さんの中に生き続けて、将来に残るんですよ。死に花を咲かせるつもりで、やって欲しい」と懇願する。学長は、自分が死んでも、敏夫の中に自分のリストが生き残ると、希望を託して演奏に挑戦する。
演奏は無事に終わった。学長の体力の消耗は激しいが、最高の録音が出来た。学長は、「これが最後の贈り物になるかもしれない」とつぶやいた。
敏夫は拘置所に送られた。敏夫の精神は追い詰められている。全く希望を捨ててしまったようだ。コンクールのことなんて、何も話したくない。何も聞きたくないと言う敏夫に、武は学長の演奏を聞かせる。その音色に、敏夫は釘づけになった。「病気で体が弱っている学長が、最後の力を振り絞って演奏したリストだ。宮島学長はお年だ。しかしこの音は若々しい。ピアニストは、死ぬまでピアニストだ!いつまでも、若々しい音が出せるんだ」武は、日本で最高のリストを聞いてマスターすることを命じる。ピアノがないと言う敏夫に、「壁、床、すべてをピアノのキィだと思って叩け。練習しろ」と返す。
「みんな忘れて、弾け。弾いて弾いて弾きまくれ。田代君のために、弾くんだ。」そう言って、敏夫に楽譜を見せる武。
母さん、俺、先生にどこまでもついていく」
わずかに笑顔を見せる敏夫に、武は確信を持って言う。
「必ず勝つぞ。俺は、田代君に約束したんだ。君を必ず優勝させると

敏夫は拘置所の床に白墨で鍵盤を描き、練習を始めた。学長のラ・カンパネラを頭の中に響かせながら。

毎朝音楽コンクール第二次予選まで、あと一か月。


感想

きた。
尊属殺
この、「実の親を殺したら死刑」
という法律によって、今後の展開は成り立っている。
一応説明しておくと、この法律は、非常に歴史のあるもので、なんと大宝律令の昔から存在しているそうな。
しかし、このドラマのあったあたりから適用されなくなり、次第に有名無実となり、1995年には完全にその姿を消してしまった。
そういえば、昔の漫画で「親殺しは死刑じゃ」というフレーズを読んだことがある。
まぁ、これによって今後の無茶とも言える怒涛の展開もある程度許されるものになっているのだから、たとえ現代の視聴者でも、「そういうものだったんだ」と、頭から納得して見ることをお勧めする。

設定上の注意点は、これくらいにして、本日の感想。というか、お笑いポイント。
いや、お笑いポイントは後に残しておこう。そうしよう。
だって。
今回は、本当に真剣に泣いてしまったのだから!
真剣に心に迫ってきた。
どういうことだろう。いや、いいんだけど。
信一の「敏夫は尊属殺人で死刑だ」という捨て台詞を聞いていた由美子。
その反応が・・・。
まさに半狂乱。息子を理不尽すぎる理由で失う母の心情がこれでもかと迫ってきた。
髪を振り乱し、その身を投げ出して悲しむ母。
この松尾嘉代の演技は素晴らしい。必見である。

笑うのは、武。
敏夫を信じるあまり、だんだん妄想入ってきている。
いや、本来なら笑うところではないのだ。彼にしてみれば、何とかして敏夫を助けたいあまり、わらにもすがる思いなのだろう。
Rの女」のことを考え続けた結果だろうか、何の脈絡もなく、「Rの女」が殺害に関係しているという妄想を信一に話し出した!
この父の言動には信一も焦っただろうなーと、ちょっと同情してしまったよ。この宇津井健が言う「Rの女」っていう発音がまた独特で耳に残るのだが。
そういえば、Rの女が着ていたセーターがフランスでしか売られていないことを知って、パリにいる娘・紀子の先生、美津子に協力を要請しようという提案が、なぜだか具体的にならないうちに、どこかへ消えてしまった。これもまた唐突に思えるが・・・まぁ、この件はそっとしておこう。

そして、あや。
彼女は論点のすり替え女王だ。信一も検事なら、論点のすり替えにだまされるべきではないのだが、そこは華江の婿というにんじんをぶら下げられた身。反論はできない。
そういえば、信一は華江と結婚したとして、宮島家の婿に入るのだろうか?
もともと、華江は宮島家の跡取りとはっきり言っているのだから、みんなそのつもりなんだろう。
信一はどうだか知らないが。
そうなると、大沢家の跡取り問題が勃発するのだが、そこはどうなっている?
大体、信一の性格からして、婿に入るとはとても思えないのだがね。
こういうことは最初にはっきりさせておくべきだよ、信一。

最後に小ネタでお笑いポイント。毎朝新聞社の、毎朝音楽コンクール実行委員室(?)の壁は全て毎朝音楽コンクールのポスターで埋め尽くされている。
張りすぎだろ、どう考えても。

今回も疑問点が多かったが、さらに突っ込んでみると、殺人の容疑者と、面会人があんなにフランクに会えるものなのだろうか?華江なんて、面会の申し込みもせずに、雑誌を敏夫に見せてワイワイとやっている。ちょっと油断すると、かなり和気あいあいとした場面に見えた。

ちなみに、エフゲニー・キーシンによる「ラ・カンパネラ」の動画はコチラ
この動画を見れば、病み上がりの宮島学長に弾かせることがどれほど無茶なのか分かってもらえると思う・・・。
敏夫の、「床の上でラ・カンパネラ」であるが、これは水谷豊がやるからサマになると言わざるを得ない。
別のドラマで、自称・天才ピアニストの娘が「紙のピアノじゃ、指が滑って練習できない!」なんて文句を言っているのが馬鹿らしくなるほどの演技だ。


第十六回に続く・・・
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赤い激流・第十四回

弟十三回レビューはコチラ

「あゝ晴れのコンクールの日殺人罪で!」

敏夫と武が毎朝ホールでのピアノ練習を終え、自宅に戻ると、なんと由美子が田代清司の殺人容疑で逮捕された後だった。敏夫と武は、警察に赴き、由美子の無実を訴えるが、夫と子供の証言は相手にされない。由美子は実際清司を殺すつもりだったが清司の改心を知って9時過ぎにマンションを出ていた。由美子を救うには弁護士が必要だった。武は全く心当たりがないが、検事である信一が優秀な刑事事件専門の山田タメ子弁護士を紹介してくれる。由美子は面会に訪れた二人に、本当のアリバイを話す。マンションを出た後、東山正彦が不倫相手のクラブのママと会っているところに出くわしていたのだ。由美子は正彦に、大学での復職をその場で頼み込んでおり、正彦はここで自分と会ったことを黙っていれば、考えてもいいと答えていたのだ。武は早速正彦に証言を頼むが、不倫の発覚を恐れた正彦は知らないと答える。さらにアリバイは、息子の明彦とピアノのレッスンをしていたと答えるのだった。それを聞いた敏夫は、明彦を呼び出し、刑務所の前で、母を犯罪者にする気かと迫る。敏夫は明彦を殴るが、自分も殴り返して来いと、何かの配管用と思われるパイプを渡す。明彦は敏夫を殴りつけるが、やがて泣きながら謝り、敏夫のように強くなりたいと訴える。
正彦のもとに帰った明彦は、勇気をつけるために、敏夫の洋服を着ていた。正彦に反抗し、真実をすべて話す。明彦は、正彦に脅されて嘘をついていたのだ。妻の菊子にばらすと言われ、あわてて警察に証言する正彦。明彦は、正彦に初めて反抗したことで、自分の何かが変わったと、敏夫に礼を言った。由美子は晴れて釈放された。
しかし、真犯人は分からない。清司のマンションに残された血で汚れた白バラが最後の手がかりだった。江上刑事は、清司のマンションで聞き込みをする。隣の部屋の女性が、白バラのことは知らないが、犯人は清司の息子だと決めつける。かつて敏夫が清司を絞め殺そうとしたところを目撃した女性だったのだ。その話を聞いて、江上刑事は敏夫に目を向ける。敏夫は、事件の日清司との乱闘でボロボロになったスーツを、洋品店に修理に出したが、尾行していた刑事によって、押収される。信一が江上刑事を伴って大沢家に現れた。大沢夫妻を二度にわたって誤認逮捕したお詫びを言うためだ。そこで事件の当日、敏夫が白バラを身に着けていたことを華江の話で知る。信一は、話の成り行きを黙って聞いていた。華江は信一に、「叔父様と叔母様の容疑が晴れ、コンクールはすぐ。良かったわね」と話しかけるが、信一の表情は晴れない。「嵐の前の静けさかもしれない・・・」とつぶやくだけだった。
武が敏夫に墓のパンフレットを持ってきた。清司の墓を作りたいと言うのだ。敏夫は、「先生は失業中だから、余計な金を使うな」と言う。信一はそれを聞いて、「弁護士費用に必要かもしれないから、まだ金は使うな」と言った。武はその意味を聞こうとするが、敏夫は、「父さんが死んだなんて、信じられない。父さんは、立ち直ってきっとどこかで生きている。墓なんていらない」と訴えた。敏夫はまだ父の死を受け入れられていなかった。武は清司が天才らしく、自分たちに別れを告げたことを思い出し、どこかに旅立っていったのかもしれないと、敏夫の気持ちを汲んで、墓を作るのはやめにする。敏夫は、コンクール当日、清司の写真とともに挑むことを、武に告げる。妙子は千羽鶴を折って、敏夫を応援した。
いよいよコンクール当日が来た。
敏夫のスーツは、当日になってようやく届けられた。敏夫は朝から緊張でトイレに行きっぱなしだ。武と敏夫、由美子と妙子はそろって会場に向かう。信一は後で会場に向かうと言う。しかし、信一の表情は暗いままだった。
コンクール第一次予選が始まり、明彦の番が来た。敏夫は正彦叔父さんに反抗したときの気持ちを忘れるなと励ます。明彦も、絶対通過すると宣言した。
敏夫の順番が近づく。武と由美子に励まされ、舞台に向かおうとした敏夫に、江上刑事が近づいた。「田代敏夫、田代清司の殺害容疑で、逮捕する」
敏夫のスーツから清司の血が検出されたこと、白バラの血が敏夫のものであることなどが逮捕理由だ。スーツの血が、敏夫を自殺を止めるために清司が手を傷つけた際のものであることや、清司の改心を説明するが、聞く耳を持たれない。すぐに連行しようとする刑事を、武は必死で止める。「このコンクールで、敏夫の一生は決まる。敏夫は、いや、私もこの日を目指して、夜も寝ないで練習してきた。この日のためだけに生きてきた。このコンクールだけは、出場させてほしい。英雄ポロネーズを弾く7分間だけ、待って欲しい」と頼み込む。それでも連行しようとする刑事を、信一が止めた。「私からもお願いします。敏夫が逃げる恐れは全くありません。私が保証します」これに江上刑事も折れた。頷いて去る信一。
しかし、敏夫は脱力する。父殺しの容疑をかけられて、弾けるわけがない。
武は語りかける。「何度言えば分かるんだ!ピアニストが舞台に上がるときは、一切忘れろ。ただピアノだけを弾けばいいんだ。私の右腕になると言うのは嘘か?でたらめか?君にやましいことがないなら、お父さんが一番よく知っている。君はお父さんに約束した。コンクールに勝つと。それを守らないと、お父さんは泣くぞ。この写真に何と言って謝るんだ。君は天才田代清司の息子じゃないか。田代君のために、みんな忘れて、力いっぱい弾くんだ」敏夫は、清司の写真を受け取り「弾いてきます」と一言答えた。
英雄ポロネーズの7分間が始まった。
信一は江上刑事に、「敏夫の逮捕執行は、だれにも悟られないようにお願いします」と願い出る。江上刑事は、「検事さんのおっしゃる通りにします」と答えた。
舞台袖から敏夫の様子をじっと見守る武だった。
結果発表。
コンクール予選第一位通過は「田代敏夫」
敏夫は言う。「先生のおかげで、おやじを裏切らなかった。約束を守れました」
「君はやっぱり天才田代清司の子供だ。私の力じゃない。礼なんか言うな」時間が来た。敏夫の手首にかけられる手錠。
一次予選一位通過だけで満足だと言う敏夫に、武は、「けち臭いことを言うな!私は二次予選、本選も一位で通過させる。そんなことで大ピアニストになれるか?天才と言えるか?お父さんが泣くぞ!」そう言って励ます武。
「君には、私がいる。由美子がいる。必ず助けるからな!」
敏夫は、連行されてしまった。


感想

うおー!
この上がりきったテンションを、どこにぶつければいいのか!?

このドラマは、なぜにこうも詰め込むのか。本来なら、母由美子の逮捕と敏夫のコンクールは、それぞれ別の回に分けてもいいくらいだ。それほどの濃さがある。
敏夫のコンクールで、由美子の逮捕が完全に薄れてしまった。
とはいえ、由美子の武を思う気持ちには感動した。
何度も言うが、これぞ昭和である。由美子は清司を殺して自分も死ぬ覚悟だったのだ。清司のせいでこれ以上武を苦しめないために、無理心中を図るつもりだったらしい。
しかし、違う!それは違うぞ!由美子!
由美子まで死んでどうする!?それは武が一番悲しむことだ。
そうはいっても、昭和の女は、往々にしてそんなことをやらかしてしまうのだ。

敏夫のコンクール。
泣けた!
とにかく感動する。
大沢武の敏夫を励ます大演説。基本的に言っている内容は、今までの集大成なのだが、それだけに今までの苦労が、視聴者の胸に走馬灯のように浮かんでは消える仕掛けになっている(本当かよ)。
ここまで敏夫のピアノを育てたのは、武だ。しかし今日武は、自分をむなしくして、完全に父の田代清司を立てている。
これまた昭和だ。
連行される敏夫が、あきらめるなという武の励ましにこたえて、最後に言う。
先生には勝てないよ。先生の言うとおりにします」
ここで初めて武は言う。
「それでこそ私の弟子だ」
しびれた。

今回は副題からして昭和だ。
なんたって「あゝ」だもんね。嗚呼!

そして、信一よ。今日のお前はかっこよかったぞ。
今回初めて、由美子と敏夫を家族と認め、心を痛めている。台詞は少ないが、その行動と表情だけで、心情の変化を表現している。
由美子に弁護士が必要なとき、周囲の人間が騒ぎ立てる横で、黙って適任者を選んでいる。
由美子の容疑が晴れて、家族に希望があふれているときも、一人沈んで思い悩んでいる。
彼は検事として、警察で明らかになる証拠を見るにつけ、あるひとつの結論を導き出しているのだ。
いつもならばすぐさま本人に問い詰めるところだが、それをしない。
その結論が信一自身も信じられないからだ。
家族の一員を疑わざるを得ない自分にも悩んでいるのだろう。
そして、敏夫逮捕の瞬間。
「敏夫が逃げる心配はない。それは保障する」
父が信じた男・敏夫を、初めて兄として信じてやる。
そして、
「逮捕時は、なるべく周囲に気付かれないように」と、被疑者を庇うような要請をする。
検事である兄としての、精一杯の思いやりであろう。
と、精一杯好意的に考えてみた。

そして敏夫。
すごい。
敏夫というより、水谷豊がすごい。
コンクールでピアノを弾く前と後では、表情が全く違う。
顔の相が違っている。
同じ人間とは思えないほど変わっている。
ピアノを弾くのとは全く違う緊張状態を表現しているのだろう。
凍りついたような厳しい表情だ。
愛する父を殺したと疑われることに対する怒り、戸惑い。心で感情は渦巻いているのだろうが、それを表現するのは並大抵ではない。。
しかし、武にだけは、表情を和らげる。
「先生にはかなわない」と。

今回は危険なことも多かった。
まず明彦の本心を引き出す場面。ドラマ内の設定で、アレは鉄パイプなのだろうか。でも鉄パイプで殴られてあれだけの傷で済むはずもないので、プラスチックのパイプだろうか。よく分からないが、明彦はそれで敏夫を殴りつける。
この場面は怖かった。
何しろ、コンクール直前なのだ。コンクールに出ることは分かっているが、明彦のやつ、腕などもがんがん殴る。大事な腕を武のように怪我したらどうするつもりなのか。そうはならないことは分かっているのに、思わず「ちょっ(笑)!」などと声を漏らしてしまったじゃないか。
コンクール直前にして乱闘シーンを持ってくる製作者のセンスに脱帽(笑)。
しかし、これによって明彦は肝が据わり、ひとつ大人になったのだ。
もう一点、武が連行される敏夫を見送る場面。
走り去るパトカーと並走するのだが、足が・・・。今にも足がタイヤに巻き込まれそうで非常に怖かった。

ちなみに、英雄ポロネーズだが、今までテレビ的に効果のある、おなじみの派手な部分ばかり弾いていたので、どうするのかと思っていたが、キチンと最初から弾いていた。
良かった良かった。

最後に1点だけ突っ込ませてほしい!!
今回、完全に時系列が崩壊してしまった!
前回、武は、自分の口でコンクールは3日後と言った。しかし、今回は警察にいる由美子に向かってコンクールまで後5日と口走ってしまったのだ!!
確かに3日では何もかも時間が足りなかっただろう。しかし・・・。
残念である。
繰り返す!
残念である。
とはいえ、そんなこと、このドラマの感動にはなんの影響も与えない。
時系列がなんだ。
視聴者は単に細かいことを気にせず、流れに身を任せればいいのだ。
それが、赤いシリーズの醍醐味だ。
こんな突っ込み、ドラマを見始めた一秒後には、視聴者は忘れ去るだろう。
それが、このドラマの力なのだ。

弟十五回へつづく・・・
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赤い激流・第十三回 レビュー

第十二回のレビューはコチラ

「愛する妻が殺人者?」

あらすじ

武は警察に連行された。取り調べで、武はありのままを話すが、なぜか殺人容疑をかけられていることを知る。そこで警察から凶器として使われたと思われる包丁を見せられ愕然とした。その包丁は、由美子愛用の包丁であり、柄が壊れたのを武自ら修理したものだったのだ。とっさに武は由美子が犯人だと思い込み、由美子をかばうために、田代清司を殺したのは自分だと自供してしまう。
敏夫は、武がやったとはどうしても信じられない。宮島家にはマスコミが押しかけ、東山正彦が対応に出ていた。正彦は、清司が優秀な講師であり、その死を非常に悼んでいること、武は清司の死の前に辞職しており、宮島音楽大学とは何の関係もないことを強調する。
正彦は、妻の菊子と、とりあえずの危機を脱したことに、安堵の溜息をついた。
そこへ敏夫が現れた。武の無実を信じる敏夫は、宮島家の力で、武を助けてほしいと頼みに来たのだ。東山夫妻はもちろん相手にしない。敏夫は宮島学長夫妻にも頼みに行くが、学長は具合が悪く寝込んでいると言う。妻のあやは、「こうなってはヘタに動くのはかえって良くない。自分たちにできることは何もない。もう関わり合いになりたくない」と、常にない剣幕で協力を拒否する。華江はそんな宮島家の人々を非難する。敏夫はもう頼まないと出て行ってしまった。
敏夫は次に検事である信一に何とかしろとねじ込む。が、検事とはいえ、捜査段階では何も手が出せないと信一は諦め顔。しかも、あれほど苦しめられた父ならば、清司殺害もあり得ると言う。彼は検事として、どんな善人でも殺人を犯す事例を、いやと言うほど見てきたのだ。父を信じない信一を敏夫は責めるが、反対にそこまで大沢家を追い詰めた清司のことを、信一に責められるのだった。
武は刑事と現場検証に行くが、犯行の状況を聞かれても、碌に説明できない。
武の着替えなどを準備する由美子と妙子。だが由美子は心労がたたって、倒れ、入院してしまう。由美子の代わりに着替えや食べ物を差し入れる敏夫は、十五分だけ面会を許された。自分にだけは本当のことを言ってほしいと迫る敏夫。だが由美子をかばう武は、ピアノにかけて、自分がやったと言ってしまう。
清司の生前、父が憎いあまり殺そうとしたのを武が止めてくれたからこそ、自分は踏みとどまったのに、なぜ武が人を殺すのか。敏夫には分からなかった。もし本当に殺したとすれば、今までの教えは、すべて嘘だったことになる。ピアノすらも、嘘なのか。「真の芸術家である先生が、人を殺したとなると、何も信じられない」と言い、荒れる敏夫を、武は全身で抑え込み、「ピアノだけは続けてほしい。コンクールには出てほしい」と頼む。そんな勝手な頼みが聞けるわけがなく、敏夫は絶望して差し入れのウナギを机から払い飛ばして取調室を出た。
散乱したウナギの弁当を拾う武。しかし先ほど敏夫と乱闘した際に掴まれた腕の痛みで、右腕は効かない。仕方なく左手で拾う武。そしてその動きを江上刑事(加藤武)は見ていた。彼は取調室に入って聞く。「先生、その右手は、いつからそんな風に・・・?」

敏夫は、由美子の入院先で見舞いに来ていた華江と会う。由美子と遠くで二人で暮らすと言う敏夫に、「なぜ叔父様を信じないの?」と言って責める華江。何もかも嫌になった敏夫は華江と駆け落ちしたいと言う。華江は「あなたを軽蔑する。こんな人を愛していたなんて馬鹿みたい」と言って去るのだった。

寺で田代清司の葬儀が行われた。参列者は由美子と敏夫だけだ。
そこへ江上刑事が武を伴って現れた。
武の容疑が晴れたのだ。犯人は右利きであり、しかも全身8カ所をめった刺しにしている。右手の利かない武の犯行は不可能だった。
江上刑事は、武の人の好さから、自分が犯人だと思い込んだらしいとする。
江上刑事と別れた後、敏夫は武に誰をかばっているのか問い詰めた。敏夫は自分が武に疑われたと思ったのだ。そう聞かされて、やはりとっさに武はそうだと答えてしまう。改心した清司を殺すわけがないと言って敏夫は笑った。
寺から戻ると、家に先ほどの江上刑事がスイカを携えて謝罪に訪れた。居間でたばこに火をつけようとする江上刑事だが、ライターがない。由美子は刑事の足元に落ちていたライターを拾い上げ、渡した。刑事がさりげなくライターを白いハンカチで包むのを、敏夫は見ていた。持参したスイカを、江上刑事は自ら切ると言い出す。妙子はいつもの包丁を探すが、見当たらない。刑事の考えが読めた敏夫は、事件当日の由美子の足取りを聞き出そうとする刑事を制して、喪服から着替えてくるように勧める。刑事が帰る時間になっても、由美子は二階から降りてこなかった。

武は由美子に事件の日のことを聞いてみる。由美子は武が自分をかばっていたことをその一言で察するが、自分は殺していないと訴える。確かに、当日由美子は清司を殺すためにマンションを訪れた。しかし、揉み合いになったとはいえ、殺す前に、清司からすべてあきらめてフランスに渡ると聞かされ、ワインを飲んだだけで帰ってきたと言う。武は、一瞬でも妻を疑ったことを詫びるのだった。
敏夫はそれを聞いて、安堵してピアノを弾く。練習が全くできなかったので、武にレッスンを願い出る。武も心の重荷を降ろして、コンクール会場の下見に行こうと誘う。
コンクール会場で、武は聞く。「10年前、ここで私と田代君は、英雄ポロネーズで優勝を争った。君は、私と田代君に勝てるか?」敏夫は答えた。「勝ちます!」武は続けた。「ここで数百と言う観衆と審査員が君のピアノに耳を傾ける。しかし、君のピアノをもっとも注意深く、愛情を持って聞いている人間は一人しかいない。それは、君自身だ。それだけは忘れるな」
本番のつもりで練習を始める敏夫。それを武は希望をもって聞いている.

その時。大沢家を訪れるサイレンの音。
江上刑事は由美子に言う。「奥さん、この包丁に見覚えがありますね。殺人現場から、あなたの指紋が付いたワイングラスが発見されました。あなたを殺人の容疑で逮捕します」

毎朝音楽コンクールまで、あと3日。


感想

これだ。
おそらく、その昔私が初めて赤い激流の再放送を見た回とは、この回のことだったのだ。
ウナギの弁当を左手で拾う宇津井健。この場面私は非常によく覚えている。
つまり宇津井健が敏夫を庇って逮捕されたと記憶していたのは私の勘違いで、母の由美子が逮捕されるのも、敏夫を庇ったのではなかった。
なんだかとりあえず誰かを庇っていたよな」という記憶が、敏夫の容疑とごっちゃになってしまったのだろう。
なんというか。
数々のお笑いポイントを論じてきた私だが、今回そのポイントを探すのが難しい。というより、お笑いなどない。
乱闘ポイントもあるにはあるのだが、内容が重過ぎて辛い。
あるのは悲劇だけだ。

それにしても泣けた・・・。
大沢武。
彼は愛するもののためなら、それこそ何でもやる。平気で嘘もつく。
もちろん彼のやったことが正しいとは言えない。
けれどもいろんな要素が重なり合って、あの場はああやって嘘をつくしかなかったのだ。
偽証罪に問われなかったのは運が良かった。この点だけは、今までひたすら実直に誠実に生きてきたことを見てきた何かが、彼を見逃してくれたのだろう。と、好意的に書いてみる。
敏夫と武の対決シーンはやはり感動的だ。
自分にだけは、本当のことを言って欲しいと詰め寄る敏夫。しかし武はピアノに誓って殺したと言ってしまう。
あの場で、武の由美子への愛は、ピアノを越えてしまった。
ピアノだけでは生きていけない。愛する妻があってこそのピアノなのだ。
そして、そんな武に絶望する敏夫。
水谷豊の演技が良かった。
ぶつけようのない戸惑いと怒り。愛する父を殺されたことよりも、信じてきた師の芸術を疑わなければならない悲しみが、水谷から溢れていた。

そして今回これだけは言わせてほしい。
由美子。というより、松尾嘉代だ。
なんというか・・・。
色気がある。
急になんのこっちゃと思われるだろうが、彼女の手の演技はすごい。
武に取りすがったり、武の腕を触ったりするときの手の演技が、何とも言えず艶があるのだ。指先にまで神経を張り巡らせた芝居。
手の存在感に、なんとなくこっちは照れる。

コンクールまで、あと3日。
次回、とうとうコンクールである。
刮目せよ!

第十四回につづく・・・
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赤い激流・第十二回 レビュー

赤い激流・第十一回 レビューはコチラ

「今日は夫が殺される日」

あらすじ

いよいよ武の大学辞職の日が来た。
敏夫はまとめた荷物の中に、そっとナイフを忍ばせる。幾日もの騒乱を共に過ごしたジャズ仲間の三郎、良介に別れを告げ、部屋を出る。
由美子は夫の最後の出勤を見送るために、寄り添って歩いた。途中、敏夫が自分も一緒に学校に行きたいと申し出、それならば、と武は一軒の洋品店に入る。ここは武が初めてスーツを仕立ててから今日まですべてのスーツを誂えてきた店なのだ。武は敏夫に、毎朝音楽コンクールに出場するためのスーツを誂えていた。武の思いやりに感動する由美子。敏夫は喜んで、その胸に、白いバラを飾りスーツを着て登校する。
武の最後の授業で、ピアノ科の生徒を前に、自分の音楽の精神と解釈を感じてほしいと、動かない指でありながら、英雄ポロネーズを弾く。中指の動かない音楽。ピアニストとしてのプライドよりも教育にすべてを捧げる男の姿がここにあった。
敏夫は、「先生の精神と解釈は、俺がすべて受け継いでいるから、俺が代わりに弾く」と立ち上がる。武は、敏夫のピアノを聞きながら、自分の腕が、敏夫の中に生きていることを確信した。
田代清司は、学長や東山正彦に、自分を助教授にすることを要求する。武最後の授業を聞いていた学長は、なかなか首を縦に振らない。業を煮やした清司は、武の辞職後も、武の再就職の妨害を行うように命令する。
武の弟・実は学長達がやはり武をクビにしてしまったことに腹を立て、訳を尋ねに来た。学長は、しばらくしたら必ず説明するとしか答えられない。実は、仕方なくしばらくアメリカに滞在すると言ってその場を去る。しかし、その前に田代に対して、「兄貴に何かしたら、俺がお前を殺す」と言い放つ。
華江から武の辞職の訳を聞かれた敏夫は、自分の父親のせいであり、武が幸せになるためには、清司が消えるしかないと話す。華江は不吉な予感に震えるが、敏夫の別れのキスを黙って受け入れる。
敏夫は武から帰ったらレッスンだと誘われるが、今日のレッスンは休みにしてほしいと頼む。敏夫は、これからも元気で生きて、母を幸せにしてほしいと頼み、礼を言って別れた。由美子は、武からの外で食事をしようと言う誘いを、友達が入院したので、見舞いに行くと言って断り、愛用の包丁を鞄に忍ばせて、いずこかへ出かけた。
敏夫は清司を呼び出して、「父さんは、先生にはかなわない。父さんは嫉妬しているだけだ」と言う。そして武から手を引いてくれと土下座して頼む。土下座までする息子に「そんなに大沢が大事か」と問う。「先生は、俺の命を助けてくれて、本物のピアノを教えてくれた。大事に決まっている」と答えが返ってくる。しかし、敏夫が頼めば頼むほど、清司は武が憎くなるのだ。もはやこれまでと悟った敏夫は、隠し持ったナイフを取り出す。敏夫はナイフの刃を自分に向けた。「おれが死んでも、先生を憎むのか。おれを殺してでも、先生を憎むのか」そう言って、自分につきたてようとする。その手を清司が取り押さえた。敏夫は抵抗するが、お互いに傷つけあい、血だらけになりながらも、ついに清司がナイフを取り上げ、遠くに投げた。なぜ、清司を殺さずに、自分が死のうとしたのか。それは武から、父を殺すのは止められているからだ。「人を憎んで暗く生きるより、人を愛して明るく生きてほしい」武からの教えを、敏夫は守った。父にも、自分が死ぬことで、考えを改めてほしかったのだと話す。敏夫から、昔の父にあこがれて、ピアニストを目指したと聞かされた清司は、夜マンションに来いと言って、その場を去る。
宮島家に清司が現れた。ちょうど武の息子・信一が来ているときに。清司は宮島学長に、華江と信一の婚約を解消して、華江は敏夫と結婚させろと迫る。信一は怒り出すが、華江が信一を愛していないことを清司は指摘する。そして、学長に敏夫と華江を結婚させれば、助教授の座や、武を失墜させる計画、今までのゆすりなど、すべてを忘れると宣言する。学長は即答はできないと答えるが、信一はみんなの煮え切らない態度に腹を立て、出て行った。宮島あやは、清司を何とかしなければならないと言って、学長と話し合うと言う。東山夫妻も、二人きりで話し合うことにする。華江は、自分の気持ちを言い当てられ、茫然とするだけだった。
武は、今や大学病院の教授になった西条医師に会いに行く。指が完治しないことを謝る西条だが、武は精一杯の治療に対して礼を言うのだった。武は、西条が使っているマッチが、コーヒーとケーキの店、「CROWN」のものであることを知る。そこに、なぜか清司から電話が来て、清司のマンションに呼び出されるのだった。
清司のマンションに来た敏夫は、清司に由美子、敏夫、武、清司4人の新しい出発ために乾杯をさせられる。清司は、敏夫の気持ちに心を動かされ、ついに改心したのだ。「近いうちに日本を離れ、フランスに渡る。親は泣く子には勝てない。由美子と敏夫を、大沢にくれてやる。大沢のお人よし、馬鹿正直には降参した」と言って笑うのだった。さびしくないのか、という敏夫の問いに、「さびしい、悲しい、泣きたいくらいだ。しかし俺も男だ。我慢する。その代りに、大沢にくらいついて、一流のピアニストになれ。おれが果たせなかった夢を、お前が実現しろ。それが親孝行だ。コンクールの課題曲を聞かせて見せろ。自惚れだけは、俺に似ているな」と言って、敏夫を励ます。
「コンクールに優勝して、次はヨーロッパのコンクールに出場する、その時は、父さんに会いに行く」と敏夫は言う。敏夫は、清司が負けてから封印していた英雄ポロネーズを、父のために弾く。
敏夫のピアノを聞いて、思わず「うまいぞ敏夫!昔の俺よりずっとうまい。さすが俺の息子だ。やはり大沢はえらいな。よくここまで仕込んでくれた。礼を言わなくちゃならんな」その顔には、もはや憎しみは跡形なく消えていた。
敏夫は清司の部屋を出た。心は寂しさでいっぱいだったが、同時に羽よりも軽かった。
敏夫が帰った後、武が清司を訪ねた。清司は、武に、もう武を傷つけることはやめたこと、いずれ武は大学の教授に戻れること、由美子と敏夫をあきらめることを伝える。そして、フランスに発ち、二度と日本に戻らないことを告げる。武は、戸惑いながら清司を一人不幸にはできない。敏夫を清司と二人で育てて行こうと説得するが、清司はフランスには恋人が待っている。一人にはならないと言って笑った。
清司は武に、これからある人物と会うことになっている。その人物から一億円もらうので、武にすべて渡す。それで由美子と敏夫を幸せにしろと言う。武はもちろん拒否するが、清司は武をピアノの部屋に閉じ込め、ある人物と会うために玄関に向かう。武は、ピアノの上に残された、血染めの白バラを、いぶかしげに眺めた。するとすぐに清司の悲鳴が聞こえた。武は扉を開けようとするが、鍵がかかっており開かない。さらに扉から煙が立ち込めてきた。侵入者が火を放ったのだ。武は扉を破り、清司の名を呼びながらも玄関から外に出、それと同時に煙に巻かれて失神した。
敏夫は酒を飲みながら公園で遊び、勢いで女性に飛びついた。「Rykiel」とプリントされたセーターを着ていた女性だった。敏夫はあわてて謝り、大沢家に帰る。全員出かけていたが、敏夫は昼間の格闘で血に汚れたシャツを洗いだす。妙子と信一が家に戻り、シャツについているのが血であることを指摘するが、敏夫は気にしない。ついで由美子が顔面蒼白の状態で帰宅した。
そこへ警察からの電話が鳴った。清司が火事で死亡したので、身元を確認してほしいという。さらに、武が失神したことも伝えられた。由美子、敏夫、信一が現場に到着してみると、確かに清司が焼死体となっていた。しかも死因は焼死ではなく、全身を刺されたからだという。そして、意識を回復した武は、現場に最後までいた人物であり、重要参考人として、連行されてしまうのであった。


感想

ついに。ついにここまで来た。
もう長すぎるあらすじだが、気にせず書いた。この回は、省略するところが全くない。
これまでの清司の憎しみ、それはすべて敏夫と武の愛情の前に敗北した。
武が愚直なまでに守ってきた、誠意とお人よし、さらに敏夫の愛によって、清司は人間性を取り戻したのだ。
緒方拳の演技がいい。
あれほどまで憎しみで恐ろしげに歪んでいた顔は、つきものが落ちたようにすっきりと、澄み渡っている。しかし、やはりすぐには素直になれない。敏夫と酒を酌み交わし、自分が考えを改めたことを話すときも、なかなか息子と目を合わせられないのだ。素直じゃない。けれども、敏夫に一流のピアニストになれと命令するときに、敏夫と目を合わせ、真剣に迫る。ピアノに対しては、彼は真摯になるのだ。
ともすれば泣いてしまいそうになる自分を、必死で抑えて息子を励ます父の姿に、涙腺は崩壊する。

今回は清司と敏夫の最後の乱闘だ。二人の乱闘もこれが見納めかと思うと感慨深いなー(棒読み)。とはいえ、今回も怖い乱闘だった。何しろ、ナイフを持ちながらの乱闘である。敏夫は自分の死を覚悟していることから、どうでもいいのだろうが、敏夫が死なないことを知っている視聴者としては、やはり敏夫が手や腕を傷つけないかばかりが気になって、乱闘に集中できない(笑)。ピアニストの手はそれだけ繊細なのだ。視聴者に別の意味でこれほどハラハラさせるとは、さすが赤いシリーズ。

さらに敏夫。敏夫は清司と別れた後、酒を飲み、泥酔しながら散々公園の遊具で遊ぶ。ブランコやら、あのぐるぐる回すやつやらで。見ているだけでこちらが嘔吐しそうになってしまう。あのシーンは、正直もう見たくない。

ちなみに、清司が武を部屋に閉じ込め、音を聞かせないためにつけた大ボリュームのレコードは、ベートーベンの交響曲第三番「英雄」の第二楽章。

第十三回はコチラ
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赤い激流・第十一回 レビュー

第十回レビューはコチラ
いい加減レビューが遅れているので、本日二回目のアップ。

「家族を守るために殺す!」

あらすじ

毎朝音楽コンクールまであと二週間。
敏夫と武は、寝る間も惜しんでレッスンを続けた。しかし武の腕は容赦なく痛む。武は大学病院の友人、西条医師に頼んで、あと二週間腕が動くようにしてほしいと頼む。
西条医師は、100%ではないが、神経や血管を圧迫している筋肉を切り取れば治る確率があると診断する。そこで武は喜んで手術を受けることにする。
敏夫は喜んで有頂天になるが、清司は、そんな敏夫の喜びに、「腕が治ればへし折ってやる」と、水を差すのだった。
手術は終わった。しかし、結果は良くない。大事な神経が傷ついており、中指が麻痺したまま動かないのだ。清司は病院に入り込み、その医師の会話を聞いて、暗い喜びに笑いをもらした。西条医師は、直接告知をせず、リハビリを続けろと武に言い、大沢家を喜ばせるのだった。
武は敏夫に、英雄ポロネーズだけでなく、ショパンの曲をできるだけマスターさせる。それが英雄ポロネーズの理解に役立つのだと言う。
そんな時清司が大沢家に現れる。清司は武に、中指が動かないことを教えに来た。それを聞いていた弟の実は、清司に怒りをぶつけ、殴りつけて出て行けと叫ぶ。笑う清司に、敏夫は「俺がぶっ殺す」と宣言した。
武は弟の実に「ピアノは俺のすべてだった。何の生きがいもない」と漏らす。
「泣きたいんだったら泣け」と兄弟は悲しみを共にする。悲しみに暮れる大沢家だった。
清司は東山夫妻をマンションに呼び出し、武の指のことを話し、大学を辞めさせ、代わりに自分を助教授にすることを要求する。
武の見舞いに来た宮島学長と妻のあやは、ピアノ科の助教授について相談に来る。言いにくそうな二人を制して、武は辞職を申し出る。
信一は再就職について心配するが、武は希望をもって仕事を探すと宣言する。妙子は大学を辞めることを申し出るが、武は勉強して親孝行しろと話した。由美子はパートでもお手伝いさんでも、仕事を探すと話すが、武は家を守ってほしいと話す。
敏夫は友人の三郎と良介とともにジャズ演奏のバイトに精を出すが、やりすぎで友人二人は疲れてしまう。
武の退院祝いに大沢家に訪れる親戚一同。実は宮島家に、武の大学辞職について問いただし、自分も指揮科の講師を辞めると言うが、宮島家は引き留める。実が大学の教職に就いたのは、武に頼まれたからだった。実は、武の音楽の知識をもってすれば、楽理の教授になれるはずと学長を説得し、本物の教育者を捨てるのは大学のために良くないと話す。
あやも華江も明彦もその言葉を支持する。学長は武を楽理の教授にすることを認めた。
清司が宮島家に訪れ、正彦を無視して、学長とあやに、不倫をばらす。不倫くらいで動じるあやではないが、裏口入学のことを聞くと顔色を変える。スキャンダルをばらされたくなかったら、武を辞めさせ、自分を助教授にしろとゆする。
学長とあやはこの場は清司の言うことを飲むことにする。
正彦は、清司を殺してやりたいと漏らす。
華江は、武がまた大学を辞めさせられることを聞いて大沢家に来る。由美子はそれを聞いて、血相を変えて家を出て行く。華江は信一の誘いを断り、敏夫を探して続いて家を出て行く。敏夫は、三郎・良介とともにコンクールの予行練習をしていた。華江はその場に乗り込み、敏夫に武のことを伝えた。怒った信一は華江を追いかけて来ると、無理やりキスをした。
清司は自宅でピアノの練習をするが、指がまともに動かない。由美子は清司に「武さんをこれ以上苦しめないで」と土下座して頼む。清司は「由美子が戻ってくるなら武を助教授に戻してもいい」と由美子に襲い掛かる。由美子は「殺してやる」と叫んで逃げ出すが、そこへ敏夫が駆けつけ助ける。「俺には才能も天分もある」という清司に、「父さんにはもう天分も才能もない。人を憎むだけの汚い人間だ。先生とは比べ物にならない」と敏夫は笑う。「先生に何かしたら、父さんを殺す」と言うが、清司は聞かない。清司は「俺を止めたかったら俺を殺せ」と、敏夫を殴って挑発する。敏夫はついに我慢の限界に達し、清司の首を絞める。そこへ隣の部屋の主婦が乗り込んで、三人を止める。
心配していた武に、敏夫は何も聞かないで休ませてほしいと由美子を寝室に帰らせる。敏夫はピアノを弾き始めるが、心が乱れて全くうまくいかない。
「俺にはピアノは弾けない。コンクールもあきらめる」と敏夫は言う。「父さんを殺そうとしている人間にピアノは弾けない」と。
「殺すより仕方ない」という敏夫を武は止める。「どんな父親でも父親だ。子供が父親を殺すなんて絶対にいかん。人を憎んではだめだ。俺は田代君を信じている。いつか立ち直ると信じている。間抜けと言われようが、構わない。人間は何のために生きている?人を憎んで暗い一生を送るためか?人を愛して、明るい一生を送るためか?敏夫君は、愛情をいっぱい持っている。殺したいと言う気持ちは俺のために忘れてほしい。俺なんかどうなってもいい。大事なのは君だ。君のピアノだ。君のピアノが完成したら、俺は満足だ。この右腕に代わってピアノを弾くのは君だ。頼む。人を愛してくれ。ピアノを捨てないでくれ」静かに弟子を諭す武に、敏夫は答えた。
わかったよ。先生。わかった」
「ありがとう。敏夫君」

武の愛情によって、敏夫の心は美しさを取り戻した。

感想

おお・・・(ToT)
ちょっと・・・
感動の師弟の対話。
泣いた。

最後の、武と敏夫の対話が最高。
今までの絶叫調の説得とは打って変わって、静かな説得だ。
説得というより、諭しですよ。
人を憎む意味。人を愛する意味。人が生きる意味。
そして、弟子が生きる意味。
師が静かに、弟子を導く。
無理やり聞かせるのではない。一つ一つの疑問、弟子の求めに応じて、師が静かに、確信を持って導いている。
あらすじでは、セリフを書き出すと膨大なので、あえてはしょって書いてしまったが、武のセリフの合間に、敏夫の合いの手というか、自分はだめだー的なセリフが入るので、本編を見るとさらに感動できる。
視聴者は敏夫に完全に同化し、武の教え子となって、清司を憎むのは間違いだという気持ちになってしまうのだ。
これも名場面だ。
良かった。

それにしても、武が大学を辞職するくだりであるが、なんとなく腑に落ちないものを感じた。ピアノ科の助教授って、そんなに簡単にクビになったりするのだろうか。まぁ、ピアノが弾けないのだから、仕方ないといえばそこまでだが、それこそ娘婿なのだから、再就職を斡旋するとか、事務方に回すとか、いろいろ手はあると思うのだが、宮島音楽大学ではあっさりクビ。その疑問については、石立鉄男の実が解決してくれるが、やっぱり、おいしいところは石立鉄男なのねー、と感じたところだ。
さらに突っ込むと、今回の話で辞職しなくてはならないのは、武ではなく、明らかに正彦だ。これだけの不祥事をしでかしたのだ。まだ表には出ていないとはいえ、そのまま助教授に居座るとは、並の神経ではないし、学長とあやも、なぜ辞職させないのかが不思議としか言いようがない。

そして、今回時系列が妙なことになっていないだろうか。
武の手術の時点で、コンクールまであと二週間だったはずだ。退院するまでの日数について言及されていないので何とも言えないが、退院祝いをすることからして、一日で帰ってきたとは考えにくい。さらに二週間前だと言うのに、敏夫はジャズバンドのバイトに一日以上を消費してしまった。どう考えても一週間は無駄に過ごしているはずである。

さらに乱闘が本日も例にもれず起こってしまった。
ピアノコンクールに出る直前のピアニストが、大事な手を使って男の首を絞めるとは・・・。
それだけ追い詰められているのだろうと、好意的に考えてみる。

緒方拳の清司が、武の指のことを知って笑う場面は、心胆寒からしめる演技だった。本当に殺してやりたいくらいの笑いだ。
このままでは彼は無事に済まないのではないか!?いったいどうなるの!?・・・なんて、わざとらしく心配してみる。

第十二回につづく・・・
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赤い激流・第十回・レビュー

赤い激流・第九回はコチラ
そういえば、九回の感想で書くのを忘れましたが、正彦役の前田吟が宮島家で弾いていたのは、ベートーベンのピアノソナタ「悲壮」。くわえたばこに仏頂面で弾く前田吟。かっこよすぎて笑った。


「一人の妻に二人の夫・争いの果てに・・・」

あらすじ

公文書偽造と不法渡航により、田代清司は、執行猶予付きの有罪判決を受けた。執行猶予中とはいえ、自由の身になった清司は、いよいよ大沢武をつぶすことを心に誓う。
大沢家の長男・信一の命令で、武からのレッスンを受けられなくなった敏夫。大学の教室で一人練習するのを、武は陰でこっそり聞いていた。そんな二人の様子に気づいた華江は、その理由を問い詰める。原因は自分にあると気づいた華江は、信一と結婚する覚悟を決める。
敏夫と華江が愛し合っていることを知る武は、華江に真意を確かめる。華江は、宮島家を継ぐべき人間という、どうにもならない自分の運命を受け入れることにしたのだ。信一となら、温かい家庭を築くことができると確信したという。恋愛と結婚は別…。若いのにそんな言葉をつぶやく華江の決心を、武は受け入れた。
信一は信一で、華江の心は敏夫にあると知りながら、自分が華江を愛し続けることで、華江もいつか自分を愛してくれるようになることを信じて、華江の申し出を受け入れる。
しかし、宮島家は、田代清司がもれなくくっついてくる大沢家との縁談に難色を示した。信一は絶望するが、敏夫はそんな信一にはっぱをかけ、宮島家に押しかけて信一との婚約を認めさせるのだった。
宮島家の娘婿遠山正彦は、そんな動きが気に入らず、田代清司に相談する。清司は、武をダシにして妻由美子を呼び出し、乱暴しようとするが、武が駆けつけ、ついに武は清司を殴って止める。目の前で由美子を連れて行かれた清司は、さらに憎悪を募らせる。
信一と華江の婚約パーティーの席上に果たして清司は現れ、武が宮島家を乗っ取ろうとしていると挑発する。敏夫が駆けつけ清司を抑えるが、外に出る清司を武は追いかける。清司からの憎しみを改めてぶつけられた武は、もはや分かり合えないと、ようやく清司と対決することを宣言する。
「殺されるくらい憎まれなきゃ、思い切ったことはできない」そう捨て台詞を残して、清司は去った。


感想

ついに大沢先生の堪忍袋の緒が切れ、清司には負けない!宣言が飛び出す。
しかし、その瞬間の清司の顔。
これはよかったー。
戦うことがうれしいのではない。むしろ苦しげな表情を彼は浮かべた。
清司は、武を努力型の魅力のない人間で月、自分は天才で太陽にたとえる。
しかし、いつもすべてを持っていくのは月の武であることを認めてしまう。
そう、今までは、武は同じ土俵に決して上がっては来なかった。戦っていなかった。戦っていない相手になら、いくらでも勝つことはできる。しかし、同じ土俵に立つとしたら・・・?
彼が本気で自分に向かってきたら・・・。
清司にはその結果が見えていたのではないか。
敏夫はかつて言った。。「父さんは、ブレーキの利かない機関車。誰も止められないんだ」と。
もう、自分にも止められないのだろう。たとえ目指す先に、破滅が待っていようとも。

やはり赤木春江のおばあ様はいい。
おじい様がスキャンダルを恐れて大沢家との婚姻を認めないのに対して、敏夫に惹かれている華江の心情を思って、信一との婚約を認めるのをためらうおばあ様。
いい人だ。本当に。

今回注目した点は、ドラマ内の男性陣のファッションについてだ。
私はファッションのことは全く疎いのだが、それにつけても気になるのが、武や清司、正彦や信一の背広について。
ドラマ内では、季節は夏真っ盛りの設定のはずだ。
しかし、彼ら、背広を着る男性陣は、戸外で背広を脱ぐ気配がない。
そう、以前は夏でも背広を脱がなかったのだ。
クールビズなんて、夢にも思わなかったのだ。
しかし、昨今の電力不足と節電の動きから、夏場に男性が背広を脱がず、ネクタイも緩めず、あまつさえワイシャツも頑固に長袖であったことなど、そのうち忘れ去られるに違いない。
子供の頃などは、夏でも背広姿の大人たちを見て、「暑くないのだろうか?大人になれば、我慢できるようになるのだろうか?」などと疑問に思っていたが、本当にどうしていたのだろう?
さらに、清司や正彦は、夏なのにスリーピースだ。
スリーピースのスーツなど、身近な男性陣にはとんと見かけなくなったなぁと、遠い目になってしまう私である。父も昔はスリーピースを着ていたたことを思い出した。
もう一つ、このドラマで身に着けられているネクタイは、非常に幅が広い物が多い。当時幅の広いネクタイが流行っていたのだろう。水谷豊がつけるネクタイはそうでもないが。
特に、石立鉄男のネクタイは広い。
今後、注目してみてほしい。

第十一回はコチラ
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