SWEET SWEET SWEET

手作りのお菓子やパン、料理など美味しいもの、
そして大好きな本など紹介します♪

ドリトル先生のこと。

ドラマの方ではなく、児童文学のほうで。

世界で唯一、動物語を喋れる獣医・ドリトル先生シリーズは、小学校の時に友達の家にハードカバー版が全巻あり、それを一冊づつ借りて夢中で読んでいました。
全く、純粋と言うかなんというか、ドリトル先生は実在の人物だ!なんて、信じちゃったりしていましたよ。
私の当時の夢は、ドリトル先生のように、動物語を喋れるようになること。
そのためには、オウムを一羽、なんとしても手に入れなければならなかったのですが・・・。もちろん、夢で終わりました。(笑)

一時期、人種差別の観点から、出版されなくなったりしていたようで、驚いたのも思い出です。
アフリカの人種に対する記述が問題だったのでしょうか。
でも、ドリトル先生自体は、人種がどうであれ、決して差別するような人ではなかったんですけどね。それどころか、彼らのために献身的に働いたりしていたんですが・・・。

ドリトル先生は、もともと人間のお医者さんだったのです。
それが、英語を解するオウムのポリネシアから、「どうして動物を治さないのです?」と言われたことをきっかけに、ポリネシアから動物語を習い、動物を治す獣医になったのです。もともと、オウムに英語を教えたのは、ドリトル先生なのです。

ここから、動物とドリトル先生を巡るお話が始まるのですが、井伏鱒二の翻訳がなんと言っても素晴らしいのです。
動物達の話す言葉の優しくて美しいこと。
動物達は、世界で唯一の獣医ドリトル先生を最大に尊敬していて、いつでも尊敬語で話すので、考えてみると、とても勉強になると思います(笑)。
動物達の個性豊かさは、良くぞここまで書き分けられると感心させられますよ。
ドリトル先生の家にもともといる動物達だけでも個性の強い顔ぶれです。
まず、オウムのポリネシアは超がつく賢いオウム。ドリトル一家の参謀です。商売っ気のないドリトル先生がホームレスにならずにすんでいるのは、ポリネシアと数学家のふくろうのトートーがいるからです。ポリネシアが闘牛場で見せた機知は、本当にかっこよかったです。トートーも賢くて、先生の金遣いの荒さに、切れたこともあります(笑)。犬のジップは、好奇心旺盛で、人情(?)に厚い犬。家政婦であるアヒルのダブダブは、一家のお母さん的存在。面白いことがあれば夜更かしも厭わない一家を厳しく律しています。
美食家の豚のガブカブは、うぬぼれやで、トラブルメーカー。けど、憎めません。サルのチーチーは、故郷のアフリカを恋しがりつつ、ドリトル先生の近くがやっぱりいいのです。
そして、その他にも沢山出てくる動物達。喧嘩っ早くて口が悪いロンドンスズメのチープサイドとその妻ベッキー。世界のニュースをいち早く届けてくれるツバメの韋駄天のスキマーなどなど。

そして、一冊のほんの中に、これでもかー!って、動物達とドリトル先生の面白いエピソードが詰め込まれているのです。
面白いのは、事件や、歴史上(あるいは聖書の)の出来事、果ては殺人事件の裁判まで!を、全て動物側の視点から描ききった点でしょうか。
物語の中には、動物が経験した出来事を、動物自身が語るという手法が度々とられています。そのどれもが、なんというか、矛盾なく、納得させられるというか楽しい物語になっているんですねー。今ならベスビオ火山の噴火のことだったのだなぁとか、ノアの箱舟のこととか、元ネタは分かるのですが、そんな事知らない子供でも夢中にさせてしまう楽しさです。

そして、なんと言ってもドリトル先生が魅力的!
優秀で人気のある医者だったのに、先生を慕う動物が世界中から沼のほとりのパドルビーの先生の家に押し寄せる為、患者が寄り付かなくなってしまいますが、彼はちっとも気にしません。
ドリトル先生って、何歳くらいなのかしら。
いろんなところに旅行に出かけたり、激しい運動をしたりしているから、そんなに老人ではないはずですが、ちょっと想像がつきませんね。
日本人が演じるとしたら、故小林桂樹なんかがいいと思いますが、老年過ぎるかな・・・。
私が一番好きなエピソードは、「ドリトル先生のサーカス」のオットセイのソフィを海に帰す冒険の、「ソフィと先生の駆け落ち編」でしょうか。
サーカスに捉えられたオットセイは、北の海に残してきた自分の夫の身を案じて毎日泣いています。ドリトル先生は、ソフィの夫がオットセイのボスで、彼がソフィを想ってボスとしての役割を果たせず、オットセイの群れが危機的状況に陥っているのを知って、ソフィを海に帰す決心をするのです。
しかし、海に帰すといっても、もちろん極秘で。
遠い海までの旅をドリトル先生とソフィの二人は、無事に終えることができるのか?
この旅が、全く面白くて、ワクワクするんですよ。
もちろん動物達も協力して活躍するのですが、その協力の仕方も、動物ならではなんですよねー。
ドリトル先生は、サーカスの追っ手から逃げている間も、至って落ち着いており、ひとまず逃げ込んだ空家で、庭の手入れをしたり、髭をそったりします。
この、庭の手入れと言うのが、幼心にあまりピンとこなかったのですが、今考えてみると、イギリス人の大好きなガーデニングが、ドリトル先生も好きだったってことなんですよね。さらに、おなかがすいたドリトル先生は、庭で玉ねぎを探したりしますが、玉ねぎなんて、見つけたとして、どうするのかしら・・・。って、今でも謎です(笑)
牢屋に入れられても、全然平気。
牢屋で支給されたパンについて、「なんと上等なパンだ!後でパン屋の名前を聞かなければ・・・」なんてつぶやいたりします。

もうエピソードは書ききれませんが、ドリトル先生が創設した「引退した辻馬車馬・荷馬車馬の会」に入りたい血統の良いサラブレッドの(と思われる)馬・オニユリ号や、「雑種犬ホーム」に入りたい数々のドッグショーで優勝しているダルメシアン犬など、人間にとっての幸せと、動物にとっての真の幸せの違いを考えさせられるエピソードなどは、痛快ですよ。

これほど動物に慕われている先生ですが、人間の中では、変わり者扱いです。動物語が喋れるのを知っているのは、助手のトミー・スタビンズ君、ネコ肉屋(ネコ肉屋って職業は、今でも謎ですが)のマシュー・マグとそのおかみさん、アフリカのジョギリンギの王子・バンポくらいです。
でも、そのことを知らなくても、ドリトル先生の元患者さんや、人柄を知る昔からの友人は、度々先生の窮地を救ってくれます。

ドリトル先生のお話に出てくる食べ物(キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!)にも、興味が湧いていた小学生でしたが、中でも謎だったのが、塩漬け肉と、「ドリトル先生の楽しい家」に出てくる「種入りケーキ」。
種入りケーキのお話は、ロンドンの動物園に来たドリトル先生が、案内役のチープサイドから聞いたエピソード。
動物園に捉えられたカンムリサケビドリに何かしてあげたいと、スズメのチープサイドが好物を聞いたところ、干したスグリが好きだという答えが返ってきます。
そこで、動物園の中で、動物学者が始終お茶ばかり飲んでいる建物に探しに行きますが、なぜか種入りケーキしかない。そこで、人間に「種入りケーキ」ではなく、スグリのケーキを出させるにはどうすればいいか・・・。
その答えとは・・・
この、種入りケーキって言うのが、長年の謎だったのですが、これはつまり、「シードケーキ」のことではないかと思います。
昔の翻訳で、児童文学なので、「シードケーキ」と書いても、スグリのケーキとは区別が付けられませんものね。
ここは翻訳者の苦労がしのばれる場面でした。

ちょっと!長すぎますね。この記事。
でも、どんどん思い出が湧いてきて、やっぱりドリトル先生のお話は楽しかったなぁ・・・って、思います。
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