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赤い激流・最終回二十六回 レビュー ネタバレあり

このレビューは、最終回の核心部分・真犯人を完全ネタバレいたします。ご注意ください。あらすじも過去最高に長いです。ご注意ください。
第二十五回はコチラ
「愛はいのち」

あらすじ

警察から身を隠すうちにはぐれてしまった敏夫と武。武が木元光子とともに宮島家に戻ると、宮島学長が倒れて救急車で運ばれるところだった。学長の妻・あやに付き添ってほしいと言われ、病院に同行する武。宮島家に残る信一に、由美子と敏夫から連絡があったら、無茶をせず隠れているように指示してほしいと話す。信一は頷いて送り出した。学長の癌は脳にまで転移しており、手術も無駄な状態になっていた。正彦は病院に武がいることを警察に電話し、敏夫が病院に現れるはずと話す。敏夫が死刑になれば武は大学に戻ることはできない。正彦は大学と宮島家が手に入るとほくそえんでいた。一方敏夫は由美子と逃げ続けて夜を明かした。敏夫は大学病院に行って学長から直接真犯人を聞き出すと言う。(注1)由美子は必死で止めるが、死刑になるか、無罪になるかこの一事にかけると言う。由美子は覚悟して敏夫とともに病院に行く。病院に敏夫がつくと、果たして警察が待ち構えていた。敏夫は賭けに負けたのだ。敏夫とともに由美子も逮捕されてしまう。武は病室からその様子を見て駆けつける。敏夫は「母さんだけは助けてくれ」と言い残して連行される。「必ず助ける」そう二人を励ます武。拘置所から護送車に乗り込む敏夫を信一が呼び止めた。今日、敏夫は東北の刑務所に移され、そこで死刑が執行される見通しだった。(注2)「敏夫!あきらめるな!きっと真相をはっきりさせて、お前を助ける」そう励ます信一に、敏夫は頼みが二つあると言う。「華江さんと結婚して、幸せにしてくれ」「本気で言っているのか」驚く信一に敏夫は続けた。「本気だ。それと、母さんを母親と認めて、『お母さん』と呼んでやって欲しい」「分かった。敏夫、諦めるなよ」敏夫は上野発仙台行の普通列車に乗せられ、出発した。「母さん、先生、さようなら」
信一から敏夫が死刑場がある東北刑務所に送られたこと、刑の執行は近いことを聞かされた武は(注3)、実から誰にも遠慮せず、正しいことをやれと励まされる。
田代清司のマンションでは、木元光子が清司に別れを告げ、フランスに発とうとしていた。そこへ武と実が現れる。武は、清司を愛しているなら、その清司の息子、敏夫が殺されるのをなぜ黙ってみているのかと、真相を話すよう迫る。光子は今自分が苦しんでいるのは、愛している人のためだと言う。やはり光子は誰かをかばっている。それは誰だと問う武に、光子はそれだけは言えないと泣き崩れる。その様子を見ていた実と武は、真犯人が誰だか分かってしまう。光子が死んでもかばいたい人間。自分の師・親と思う人物。それは一人しかいなかった。その事実に、武と実は打ちのめされた。
武は宮島家にすべてを明らかにするために来た。正彦は面会謝絶だと言うが、武は振り切って上り込む。あやは、もう少しで死ぬ人間を苦しめたいのかと武を責めるが、「お義母さんも、学長も正しい立派な人間です。最後まで堂々と正しく生きてほしい」と武が言うと、あやは覚悟を決めた。
学長が真実を話すときが来た。
真犯人は・・・私だ」
がっくりと力が抜ける武。
正彦の裏口入学で、田代清司から強請られていた学長は、金だけならまだしも、一生をかけて育て、命より大事な大学まで奪われそうにっていることに悩んでいた。殺すつもりはなかったけれども、気性の激しいあやは、清司を殺すと何度も口にしたという。それでも話し合うために清司のマンションに行った。清司の顔を見ると、急に清司への憎しみが抑えられなくなった。学長も芸術家、カッとなり自分を押さえつけられず、殴りかかる。しかし清司の力が強く、学長は逆に床にたたきつけられた。学長はそこへ転がっていた由美子の包丁で清司に切り付け、気が付くと清司は死んでしまったのだった。清司に会いに来ていた光子は学長が逃げ出す際廊下で出会い、血で汚れた服を見たが、何も言わずにフランスに帰った。(注4)学長は苦しみ抜き、敏夫が逮捕されてからは毎日が地獄だった。何とか敏夫の罪をなくすため、清司が生きているように、清司の名をかたって電話や郵便物を送りつけたのは学長だったという。何度も自首しようとしたが、大学や音楽の才能を育てることを捨てきれなかった。それでも自首しようとしたが、癌だと知ったあやが、それを止めていた。しかし、学長は最後に正しく生きることを選び、自首を決意したのだ。学長は、大学を武に受け継いでほしいと願い出る。武は大学を引き受け、学長の精神を伝えると約束する。学長は大沢一家を死ぬほど苦しめたことを謝罪し、早く敏夫を自由の身にしてくれと頼む。武は学長の体を気遣い、もう休むように勧めた。
正彦はその様子を立ち聞きしており、菊子に伝える。愕然とする菊子。正彦は薄々感づいており、光子に問い詰めていたという(注5)。そこへ武が入ってきた。正彦は学長を追い落としてまで大学を手に入れたいのかとなじるが、武は「今日こそ君を許さない」と言って、正彦を殴りつけた。「学長は人を殺すような人間ではない。しかしその人に田代君を殺させたのは君だ。君の裏口入学さえなければ、田代君はゆすらなかったし、学長も殺さずに済んだ。君が自分の罪を詫びるまで許さない」そう言って殴る武。明彦も菊子も、正彦の罪を認め、詫びるよう促す。正彦は「学長に両手をついて詫びる。それで罪が償えなければ、菊子と別れる」と言う。それを武がまた殴った。「そんなことで罪が消えるのですか。あなたがやることはたった一つ。私と力を合わせて、大学と宮島家を守ることだ。それが本当の罪の償いだ」驚く正彦に、「大学の経営は私には無理だ。あなたの力が必要だ」と言う武。「分かった。私でよければ、引き受ける」そう言う正彦に、武は安堵した。「家族が力を合わせれば、なんだってできる。菊子さんと明彦君を、大事にしてほしい」と頼む。菊子も「あなたを支える」と宣言し、明彦も「二人に心配かけないようにする」と誓った。正彦はその二人を抱きしめる。「私は一から出直す。宮島家を守り抜く」東山親子が、新しいきずなで結ばれた。
警察は、医師の診察から拘留することは無理と判断し、取り調べは自宅ですることになる。光子は学長のそばにいたがるが、学長は警察に捕まる姿を見せたくないと、フランスに帰す。東北の刑務所から敏夫が釈放された。そこへ駆け寄る武、由美子、信一、妙子。喜び合う一同。泣き崩れる由美子を信一が助け起こし、「お母さん」と声をかけて、笑いかけ、ハンカチを渡す。それを聞いて、敏夫は信一が初めてお母さんと言ったと喜び、信一に礼を言う。信一は「敏夫、お前も僕の弟なら、コンクールに勝て!負けたら承知しない」と答える。妙子も「兄さん、頑張って!」と励ました。
コンクールが始まった。
テンペストを弾く敏夫。客席から見守る武、実、由美子、妙子、信一。
「本選ピアノ部門第一位は、宮島音楽大学の田代敏夫君」この結果、敏夫はポーランドで開かれるショパンコンクールの出場資格を得た。安堵する武。
優勝者挨拶で敏夫は「どうしようもない自分がコンクールで勝てた理由は二つ。一つは大沢武先生です。(中略)命懸けで自分を導いてくれた。ありがとう、先生。もう一つは僕の家族。優しい母。先生は本当のおやじのようだ。厳しい兄さん。可愛い妹。尊敬する叔父さん。みんなが寄ってたかって僕を愛してくれた。(中略)僕は今までそれに甘えていた。今度は僕が、みんなを愛しぬきます。それ以外に、恩返しの道はない」挨拶が終わり、大沢家のほうに駆けだす敏夫。それを大沢家一同が温かく迎えた。武「礼を言うのは、私の方だ。とうとう本当のピアニストになったな」由美子「母さん幸せ」そう言って敏夫を抱きしめる夫婦だった。
敏夫の優勝を電話で聞いたあやは、学長にそれを伝える。学長は「勝ったか・・・将来が楽しみだ・・・」それだけ言うと、息を引き取った。
学長の葬儀が宮島家で執り行われた。ショパンの「葬送行進曲」を弾く武。武は指が動かなくてもピアノの指導を続けるつもりだった。敏夫は華江を呼び出し、自分と別れて、信一と幸せになれと言う。「自分はピアノと結婚した。いくら好きでも、どうしようもない」そう言うと、最後のキスをして、華江と別れた。
葬儀の会場で信一と祖父の遺影を見る華江。

ポーランドに旅立つ敏夫を大沢夫妻が見送りに来ていた。
ショパンコンクールへの最後の注意を与える武。「俺は今、先生と同じくらい、先生以上に粘り強いよ」と敏夫が答えると、「やっと本当の弟子になったな」と武は笑って答えた。敏夫は「いや、弟子じゃない。子供になったんだ」照れたように笑うと、真剣になり「父さん、元気でね。母さんも」それだけ言うと、背を向けた。初めて敏夫が父と呼んでくれたと、喜ぶ武。父が、階段を駆け上がる息子に「敏夫!」と声をかけると、息子はビクトリーのVサインで答えた。飛行機のタラップから手を振る敏夫。敏夫は旅立った。
あとに残された夫婦二人。辛い苦しいことを乗り越えて、本当の夫婦になった、これからも力を合わせて生きていこうと語り合う二人。
大沢武は、音楽を愛しぬき、一つの本物の家族を作り上げた。




(注1・学長が入院したことは信一に連絡して聞いたのだろうと、脳内補完すべし)
(注2・敏夫は控訴しているはずなので、執行はまだ先だが、だれも指摘しない)
(注3・控訴はいつのまにか取り下げたのだろうと、脳内補完すべし)
(注4・結局西条医師が見た人影とは、学長のことだった?Rの女とは、学長と同じく廊下で行き会ったと考えるべきか)
(注5・前回光子を襲ったのは正彦。首を絞める問い詰め方は異常だが)



感想

はい。
1か月にわたったドラマレビューでしたが、とうとう最終回を迎えました。
いやー、覚えていないもんです。
ほぼ、犯人しか覚えていないと言う状況に、愕然としつつ、でもかえって新鮮な気持ちで楽しめたので良かったです。
最終回、いかがでしたでしょうか。
今回こそ、突っ込みが追い付かない状態ですので、本当の本当に「おいおい」と言うところは、注釈をつけて、自分なりに脳内補完してみました。
私なりの解釈ですので、矛盾点などあるとは思いますが、あまり気にしたら負けのドラマなので、そこはスルーしてください。
また、自分の考えはこうだと言うのがありましたらコメントでお聞かせください。
しかし、お前の考えおかしいよ、みたいなコメントは困りますのでお控えください。
あと、私は基本的にこのドラマを肯定するスタンスを取っています。今まで散々ドラマを面白おかしく批評していますが、馬鹿にする気は毛頭ありませんので、そこんとこよろしく。

このドラマ、「家族」がテーマだったんだなぁって、気づきました。大沢一家は、ふつうなら乗り越えられないような試練を経験した。しかし、武と由美子はバラバラになりそうな家族を必死でつなぎ留め、はじまりとは比べ物にならない強固な絆で結ばれた家族を作り上げた。
家族のきずなはすべてを乗り越え、全員に希望をもたらした。
良かった。ドラマだから・・・と言ってしまえばそれまでなのだが、まさしくドラマチックに家族愛を見せてくれたなぁと思う。

このドラマの原動力はなんといっても宇津井健だ。この人でないと、大沢武は表現できなかっただろうと思う。それほどすべてを投げ出し、すべてに打ち込み、すべてを愛する人物を完全に演じきったと思う。そして、製作者も良くここまでぶれない人物像を作ったと思う。完全なる善。それを書いていけばいいから出来たのだろうか。確かに大沢武は複雑な人物ではない。この事件がなければ単純な人物として評価されただろう。しかし、田代清司、敏夫親子に関係することで苦悩し、怒り、愛する様を表現されて、視聴者は単純な人物でありながら、人間的深みを感じることが出来たのだと思う。きっと人間だれしも、大沢武のようになりたいと考える部分はあると思う。けれども、それは簡単ではない。社会や人間関係のしがらみが、そうなることを許さないのだ。正彦や、学長のようにどこかで妥協し、負け続けるのかもしれない。しかしそれは言い訳なのだろう。すべてを難しくしているのは自分自身だ。本当は気付いているのだ。大沢武のように、単純に、正しいと思ったことをやりたいと願う自分自身に。

敏夫については、ここ最近のレビューで書いてある通り、どうも感想を述べるのが辛い状態だ。散々イライラさせられたし、最後の方などは本当にチンピラのようで、困った。誰に対しても、犯人だと決めつけると、「俺が父さんの敵を殺してやる」などと言って、狼藉を働こうとする。そんな様を見せつけられて、「きれいな心を持つものが最高の演奏をする」と武に言われても、どうも敏夫の演奏と結びつかなかったのだ。しかし、それもまた人間の現実なのだと思う。理不尽に死刑を宣告され、それこそなりふり構っていられない人間の本質を、製作者はあえて描いたのだろうか。敏夫を武のような聖人君子に仕立て上げることもできただろう。死を超越して芸術を追及する青年にすることもできただろう。しかしそれでは生きた人間と芸術は表現できなかったのだろう。芸術家と言っても、人間だ。罪を犯すこともあれば、弱いところもある。視聴者と同じ人間なのだ。そこを描くことを製作者はあえて避けなかったのだろうと思う。
敏夫はなぜ華江と別れたのだろうか。あそこまで自分を投げ出した女性を、そう簡単に捨てられるだろうか。信一に遠慮したのか?それとも、父を殺した人間の孫娘とは結ばれえなかったのだろうか。
そんなこんなを経て、最後の敏夫の演説が効いた。師と家族に対する感謝。本当に感動した。

信一ウォッチャーの私としては、やはり信一のこれからが心配なところだ。言ってしまえば、信一も単純な人物だったが、事件を通して成長した。法律を通してしか人を評価できなかったのに、最後は「敏夫!あきらめるな!きっと真相をはっきりさせて、お前を助ける」これが信一の口から出たのだから素晴らしい。成長したな・・・。それにしても、学長の葬儀で、信一だけ喪服でないのはどういうわけだ。仕事帰りってこと?華江は素直に信一と結婚するのだろうか。それが成ったら、今度は華江を幸せにできるのではないかと思う。宮島家の婿養子になるかどうかで、ちょっともめるとは思うが。

あ、Rの女の写真を盗んだ人物は、結局あやだったということなんだろうね。敏夫の首を絞めようとした人は誰だか分からずじまいだったけど。あと田代清司を名乗る人物は学長だったのか・・・。私は別の回のレビューで違う人物を予想していたが、言われてみれば、日本にいる人物でないと無理なのだったね。あ、真山と武が公園で語り合っていたのを盗み見してたのは結局誰だったのだろう。それと、西条医師が持っていたマッチの意味は?
・・・特に意味はなかったのだろうな・・・(笑)。それにしても、東北の刑務所(現在の仙台拘置所のことか?)に行くのに、上野発仙台行普通列車とは・・・。時代を感じた。

突っ込みはともかく・・・。
このドラマは清司の死をターニングポイントとして、内容が大幅に変わったように見える。前半は完全に師弟と親子の人間ドラマ。後半は、ミステリーとしての犯人探しと警察との攻防。しかし、根底にあるものは変わらない。それは家族愛だった。
長いドラマだったが、非常に楽しめた。毎回真剣に笑い(え)、泣いた。
こんなドラマ、現在ではとっても無理だが、この楽しい体験が、いつかまたどこかでできたらいいなと思う。

もう二度とあらすじ付きのレビューは書かないと心に誓った私ですが、DVD化されていないと言うことで、あえて書かせていただきました。
最後になりましたが、長いレビューにお付き合いいただき、コメントをくださった方、本当にありがとうございます。
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