赤い激流・第十五回 レビュー

2011.09.15 Thursday 21:00
hirorin


ついに、敏夫の起訴が決まった。
信一は静かに起訴を武に教えるが、武は、清司がフランスに恋人を持っていたことを思い出し、その女が清司を殺しにやってきたのかも…と推測を述べる。信一は、推測では何の役に立たないこと、絶対的な証拠がなければ、敏夫は尊属殺人で死刑になることを告げ、部屋を出て行く。
それを聞いていた由美子は、半狂乱になって泣き叫ぶ。
しかし武は由美子を抱きしめ、「泣いてどうする。私たちが泣いてどうする。私たちしか、敏夫君の味方はいない。私たちで必ず敏夫君を助ける」と励ますのだった。
毎朝音楽コンクールの第二次予選課題曲が決まった。
リストの「ラ・カンパネラ」。
しかし、武の指では、敏夫に最高の演奏を聞かせることはできない。武は考え抜いたすえ、宮島学長にピアノの演奏を依頼する。宮島学長は、かつてリストの演奏で世界的に評価されたピアニストだったのだ。しかし、病み上がりの学長に超絶技巧の曲は難しい。敏夫は、「学長の音楽の技術と精神を敏夫に伝えたい」と口説き落とす。妻のあやは、「あなたのピアノが、敏夫さんの中に生き続けて、将来に残るんですよ。死に花を咲かせるつもりで、やって欲しい」と懇願する。学長は、自分が死んでも、敏夫の中に自分のリストが生き残ると、希望を託して演奏に挑戦する。
演奏は無事に終わった。学長の体力の消耗は激しいが、最高の録音が出来た。学長は、「これが最後の贈り物になるかもしれない」とつぶやいた。
敏夫は拘置所に送られた。敏夫の精神は追い詰められている。全く希望を捨ててしまったようだ。コンクールのことなんて、何も話したくない。何も聞きたくないと言う敏夫に、武は学長の演奏を聞かせる。その音色に、敏夫は釘づけになった。「病気で体が弱っている学長が、最後の力を振り絞って演奏したリストだ。宮島学長はお年だ。しかしこの音は若々しい。ピアニストは、死ぬまでピアニストだ!いつまでも、若々しい音が出せるんだ」武は、日本で最高のリストを聞いてマスターすることを命じる。ピアノがないと言う敏夫に、「壁、床、すべてをピアノのキィだと思って叩け。練習しろ」と返す。
「みんな忘れて、弾け。弾いて弾いて弾きまくれ。田代君のために、弾くんだ。」そう言って、敏夫に楽譜を見せる武。

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