SWEET SWEET SWEET

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「荒神」(宮部みゆき著)の感想。

朝日新聞連載の小説「荒神」が昨日で最終回でした。

通常最終話には「了」ってつくのに、このお話にはつかなかったので、「あれ?終わったの?」って戸惑ってしまいました(汗)。

あらすじを書いてみますが、ほんのさわりだけ。…登場人物がとにかく多いので、めちゃくちゃ端折っています。

江戸時代香山藩の本庄村で起こった事件が話の発端。村の人々が何者かに襲われたような形で全員姿を消してしまった。おりしも香山藩では側室が生んだ子供が命の危険を伴う病で臥せっていた。同じ時期に同じ病を得た小姓の小日向直弥は、迷信深い側室に子供の病は直弥のせいと濡れ衣を着せられそうになり、出奔する。
側室の子供の病と村の人々が消えた事件と何か関係があるかもと、調べることにする直弥。直弥の許嫁の父である藩の上役からは、下男のやじを伴うことを命じられる。
一方、香山藩と隣接する永津野藩の名賀村では、浪人・榊田宗栄によって、一人の弱った子供が保護されていた。子供の着衣から、永津野藩と長い間敵対している香山藩の人間であることが分かるが、永津野藩藩主の側近で御筆頭様と呼ばれる曽谷弾正の双子の妹・朱音は、自身が住まう名賀村の溜家(たまりや)に、子供の身元を隠してかくまうことにする。子供の名は蓑吉。本庄村から逃げ出した唯一の生き残りであり、何が起こったかを証言できる人間だった。
朱音は蓑吉の存在を村人にも隠し、自分の身の回りの世話をする人間と宗栄だけの秘密とする。香山藩の人間をかくまっていることが永津野藩のものに知れると、村人が苛烈な罰を与えられることは目に見えており、蓑吉の生命も危ういからだ。
蓑吉が証言する事件の内容は、朱音たちにはにわかには信じられないことだった。
何か恐ろしい怪物が現れ、蓑吉はそれに喰われそうになったのだという。
ひとまず蓑吉も普通の生活が送れるまでに回復し、名賀村の中だけは穏やかな日々が訪れようとしていたのだが…。

とりあえず、導入部はこんなところでしょうか。
登場人物の名前を覚えるのが大変です(笑)。
でもちゃんと一人ひとりキャラクターがはっきりしているので、関係性がこんがらがることはないですね。


ネタバレなので、未読の方はこれ以上読まないほうがいいかもです。



人を襲う化け物。一体なぜ襲うのか、なぜ生まれたのか、倒す方法は?
一つ一つがゆっくりと解き明かされていきます。
化け物が相手ということで、物語の中の人物も、最初は信じられず、本気にしないのですが、化け物が少しずつ近づき、正体を現すにつれ本気で恐怖し、立ち向かっていきます。読者としても、一つ一つをじっくり説明され、執拗に繰り返される殺戮描写に次第に本気になって化け物のことを考えるようになっていくと思いますよ。

それにしても、
朱音様〜。
悲しい…。
名賀村での穏やかな生活をずっと続けられたらどんなに良かったか…。
朱音様は、どこまでも正しく、つつましく、清らかに、自分に許されるわずかな幸せを願っていただけなのに…。

弾正との関係は、初期のころの兄妹のやり取りで何となく予感がしていました。
この双子、ただの兄妹とはちょっと違うな…って気はしていたので、最後の方に出てきたあの件には、「やっぱり…(涙)」と、哀しみました。
そして宗栄様と朱音様の最後の会話には思わず落涙。
もっと早く家を出て朱音殿に会っていれば…。という宗栄様に感謝の涙を流す朱音様。
本当だよ!宗栄様、なんでもっと早く朱音様を迎えに来てくれなかったの?
さらに空気読めない蓑吉。二人に時間をもうちょっとあげて!(笑)
運命の非情さがつらいお話です。

不満を言うとすれば、最後、事件が終わった後の後日談がかなり駆け足になってしまったこと。
最終的に蓑吉とおせんの視点で物語は終わるのですが、大人たちからの説明をどう消化したかっていうことが語られています。
けれどもそれが何となくもやもや。
初めの方が細かすぎるほど細かい描写だったので、あっさりしすぎる気がするんですよね〜。紙面が足りなくなっちゃったかな?なんて思ってしまいます(笑)。

直弥もなぁ〜。あれからどうなっちゃったんでしょう。許嫁のこととか、母上様とか。
それにしても、宗栄様のその後が気になりすぎる!おせんにもう一度会える時は来るのでしょうか。
絵師の園秀さん、呪文を写し取ったことで気がふれてしまったようですが、呪文を写し取るときの鬼気迫る場面が何となく目に浮かぶようで、絵師として最高の仕事ができたのかなぁ、得心いったのかなぁって、想像しています。
そして、やじが女性だった問題。正直言って、いらない設定かも(笑)。
加介さんって、いつお亡くなりになったんでしたか、ちょっと覚えていない…ごめんなさい。

エピローグでちょっと気が抜けた感じがしましたが(とはいえ、おせんが朱音様の風を感じるところは感動しましたよ)、連載小説として、毎日楽しめました。
挿絵がかわいすぎるってところが緊迫した場面では気になりましたが、朱音様たちが暮らす溜家のほのぼのとした風景には合っていたなぁって思います。

単行本になったらもう一度通して読んでみたい物語です。
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