赤い激流・第十三回 レビュー
第十二回のレビューはコチラ。
「愛する妻が殺人者?」
あらすじ
武は警察に連行された。取り調べで、武はありのままを話すが、なぜか殺人容疑をかけられていることを知る。そこで警察から凶器として使われたと思われる包丁を見せられ愕然とした。その包丁は、由美子愛用の包丁であり、柄が壊れたのを武自ら修理したものだったのだ。とっさに武は由美子が犯人だと思い込み、由美子をかばうために、田代清司を殺したのは自分だと自供してしまう。
敏夫は、武がやったとはどうしても信じられない。宮島家にはマスコミが押しかけ、東山正彦が対応に出ていた。正彦は、清司が優秀な講師であり、その死を非常に悼んでいること、武は清司の死の前に辞職しており、宮島音楽大学とは何の関係もないことを強調する。
正彦は、妻の菊子と、とりあえずの危機を脱したことに、安堵の溜息をついた。
そこへ敏夫が現れた。武の無実を信じる敏夫は、宮島家の力で、武を助けてほしいと頼みに来たのだ。東山夫妻はもちろん相手にしない。敏夫は宮島学長夫妻にも頼みに行くが、学長は具合が悪く寝込んでいると言う。妻のあやは、「こうなってはヘタに動くのはかえって良くない。自分たちにできることは何もない。もう関わり合いになりたくない」と、常にない剣幕で協力を拒否する。華江はそんな宮島家の人々を非難する。敏夫はもう頼まないと出て行ってしまった。
敏夫は次に検事である信一に何とかしろとねじ込む。が、検事とはいえ、捜査段階では何も手が出せないと信一は諦め顔。しかも、あれほど苦しめられた父ならば、清司殺害もあり得ると言う。彼は検事として、どんな善人でも殺人を犯す事例を、いやと言うほど見てきたのだ。父を信じない信一を敏夫は責めるが、反対にそこまで大沢家を追い詰めた清司のことを、信一に責められるのだった。
武は刑事と現場検証に行くが、犯行の状況を聞かれても、碌に説明できない。
武の着替えなどを準備する由美子と妙子。だが由美子は心労がたたって、倒れ、入院してしまう。由美子の代わりに着替えや食べ物を差し入れる敏夫は、十五分だけ面会を許された。自分にだけは本当のことを言ってほしいと迫る敏夫。だが由美子をかばう武は、ピアノにかけて、自分がやったと言ってしまう。
清司の生前、父が憎いあまり殺そうとしたのを武が止めてくれたからこそ、自分は踏みとどまったのに、なぜ武が人を殺すのか。敏夫には分からなかった。もし本当に殺したとすれば、今までの教えは、すべて嘘だったことになる。ピアノすらも、嘘なのか。「真の芸術家である先生が、人を殺したとなると、何も信じられない」と言い、荒れる敏夫を、武は全身で抑え込み、「ピアノだけは続けてほしい。コンクールには出てほしい」と頼む。そんな勝手な頼みが聞けるわけがなく、敏夫は絶望して差し入れのウナギを机から払い飛ばして取調室を出た。
散乱したウナギの弁当を拾う武。しかし先ほど敏夫と乱闘した際に掴まれた腕の痛みで、右腕は効かない。仕方なく左手で拾う武。そしてその動きを江上刑事(加藤武)は見ていた。彼は取調室に入って聞く。「先生、その右手は、いつからそんな風に・・・?」
敏夫は、由美子の入院先で見舞いに来ていた華江と会う。由美子と遠くで二人で暮らすと言う敏夫に、「なぜ叔父様を信じないの?」と言って責める華江。何もかも嫌になった敏夫は華江と駆け落ちしたいと言う。華江は「あなたを軽蔑する。こんな人を愛していたなんて馬鹿みたい」と言って去るのだった。
寺で田代清司の葬儀が行われた。参列者は由美子と敏夫だけだ。
そこへ江上刑事が武を伴って現れた。
武の容疑が晴れたのだ。犯人は右利きであり、しかも全身8カ所をめった刺しにしている。右手の利かない武の犯行は不可能だった。
江上刑事は、武の人の好さから、自分が犯人だと思い込んだらしいとする。
江上刑事と別れた後、敏夫は武に誰をかばっているのか問い詰めた。敏夫は自分が武に疑われたと思ったのだ。そう聞かされて、やはりとっさに武はそうだと答えてしまう。改心した清司を殺すわけがないと言って敏夫は笑った。
寺から戻ると、家に先ほどの江上刑事がスイカを携えて謝罪に訪れた。居間でたばこに火をつけようとする江上刑事だが、ライターがない。由美子は刑事の足元に落ちていたライターを拾い上げ、渡した。刑事がさりげなくライターを白いハンカチで包むのを、敏夫は見ていた。持参したスイカを、江上刑事は自ら切ると言い出す。妙子はいつもの包丁を探すが、見当たらない。刑事の考えが読めた敏夫は、事件当日の由美子の足取りを聞き出そうとする刑事を制して、喪服から着替えてくるように勧める。刑事が帰る時間になっても、由美子は二階から降りてこなかった。
武は由美子に事件の日のことを聞いてみる。由美子は武が自分をかばっていたことをその一言で察するが、自分は殺していないと訴える。確かに、当日由美子は清司を殺すためにマンションを訪れた。しかし、揉み合いになったとはいえ、殺す前に、清司からすべてあきらめてフランスに渡ると聞かされ、ワインを飲んだだけで帰ってきたと言う。武は、一瞬でも妻を疑ったことを詫びるのだった。
敏夫はそれを聞いて、安堵してピアノを弾く。練習が全くできなかったので、武にレッスンを願い出る。武も心の重荷を降ろして、コンクール会場の下見に行こうと誘う。
コンクール会場で、武は聞く。「10年前、ここで私と田代君は、英雄ポロネーズで優勝を争った。君は、私と田代君に勝てるか?」敏夫は答えた。「勝ちます!」武は続けた。「ここで数百と言う観衆と審査員が君のピアノに耳を傾ける。しかし、君のピアノをもっとも注意深く、愛情を持って聞いている人間は一人しかいない。それは、君自身だ。それだけは忘れるな」
本番のつもりで練習を始める敏夫。それを武は希望をもって聞いている.
その時。大沢家を訪れるサイレンの音。
江上刑事は由美子に言う。「奥さん、この包丁に見覚えがありますね。殺人現場から、あなたの指紋が付いたワイングラスが発見されました。あなたを殺人の容疑で逮捕します」
毎朝音楽コンクールまで、あと3日。
感想
これだ。
おそらく、その昔私が初めて赤い激流の再放送を見た回とは、この回のことだったのだ。
ウナギの弁当を左手で拾う宇津井健。この場面私は非常によく覚えている。
つまり宇津井健が敏夫を庇って逮捕されたと記憶していたのは私の勘違いで、母の由美子が逮捕されるのも、敏夫を庇ったのではなかった。
「なんだかとりあえず誰かを庇っていたよな」という記憶が、敏夫の容疑とごっちゃになってしまったのだろう。
なんというか。
数々のお笑いポイントを論じてきた私だが、今回そのポイントを探すのが難しい。というより、お笑いなどない。
乱闘ポイントもあるにはあるのだが、内容が重過ぎて辛い。
あるのは悲劇だけだ。
それにしても泣けた・・・。
大沢武。
彼は愛するもののためなら、それこそ何でもやる。平気で嘘もつく。
もちろん彼のやったことが正しいとは言えない。
けれどもいろんな要素が重なり合って、あの場はああやって嘘をつくしかなかったのだ。
偽証罪に問われなかったのは運が良かった。この点だけは、今までひたすら実直に誠実に生きてきたことを見てきた何かが、彼を見逃してくれたのだろう。と、好意的に書いてみる。
敏夫と武の対決シーンはやはり感動的だ。
自分にだけは、本当のことを言って欲しいと詰め寄る敏夫。しかし武はピアノに誓って殺したと言ってしまう。
あの場で、武の由美子への愛は、ピアノを越えてしまった。
ピアノだけでは生きていけない。愛する妻があってこそのピアノなのだ。
そして、そんな武に絶望する敏夫。
水谷豊の演技が良かった。
ぶつけようのない戸惑いと怒り。愛する父を殺されたことよりも、信じてきた師の芸術を疑わなければならない悲しみが、水谷から溢れていた。
そして今回これだけは言わせてほしい。
由美子。というより、松尾嘉代だ。
なんというか・・・。
色気がある。
急になんのこっちゃと思われるだろうが、彼女の手の演技はすごい。
武に取りすがったり、武の腕を触ったりするときの手の演技が、何とも言えず艶があるのだ。指先にまで神経を張り巡らせた芝居。
手の存在感に、なんとなくこっちは照れる。
コンクールまで、あと3日。
次回、とうとうコンクールである。
刮目せよ!
第十四回につづく・・・
「愛する妻が殺人者?」
あらすじ
武は警察に連行された。取り調べで、武はありのままを話すが、なぜか殺人容疑をかけられていることを知る。そこで警察から凶器として使われたと思われる包丁を見せられ愕然とした。その包丁は、由美子愛用の包丁であり、柄が壊れたのを武自ら修理したものだったのだ。とっさに武は由美子が犯人だと思い込み、由美子をかばうために、田代清司を殺したのは自分だと自供してしまう。
敏夫は、武がやったとはどうしても信じられない。宮島家にはマスコミが押しかけ、東山正彦が対応に出ていた。正彦は、清司が優秀な講師であり、その死を非常に悼んでいること、武は清司の死の前に辞職しており、宮島音楽大学とは何の関係もないことを強調する。
正彦は、妻の菊子と、とりあえずの危機を脱したことに、安堵の溜息をついた。
そこへ敏夫が現れた。武の無実を信じる敏夫は、宮島家の力で、武を助けてほしいと頼みに来たのだ。東山夫妻はもちろん相手にしない。敏夫は宮島学長夫妻にも頼みに行くが、学長は具合が悪く寝込んでいると言う。妻のあやは、「こうなってはヘタに動くのはかえって良くない。自分たちにできることは何もない。もう関わり合いになりたくない」と、常にない剣幕で協力を拒否する。華江はそんな宮島家の人々を非難する。敏夫はもう頼まないと出て行ってしまった。
敏夫は次に検事である信一に何とかしろとねじ込む。が、検事とはいえ、捜査段階では何も手が出せないと信一は諦め顔。しかも、あれほど苦しめられた父ならば、清司殺害もあり得ると言う。彼は検事として、どんな善人でも殺人を犯す事例を、いやと言うほど見てきたのだ。父を信じない信一を敏夫は責めるが、反対にそこまで大沢家を追い詰めた清司のことを、信一に責められるのだった。
武は刑事と現場検証に行くが、犯行の状況を聞かれても、碌に説明できない。
武の着替えなどを準備する由美子と妙子。だが由美子は心労がたたって、倒れ、入院してしまう。由美子の代わりに着替えや食べ物を差し入れる敏夫は、十五分だけ面会を許された。自分にだけは本当のことを言ってほしいと迫る敏夫。だが由美子をかばう武は、ピアノにかけて、自分がやったと言ってしまう。
清司の生前、父が憎いあまり殺そうとしたのを武が止めてくれたからこそ、自分は踏みとどまったのに、なぜ武が人を殺すのか。敏夫には分からなかった。もし本当に殺したとすれば、今までの教えは、すべて嘘だったことになる。ピアノすらも、嘘なのか。「真の芸術家である先生が、人を殺したとなると、何も信じられない」と言い、荒れる敏夫を、武は全身で抑え込み、「ピアノだけは続けてほしい。コンクールには出てほしい」と頼む。そんな勝手な頼みが聞けるわけがなく、敏夫は絶望して差し入れのウナギを机から払い飛ばして取調室を出た。
散乱したウナギの弁当を拾う武。しかし先ほど敏夫と乱闘した際に掴まれた腕の痛みで、右腕は効かない。仕方なく左手で拾う武。そしてその動きを江上刑事(加藤武)は見ていた。彼は取調室に入って聞く。「先生、その右手は、いつからそんな風に・・・?」
敏夫は、由美子の入院先で見舞いに来ていた華江と会う。由美子と遠くで二人で暮らすと言う敏夫に、「なぜ叔父様を信じないの?」と言って責める華江。何もかも嫌になった敏夫は華江と駆け落ちしたいと言う。華江は「あなたを軽蔑する。こんな人を愛していたなんて馬鹿みたい」と言って去るのだった。
寺で田代清司の葬儀が行われた。参列者は由美子と敏夫だけだ。
そこへ江上刑事が武を伴って現れた。
武の容疑が晴れたのだ。犯人は右利きであり、しかも全身8カ所をめった刺しにしている。右手の利かない武の犯行は不可能だった。
江上刑事は、武の人の好さから、自分が犯人だと思い込んだらしいとする。
江上刑事と別れた後、敏夫は武に誰をかばっているのか問い詰めた。敏夫は自分が武に疑われたと思ったのだ。そう聞かされて、やはりとっさに武はそうだと答えてしまう。改心した清司を殺すわけがないと言って敏夫は笑った。
寺から戻ると、家に先ほどの江上刑事がスイカを携えて謝罪に訪れた。居間でたばこに火をつけようとする江上刑事だが、ライターがない。由美子は刑事の足元に落ちていたライターを拾い上げ、渡した。刑事がさりげなくライターを白いハンカチで包むのを、敏夫は見ていた。持参したスイカを、江上刑事は自ら切ると言い出す。妙子はいつもの包丁を探すが、見当たらない。刑事の考えが読めた敏夫は、事件当日の由美子の足取りを聞き出そうとする刑事を制して、喪服から着替えてくるように勧める。刑事が帰る時間になっても、由美子は二階から降りてこなかった。
武は由美子に事件の日のことを聞いてみる。由美子は武が自分をかばっていたことをその一言で察するが、自分は殺していないと訴える。確かに、当日由美子は清司を殺すためにマンションを訪れた。しかし、揉み合いになったとはいえ、殺す前に、清司からすべてあきらめてフランスに渡ると聞かされ、ワインを飲んだだけで帰ってきたと言う。武は、一瞬でも妻を疑ったことを詫びるのだった。
敏夫はそれを聞いて、安堵してピアノを弾く。練習が全くできなかったので、武にレッスンを願い出る。武も心の重荷を降ろして、コンクール会場の下見に行こうと誘う。
コンクール会場で、武は聞く。「10年前、ここで私と田代君は、英雄ポロネーズで優勝を争った。君は、私と田代君に勝てるか?」敏夫は答えた。「勝ちます!」武は続けた。「ここで数百と言う観衆と審査員が君のピアノに耳を傾ける。しかし、君のピアノをもっとも注意深く、愛情を持って聞いている人間は一人しかいない。それは、君自身だ。それだけは忘れるな」
本番のつもりで練習を始める敏夫。それを武は希望をもって聞いている.
その時。大沢家を訪れるサイレンの音。
江上刑事は由美子に言う。「奥さん、この包丁に見覚えがありますね。殺人現場から、あなたの指紋が付いたワイングラスが発見されました。あなたを殺人の容疑で逮捕します」
毎朝音楽コンクールまで、あと3日。
感想
これだ。
おそらく、その昔私が初めて赤い激流の再放送を見た回とは、この回のことだったのだ。
ウナギの弁当を左手で拾う宇津井健。この場面私は非常によく覚えている。
つまり宇津井健が敏夫を庇って逮捕されたと記憶していたのは私の勘違いで、母の由美子が逮捕されるのも、敏夫を庇ったのではなかった。
「なんだかとりあえず誰かを庇っていたよな」という記憶が、敏夫の容疑とごっちゃになってしまったのだろう。
なんというか。
数々のお笑いポイントを論じてきた私だが、今回そのポイントを探すのが難しい。というより、お笑いなどない。
乱闘ポイントもあるにはあるのだが、内容が重過ぎて辛い。
あるのは悲劇だけだ。
それにしても泣けた・・・。
大沢武。
彼は愛するもののためなら、それこそ何でもやる。平気で嘘もつく。
もちろん彼のやったことが正しいとは言えない。
けれどもいろんな要素が重なり合って、あの場はああやって嘘をつくしかなかったのだ。
偽証罪に問われなかったのは運が良かった。この点だけは、今までひたすら実直に誠実に生きてきたことを見てきた何かが、彼を見逃してくれたのだろう。と、好意的に書いてみる。
敏夫と武の対決シーンはやはり感動的だ。
自分にだけは、本当のことを言って欲しいと詰め寄る敏夫。しかし武はピアノに誓って殺したと言ってしまう。
あの場で、武の由美子への愛は、ピアノを越えてしまった。
ピアノだけでは生きていけない。愛する妻があってこそのピアノなのだ。
そして、そんな武に絶望する敏夫。
水谷豊の演技が良かった。
ぶつけようのない戸惑いと怒り。愛する父を殺されたことよりも、信じてきた師の芸術を疑わなければならない悲しみが、水谷から溢れていた。
そして今回これだけは言わせてほしい。
由美子。というより、松尾嘉代だ。
なんというか・・・。
色気がある。
急になんのこっちゃと思われるだろうが、彼女の手の演技はすごい。
武に取りすがったり、武の腕を触ったりするときの手の演技が、何とも言えず艶があるのだ。指先にまで神経を張り巡らせた芝居。
手の存在感に、なんとなくこっちは照れる。
コンクールまで、あと3日。
次回、とうとうコンクールである。
刮目せよ!
第十四回につづく・・・
Comments
ありがとうございます!
なるほどー。一連の流れでご覧になっていたんですね。すごく豪華なラインナップですね。
キャンディキャンディ赤い激流岸辺のアルバムは悲劇的な要素がどれも強く結局テレビの前から離れることはなかった笑