赤い激流・第十四回
弟十三回レビューはコチラ
「あゝ晴れのコンクールの日殺人罪で!」
敏夫と武が毎朝ホールでのピアノ練習を終え、自宅に戻ると、なんと由美子が田代清司の殺人容疑で逮捕された後だった。敏夫と武は、警察に赴き、由美子の無実を訴えるが、夫と子供の証言は相手にされない。由美子は実際清司を殺すつもりだったが清司の改心を知って9時過ぎにマンションを出ていた。由美子を救うには弁護士が必要だった。武は全く心当たりがないが、検事である信一が優秀な刑事事件専門の山田タメ子弁護士を紹介してくれる。由美子は面会に訪れた二人に、本当のアリバイを話す。マンションを出た後、東山正彦が不倫相手のクラブのママと会っているところに出くわしていたのだ。由美子は正彦に、大学での復職をその場で頼み込んでおり、正彦はここで自分と会ったことを黙っていれば、考えてもいいと答えていたのだ。武は早速正彦に証言を頼むが、不倫の発覚を恐れた正彦は知らないと答える。さらにアリバイは、息子の明彦とピアノのレッスンをしていたと答えるのだった。それを聞いた敏夫は、明彦を呼び出し、刑務所の前で、母を犯罪者にする気かと迫る。敏夫は明彦を殴るが、自分も殴り返して来いと、何かの配管用と思われるパイプを渡す。明彦は敏夫を殴りつけるが、やがて泣きながら謝り、敏夫のように強くなりたいと訴える。
正彦のもとに帰った明彦は、勇気をつけるために、敏夫の洋服を着ていた。正彦に反抗し、真実をすべて話す。明彦は、正彦に脅されて嘘をついていたのだ。妻の菊子にばらすと言われ、あわてて警察に証言する正彦。明彦は、正彦に初めて反抗したことで、自分の何かが変わったと、敏夫に礼を言った。由美子は晴れて釈放された。
しかし、真犯人は分からない。清司のマンションに残された血で汚れた白バラが最後の手がかりだった。江上刑事は、清司のマンションで聞き込みをする。隣の部屋の女性が、白バラのことは知らないが、犯人は清司の息子だと決めつける。かつて敏夫が清司を絞め殺そうとしたところを目撃した女性だったのだ。その話を聞いて、江上刑事は敏夫に目を向ける。敏夫は、事件の日清司との乱闘でボロボロになったスーツを、洋品店に修理に出したが、尾行していた刑事によって、押収される。信一が江上刑事を伴って大沢家に現れた。大沢夫妻を二度にわたって誤認逮捕したお詫びを言うためだ。そこで事件の当日、敏夫が白バラを身に着けていたことを華江の話で知る。信一は、話の成り行きを黙って聞いていた。華江は信一に、「叔父様と叔母様の容疑が晴れ、コンクールはすぐ。良かったわね」と話しかけるが、信一の表情は晴れない。「嵐の前の静けさかもしれない・・・」とつぶやくだけだった。
武が敏夫に墓のパンフレットを持ってきた。清司の墓を作りたいと言うのだ。敏夫は、「先生は失業中だから、余計な金を使うな」と言う。信一はそれを聞いて、「弁護士費用に必要かもしれないから、まだ金は使うな」と言った。武はその意味を聞こうとするが、敏夫は、「父さんが死んだなんて、信じられない。父さんは、立ち直ってきっとどこかで生きている。墓なんていらない」と訴えた。敏夫はまだ父の死を受け入れられていなかった。武は清司が天才らしく、自分たちに別れを告げたことを思い出し、どこかに旅立っていったのかもしれないと、敏夫の気持ちを汲んで、墓を作るのはやめにする。敏夫は、コンクール当日、清司の写真とともに挑むことを、武に告げる。妙子は千羽鶴を折って、敏夫を応援した。
いよいよコンクール当日が来た。
敏夫のスーツは、当日になってようやく届けられた。敏夫は朝から緊張でトイレに行きっぱなしだ。武と敏夫、由美子と妙子はそろって会場に向かう。信一は後で会場に向かうと言う。しかし、信一の表情は暗いままだった。
コンクール第一次予選が始まり、明彦の番が来た。敏夫は正彦叔父さんに反抗したときの気持ちを忘れるなと励ます。明彦も、絶対通過すると宣言した。
敏夫の順番が近づく。武と由美子に励まされ、舞台に向かおうとした敏夫に、江上刑事が近づいた。「田代敏夫、田代清司の殺害容疑で、逮捕する」
敏夫のスーツから清司の血が検出されたこと、白バラの血が敏夫のものであることなどが逮捕理由だ。スーツの血が、敏夫を自殺を止めるために清司が手を傷つけた際のものであることや、清司の改心を説明するが、聞く耳を持たれない。すぐに連行しようとする刑事を、武は必死で止める。「このコンクールで、敏夫の一生は決まる。敏夫は、いや、私もこの日を目指して、夜も寝ないで練習してきた。この日のためだけに生きてきた。このコンクールだけは、出場させてほしい。英雄ポロネーズを弾く7分間だけ、待って欲しい」と頼み込む。それでも連行しようとする刑事を、信一が止めた。「私からもお願いします。敏夫が逃げる恐れは全くありません。私が保証します」これに江上刑事も折れた。頷いて去る信一。
しかし、敏夫は脱力する。父殺しの容疑をかけられて、弾けるわけがない。
武は語りかける。「何度言えば分かるんだ!ピアニストが舞台に上がるときは、一切忘れろ。ただピアノだけを弾けばいいんだ。私の右腕になると言うのは嘘か?でたらめか?君にやましいことがないなら、お父さんが一番よく知っている。君はお父さんに約束した。コンクールに勝つと。それを守らないと、お父さんは泣くぞ。この写真に何と言って謝るんだ。君は天才田代清司の息子じゃないか。田代君のために、みんな忘れて、力いっぱい弾くんだ」敏夫は、清司の写真を受け取り「弾いてきます」と一言答えた。
英雄ポロネーズの7分間が始まった。
信一は江上刑事に、「敏夫の逮捕執行は、だれにも悟られないようにお願いします」と願い出る。江上刑事は、「検事さんのおっしゃる通りにします」と答えた。
舞台袖から敏夫の様子をじっと見守る武だった。
結果発表。
コンクール予選第一位通過は「田代敏夫」
敏夫は言う。「先生のおかげで、おやじを裏切らなかった。約束を守れました」
「君はやっぱり天才田代清司の子供だ。私の力じゃない。礼なんか言うな」時間が来た。敏夫の手首にかけられる手錠。
一次予選一位通過だけで満足だと言う敏夫に、武は、「けち臭いことを言うな!私は二次予選、本選も一位で通過させる。そんなことで大ピアニストになれるか?天才と言えるか?お父さんが泣くぞ!」そう言って励ます武。
「君には、私がいる。由美子がいる。必ず助けるからな!」
敏夫は、連行されてしまった。
感想
うおー!
この上がりきったテンションを、どこにぶつければいいのか!?
このドラマは、なぜにこうも詰め込むのか。本来なら、母由美子の逮捕と敏夫のコンクールは、それぞれ別の回に分けてもいいくらいだ。それほどの濃さがある。
敏夫のコンクールで、由美子の逮捕が完全に薄れてしまった。
とはいえ、由美子の武を思う気持ちには感動した。
何度も言うが、これぞ昭和である。由美子は清司を殺して自分も死ぬ覚悟だったのだ。清司のせいでこれ以上武を苦しめないために、無理心中を図るつもりだったらしい。
しかし、違う!それは違うぞ!由美子!
由美子まで死んでどうする!?それは武が一番悲しむことだ。
そうはいっても、昭和の女は、往々にしてそんなことをやらかしてしまうのだ。
敏夫のコンクール。
泣けた!
とにかく感動する。
大沢武の敏夫を励ます大演説。基本的に言っている内容は、今までの集大成なのだが、それだけに今までの苦労が、視聴者の胸に走馬灯のように浮かんでは消える仕掛けになっている(本当かよ)。
ここまで敏夫のピアノを育てたのは、武だ。しかし今日武は、自分をむなしくして、完全に父の田代清司を立てている。
これまた昭和だ。
連行される敏夫が、あきらめるなという武の励ましにこたえて、最後に言う。
「先生には勝てないよ。先生の言うとおりにします」
ここで初めて武は言う。
「それでこそ私の弟子だ」
しびれた。
今回は副題からして昭和だ。
なんたって「あゝ」だもんね。嗚呼!
そして、信一よ。今日のお前はかっこよかったぞ。
今回初めて、由美子と敏夫を家族と認め、心を痛めている。台詞は少ないが、その行動と表情だけで、心情の変化を表現している。
由美子に弁護士が必要なとき、周囲の人間が騒ぎ立てる横で、黙って適任者を選んでいる。
由美子の容疑が晴れて、家族に希望があふれているときも、一人沈んで思い悩んでいる。
彼は検事として、警察で明らかになる証拠を見るにつけ、あるひとつの結論を導き出しているのだ。
いつもならばすぐさま本人に問い詰めるところだが、それをしない。
その結論が信一自身も信じられないからだ。
家族の一員を疑わざるを得ない自分にも悩んでいるのだろう。
そして、敏夫逮捕の瞬間。
「敏夫が逃げる心配はない。それは保障する」
父が信じた男・敏夫を、初めて兄として信じてやる。
そして、
「逮捕時は、なるべく周囲に気付かれないように」と、被疑者を庇うような要請をする。
検事である兄としての、精一杯の思いやりであろう。
と、精一杯好意的に考えてみた。
そして敏夫。
すごい。
敏夫というより、水谷豊がすごい。
コンクールでピアノを弾く前と後では、表情が全く違う。
顔の相が違っている。
同じ人間とは思えないほど変わっている。
ピアノを弾くのとは全く違う緊張状態を表現しているのだろう。
凍りついたような厳しい表情だ。
愛する父を殺したと疑われることに対する怒り、戸惑い。心で感情は渦巻いているのだろうが、それを表現するのは並大抵ではない。。
しかし、武にだけは、表情を和らげる。
「先生にはかなわない」と。
今回は危険なことも多かった。
まず明彦の本心を引き出す場面。ドラマ内の設定で、アレは鉄パイプなのだろうか。でも鉄パイプで殴られてあれだけの傷で済むはずもないので、プラスチックのパイプだろうか。よく分からないが、明彦はそれで敏夫を殴りつける。
この場面は怖かった。
何しろ、コンクール直前なのだ。コンクールに出ることは分かっているが、明彦のやつ、腕などもがんがん殴る。大事な腕を武のように怪我したらどうするつもりなのか。そうはならないことは分かっているのに、思わず「ちょっ(笑)!」などと声を漏らしてしまったじゃないか。
コンクール直前にして乱闘シーンを持ってくる製作者のセンスに脱帽(笑)。
しかし、これによって明彦は肝が据わり、ひとつ大人になったのだ。
もう一点、武が連行される敏夫を見送る場面。
走り去るパトカーと並走するのだが、足が・・・。今にも足がタイヤに巻き込まれそうで非常に怖かった。
ちなみに、英雄ポロネーズだが、今までテレビ的に効果のある、おなじみの派手な部分ばかり弾いていたので、どうするのかと思っていたが、キチンと最初から弾いていた。
良かった良かった。
最後に1点だけ突っ込ませてほしい!!
今回、完全に時系列が崩壊してしまった!
前回、武は、自分の口でコンクールは3日後と言った。しかし、今回は警察にいる由美子に向かってコンクールまで後5日と口走ってしまったのだ!!
確かに3日では何もかも時間が足りなかっただろう。しかし・・・。
残念である。
繰り返す!
残念である。
とはいえ、そんなこと、このドラマの感動にはなんの影響も与えない。
時系列がなんだ。
視聴者は単に細かいことを気にせず、流れに身を任せればいいのだ。
それが、赤いシリーズの醍醐味だ。
こんな突っ込み、ドラマを見始めた一秒後には、視聴者は忘れ去るだろう。
それが、このドラマの力なのだ。
弟十五回へつづく・・・
「あゝ晴れのコンクールの日殺人罪で!」
敏夫と武が毎朝ホールでのピアノ練習を終え、自宅に戻ると、なんと由美子が田代清司の殺人容疑で逮捕された後だった。敏夫と武は、警察に赴き、由美子の無実を訴えるが、夫と子供の証言は相手にされない。由美子は実際清司を殺すつもりだったが清司の改心を知って9時過ぎにマンションを出ていた。由美子を救うには弁護士が必要だった。武は全く心当たりがないが、検事である信一が優秀な刑事事件専門の山田タメ子弁護士を紹介してくれる。由美子は面会に訪れた二人に、本当のアリバイを話す。マンションを出た後、東山正彦が不倫相手のクラブのママと会っているところに出くわしていたのだ。由美子は正彦に、大学での復職をその場で頼み込んでおり、正彦はここで自分と会ったことを黙っていれば、考えてもいいと答えていたのだ。武は早速正彦に証言を頼むが、不倫の発覚を恐れた正彦は知らないと答える。さらにアリバイは、息子の明彦とピアノのレッスンをしていたと答えるのだった。それを聞いた敏夫は、明彦を呼び出し、刑務所の前で、母を犯罪者にする気かと迫る。敏夫は明彦を殴るが、自分も殴り返して来いと、何かの配管用と思われるパイプを渡す。明彦は敏夫を殴りつけるが、やがて泣きながら謝り、敏夫のように強くなりたいと訴える。
正彦のもとに帰った明彦は、勇気をつけるために、敏夫の洋服を着ていた。正彦に反抗し、真実をすべて話す。明彦は、正彦に脅されて嘘をついていたのだ。妻の菊子にばらすと言われ、あわてて警察に証言する正彦。明彦は、正彦に初めて反抗したことで、自分の何かが変わったと、敏夫に礼を言った。由美子は晴れて釈放された。
しかし、真犯人は分からない。清司のマンションに残された血で汚れた白バラが最後の手がかりだった。江上刑事は、清司のマンションで聞き込みをする。隣の部屋の女性が、白バラのことは知らないが、犯人は清司の息子だと決めつける。かつて敏夫が清司を絞め殺そうとしたところを目撃した女性だったのだ。その話を聞いて、江上刑事は敏夫に目を向ける。敏夫は、事件の日清司との乱闘でボロボロになったスーツを、洋品店に修理に出したが、尾行していた刑事によって、押収される。信一が江上刑事を伴って大沢家に現れた。大沢夫妻を二度にわたって誤認逮捕したお詫びを言うためだ。そこで事件の当日、敏夫が白バラを身に着けていたことを華江の話で知る。信一は、話の成り行きを黙って聞いていた。華江は信一に、「叔父様と叔母様の容疑が晴れ、コンクールはすぐ。良かったわね」と話しかけるが、信一の表情は晴れない。「嵐の前の静けさかもしれない・・・」とつぶやくだけだった。
武が敏夫に墓のパンフレットを持ってきた。清司の墓を作りたいと言うのだ。敏夫は、「先生は失業中だから、余計な金を使うな」と言う。信一はそれを聞いて、「弁護士費用に必要かもしれないから、まだ金は使うな」と言った。武はその意味を聞こうとするが、敏夫は、「父さんが死んだなんて、信じられない。父さんは、立ち直ってきっとどこかで生きている。墓なんていらない」と訴えた。敏夫はまだ父の死を受け入れられていなかった。武は清司が天才らしく、自分たちに別れを告げたことを思い出し、どこかに旅立っていったのかもしれないと、敏夫の気持ちを汲んで、墓を作るのはやめにする。敏夫は、コンクール当日、清司の写真とともに挑むことを、武に告げる。妙子は千羽鶴を折って、敏夫を応援した。
いよいよコンクール当日が来た。
敏夫のスーツは、当日になってようやく届けられた。敏夫は朝から緊張でトイレに行きっぱなしだ。武と敏夫、由美子と妙子はそろって会場に向かう。信一は後で会場に向かうと言う。しかし、信一の表情は暗いままだった。
コンクール第一次予選が始まり、明彦の番が来た。敏夫は正彦叔父さんに反抗したときの気持ちを忘れるなと励ます。明彦も、絶対通過すると宣言した。
敏夫の順番が近づく。武と由美子に励まされ、舞台に向かおうとした敏夫に、江上刑事が近づいた。「田代敏夫、田代清司の殺害容疑で、逮捕する」
敏夫のスーツから清司の血が検出されたこと、白バラの血が敏夫のものであることなどが逮捕理由だ。スーツの血が、敏夫を自殺を止めるために清司が手を傷つけた際のものであることや、清司の改心を説明するが、聞く耳を持たれない。すぐに連行しようとする刑事を、武は必死で止める。「このコンクールで、敏夫の一生は決まる。敏夫は、いや、私もこの日を目指して、夜も寝ないで練習してきた。この日のためだけに生きてきた。このコンクールだけは、出場させてほしい。英雄ポロネーズを弾く7分間だけ、待って欲しい」と頼み込む。それでも連行しようとする刑事を、信一が止めた。「私からもお願いします。敏夫が逃げる恐れは全くありません。私が保証します」これに江上刑事も折れた。頷いて去る信一。
しかし、敏夫は脱力する。父殺しの容疑をかけられて、弾けるわけがない。
武は語りかける。「何度言えば分かるんだ!ピアニストが舞台に上がるときは、一切忘れろ。ただピアノだけを弾けばいいんだ。私の右腕になると言うのは嘘か?でたらめか?君にやましいことがないなら、お父さんが一番よく知っている。君はお父さんに約束した。コンクールに勝つと。それを守らないと、お父さんは泣くぞ。この写真に何と言って謝るんだ。君は天才田代清司の息子じゃないか。田代君のために、みんな忘れて、力いっぱい弾くんだ」敏夫は、清司の写真を受け取り「弾いてきます」と一言答えた。
英雄ポロネーズの7分間が始まった。
信一は江上刑事に、「敏夫の逮捕執行は、だれにも悟られないようにお願いします」と願い出る。江上刑事は、「検事さんのおっしゃる通りにします」と答えた。
舞台袖から敏夫の様子をじっと見守る武だった。
結果発表。
コンクール予選第一位通過は「田代敏夫」
敏夫は言う。「先生のおかげで、おやじを裏切らなかった。約束を守れました」
「君はやっぱり天才田代清司の子供だ。私の力じゃない。礼なんか言うな」時間が来た。敏夫の手首にかけられる手錠。
一次予選一位通過だけで満足だと言う敏夫に、武は、「けち臭いことを言うな!私は二次予選、本選も一位で通過させる。そんなことで大ピアニストになれるか?天才と言えるか?お父さんが泣くぞ!」そう言って励ます武。
「君には、私がいる。由美子がいる。必ず助けるからな!」
敏夫は、連行されてしまった。
感想
うおー!
この上がりきったテンションを、どこにぶつければいいのか!?
このドラマは、なぜにこうも詰め込むのか。本来なら、母由美子の逮捕と敏夫のコンクールは、それぞれ別の回に分けてもいいくらいだ。それほどの濃さがある。
敏夫のコンクールで、由美子の逮捕が完全に薄れてしまった。
とはいえ、由美子の武を思う気持ちには感動した。
何度も言うが、これぞ昭和である。由美子は清司を殺して自分も死ぬ覚悟だったのだ。清司のせいでこれ以上武を苦しめないために、無理心中を図るつもりだったらしい。
しかし、違う!それは違うぞ!由美子!
由美子まで死んでどうする!?それは武が一番悲しむことだ。
そうはいっても、昭和の女は、往々にしてそんなことをやらかしてしまうのだ。
敏夫のコンクール。
泣けた!
とにかく感動する。
大沢武の敏夫を励ます大演説。基本的に言っている内容は、今までの集大成なのだが、それだけに今までの苦労が、視聴者の胸に走馬灯のように浮かんでは消える仕掛けになっている(本当かよ)。
ここまで敏夫のピアノを育てたのは、武だ。しかし今日武は、自分をむなしくして、完全に父の田代清司を立てている。
これまた昭和だ。
連行される敏夫が、あきらめるなという武の励ましにこたえて、最後に言う。
「先生には勝てないよ。先生の言うとおりにします」
ここで初めて武は言う。
「それでこそ私の弟子だ」
しびれた。
今回は副題からして昭和だ。
なんたって「あゝ」だもんね。嗚呼!
そして、信一よ。今日のお前はかっこよかったぞ。
今回初めて、由美子と敏夫を家族と認め、心を痛めている。台詞は少ないが、その行動と表情だけで、心情の変化を表現している。
由美子に弁護士が必要なとき、周囲の人間が騒ぎ立てる横で、黙って適任者を選んでいる。
由美子の容疑が晴れて、家族に希望があふれているときも、一人沈んで思い悩んでいる。
彼は検事として、警察で明らかになる証拠を見るにつけ、あるひとつの結論を導き出しているのだ。
いつもならばすぐさま本人に問い詰めるところだが、それをしない。
その結論が信一自身も信じられないからだ。
家族の一員を疑わざるを得ない自分にも悩んでいるのだろう。
そして、敏夫逮捕の瞬間。
「敏夫が逃げる心配はない。それは保障する」
父が信じた男・敏夫を、初めて兄として信じてやる。
そして、
「逮捕時は、なるべく周囲に気付かれないように」と、被疑者を庇うような要請をする。
検事である兄としての、精一杯の思いやりであろう。
と、精一杯好意的に考えてみた。
そして敏夫。
すごい。
敏夫というより、水谷豊がすごい。
コンクールでピアノを弾く前と後では、表情が全く違う。
顔の相が違っている。
同じ人間とは思えないほど変わっている。
ピアノを弾くのとは全く違う緊張状態を表現しているのだろう。
凍りついたような厳しい表情だ。
愛する父を殺したと疑われることに対する怒り、戸惑い。心で感情は渦巻いているのだろうが、それを表現するのは並大抵ではない。。
しかし、武にだけは、表情を和らげる。
「先生にはかなわない」と。
今回は危険なことも多かった。
まず明彦の本心を引き出す場面。ドラマ内の設定で、アレは鉄パイプなのだろうか。でも鉄パイプで殴られてあれだけの傷で済むはずもないので、プラスチックのパイプだろうか。よく分からないが、明彦はそれで敏夫を殴りつける。
この場面は怖かった。
何しろ、コンクール直前なのだ。コンクールに出ることは分かっているが、明彦のやつ、腕などもがんがん殴る。大事な腕を武のように怪我したらどうするつもりなのか。そうはならないことは分かっているのに、思わず「ちょっ(笑)!」などと声を漏らしてしまったじゃないか。
コンクール直前にして乱闘シーンを持ってくる製作者のセンスに脱帽(笑)。
しかし、これによって明彦は肝が据わり、ひとつ大人になったのだ。
もう一点、武が連行される敏夫を見送る場面。
走り去るパトカーと並走するのだが、足が・・・。今にも足がタイヤに巻き込まれそうで非常に怖かった。
ちなみに、英雄ポロネーズだが、今までテレビ的に効果のある、おなじみの派手な部分ばかり弾いていたので、どうするのかと思っていたが、キチンと最初から弾いていた。
良かった良かった。
最後に1点だけ突っ込ませてほしい!!
今回、完全に時系列が崩壊してしまった!
前回、武は、自分の口でコンクールは3日後と言った。しかし、今回は警察にいる由美子に向かってコンクールまで後5日と口走ってしまったのだ!!
確かに3日では何もかも時間が足りなかっただろう。しかし・・・。
残念である。
繰り返す!
残念である。
とはいえ、そんなこと、このドラマの感動にはなんの影響も与えない。
時系列がなんだ。
視聴者は単に細かいことを気にせず、流れに身を任せればいいのだ。
それが、赤いシリーズの醍醐味だ。
こんな突っ込み、ドラマを見始めた一秒後には、視聴者は忘れ去るだろう。
それが、このドラマの力なのだ。
弟十五回へつづく・・・
Comments
コメントありがとうございます。
ですが、赤い激流が昼ドラだとは言及しておりません。コメント欄の文脈から思い違いをされたのでしょうか。
ですが、金曜の九時から放送だったのですね。情報ありがとうございます。
確か初回放送は毎週金曜日の夜9時から放送していたはず。
他の「赤いシリーズ」も最近作を除いて全てこの時間帯だよね。
ありがとうございます!
もー、すごい展開です。でも、なんというか、覚めてしまうようなものではなく、いまのところ力技で納得させられているのがすごいです(笑)。
昼ドラで男に走っちゃったか・・・。逃避だったのか本気なのか・・・。その結末が気になります。
ありがとうございます!
この日付設定ミスは痛いですね・・・。
勢いを感じさせるのはいいのですが、DVDにできないほどの勢いをつけてどうする?って感じです・・・。悲しいことです・・・。
そう言えば昼のドラマで幸せの行方というドラマがあって筋立てが大映テレビ並みの急展開しまくりな内容でした。奥さんと母親の板挟みになったダンナが男に走る〜な回の時には体から何かが抜けそうな衝撃でした。