SWEET SWEET SWEET

手作りのお菓子やパン、料理など美味しいもの、
そして大好きな本など紹介します♪

赤い激流・第九回 レビュー

赤い激流弟八回はコチラ

「愛する父を殺したい!」

あらすじ

宮島音楽大学では、夏季の音楽合宿が行われ、大沢家の次女・妙子は、義理の兄である敏夫と一緒に行くと張り切っていた。
華江も参加すると聞き、気が進まない敏夫だったが、華江に「この旅行を最後の思い出に、貴方をあきらめることにするから」と説得され、ようやく行く気になり、妹の妙子と思いっきり遊ぶことを約束する。
合宿で楽しく過ごす妙子と敏夫。だが、敏夫と華江は二人きりになったとき、宮島家の孫娘、田代清司の息子である自分たちの運命にはあらがえないことを改めて思い知る。永遠に別れる前にと、お互い本当の想いを告白し合い、抱きしめあってしまう。
それを目撃した妙子は、敏夫への失恋を苦に、自殺を試みる。
かろうじて一命を取り留めた妙子だが、自殺の理由は、大沢家、敏夫にも知られることとなる。妙子の兄・信一は激怒し、武に敏夫のレッスンを辞めないなら、自分が家を出ていくと宣言する。
妙子は、叔父・実に説得され、自分の幼い衝動を反省し、初恋をあきらめ、家族や敏夫に謝るのだった。
敏夫は、信一が家を出る道理はないと、武に対して、大沢家には今後来ないことを告げ、今までの武からのレッスンをすべて自分のものとし、たった一人でコンクールに挑むことを約束する。
武は、敏夫が離れていく悲しみに、弟子はいつか師の手を離れ、師を乗り越える存在となると自身に言い聞かせ、自分を納得させるのだった。

田代清司は、宮島家の娘婿・東山正彦に連れられて行った店のホステスの話から、東山が音楽大学の裏口入学の斡旋をし、クラブのマダムと愛人関係にあることを知る。清司はそれをネタに、東山をゆすり、大学のピアノ科助教授の座を要求するのだった。
清司は敏夫を食事に誘い、自分の計画、宮島音楽大学を乗っ取り、学長や大沢武を追い出す夢を語る。それを聞いている敏夫は、父への殺意がどうしようもなく高まっていくのを、抑えることができなかった。


感想。
はい。妙子ちゃんです。
このドラマの中で、唯一存在感のない人・それが妙子ちゃんだったが、ついに、彼女が主役になる日が来た。
なんと、彼女は敏夫を兄としてではなく、一人の男として懸想していた…と。
なんというか、まぁ、あれだけ堅物の父と兄に囲まれて生きてくれば、ぶっ飛んだ敏夫に惹かれるのも無理はないかというのが人情で。
しかし、この人、足のラインがきれいだ(笑)。最初のほうでもあったが、惜しげもなくきれいな足を披露してくれる。
もうちょっとセリフが多くてもいいかと思うが、演技力の問題だろうか、あまり長いセリフはない。まぁ、でもちょっと悪ぶったお兄さんにあこがれる純粋なお嬢様の役で、しかも妹なので、あまり彼女のドラマが深まっても別の話になってしまうので仕方ないが。
それにしても、石立鉄男の実叔父さんは、いつもいい役をさらっていく。告白もしていない初恋の失恋で自殺まで行ってしまう甘ちゃんの姪を叱り飛ばし、でも最後はちゃんと道理を教える。かっこよすぎる。
ちなみに、合宿中に流れる挿入歌は、水谷豊が歌う「草の夢」。

しかし、信一…。お前は相当ファザコンだ!それは間違いない。
今回も、父・武に、自分を取るか、敏夫を取るかと言って迫る。
本当に、あんたいくつだよ。
しかし、その前に、敏夫と華江が抱擁していたことを知ってしまうのだから、彼もつらいところだ。

そして、武。今回もいろんな人への説得に奔走している。
敏夫がついに、自分の手から巣立とうとしている。信一が敏夫を追い出したのだが、敏夫は、「先生の教えはすべて覚えている!絶対に忘れません」と宣言し、家を出ていく。敏夫を失ってさびしいやら、でも敏夫の心意気がうれしいやらで、ちょっと脱力状態である。

最後に清司。今回はいつもの乱闘がないので、割合静かな回だった。
でも、乱闘がない代わりに頭脳を使いだしたから、またたちが悪い。
東山の本性見たり、といったところだが、この話が後から効いてくるのだろう。
正彦は、清司を手駒にするはずが、ミイラ取りがミイラになったでこざるの巻。しっかりしろ。
しかしこのドラマ、内緒にしようと相談するそばから次々ばれる。
クラブのママさんが、ホステスに向かって裏口入学の事を清司には絶対もらすなというのを、あっさり当の清司本人がそばで聞いているのだ。
いくらなんでも、話が早すぎである。
壁に耳あり、障子に清司あり、だ。みんなも気を付けよう。

それにしても、清司は大学を乗っ取るために助教授になるとか言っているが、助教授になったとして、彼には既にその実力はない。
いったい何を教えるというのだろう?

第十回はコチラ
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赤い激流・第八回 レビュー

本日なぜか一時期第六回が消えていました。再アップしました。
第七回レビューはコチラ


「パリからの哀しい便り」

あらすじ

敏夫のコンクール出場を知った田代清司は、大沢家に乗り込み、由美子と敏夫をあきらめる代わりに、宮島音楽大学で教師として就職させることを大沢武に要求する。仕事があれば少しは落ち着き、人間らしく生活できるかもしれないと、武は就職の斡旋を約束する。武の息子信一は、叔父の東山正彦に田代を大学に入れないように頼むが、なぜか正彦は、武の説得に応じ、清司を大学付属の子供向けピアノ教室の講師にすることを提案。学長もしぶしぶ許可した。
周囲の不安をよそに、清司はピアノ教室を無難にこなし、生徒の評判もかなりいい。プライドの高い清司が子供向けの教師に満足するかすら心配していた武は、胸をなでおろした。
信一は、正彦に真意を問うが、はぐらかされる。正彦の本音は、清司に恩を売って、音楽大学の学長になるための駒にするつもりだったのだ。
そんな時、武の長女・紀子(山口百恵)から手紙が届く。パリの国立音楽大学にバイオリンで留学していた紀子は、バイオリンの教師・木元光子(岸恵子)の恋人のことを記していた。教師として一流の光子は、急に失踪した恋人を探していた。その相手とは、田代清司だった。
清司は自分のマンションに敏夫を呼び、華江と結婚することを命じる。華江と結婚すれば、宮島音楽大学を乗っ取り、学長や武を追い落とすことが出来るという清司に対し、敏夫には殺意が芽生えるのだった。
華江の好意を感じた敏夫は、連れ込み宿に華江を連れ出し、自分を卑下して嫌われようとするが、華江は信じない。連れ込宿に二人が入っていくのを目撃した従弟の明彦は、宮島家に連絡。武や実、正彦で二人を連れ戻す。敏夫は開き直るが、実から連れ込み宿に行くような男ではないと弁護される。更に、宮島学長本人が著書で恋をしない者は音楽家として大成しないと記していた事を引き合いに出して、怒る学長をやりこめる。退学などは免れたが、華江と敏夫は、宮島学長より、改めて交際を禁じられる。
武は敏夫に問う。「華江さんが好きか?」「好きだ!でも結婚は絶対できない!」そう叫ぶ敏夫に、武は結婚は身分ではないと諭そうとする。しかし敏夫は別のことを考えているのだ。確かに、華江の事は好きだ。けれども、彼女との結婚は、宮島音楽大学学長の座を意味しており、そうなれば、清司の思うつぼなのだ。「結婚できなくても、先生と母さんの幸せは、必ず守る」
そう告げて、敏夫は去った。武には、その言葉の意味が、まだ理解できなかった。
敏夫はついに清司を殺す夢を見てしまう。敏夫の精神は、追い詰められていた。

感想

山口百恵きた!
声と写真のみの出演だったが、紛れもなく山口百恵だった。これの出演のためにわざわざパリに行ったのだろうか。どうだろうか。
紀子こと、山口百恵のパリでの先生は岸恵子だ。
岸恵子がものすごくスリムだ。今の女優に負けないくらい痩せている。でもすごく素敵だ。ちなみに、岸恵子の恋人が田代清司であることは、視聴者だけに明かされる秘密である。

いやはや、今回の大沢先生の性善説には、いくらなんでも首をかしげた。
大沢先生、敏夫や由美子、信一にいくら反対されても、田代に就職を斡旋しようとする。人間、仕事があって生活も安定すれば、明るく、まっとうになる、と信じている。また、由美子や敏夫が自分を慕っていることに対して、どうしても負い目を感じてしまうらしい。就職の斡旋くらい当然の義務だと思ってしまっている。この人、よく今まで無事で生きてこられたもんだ。
下手すると、いろんな霊感商法とかに付け込まれて大変なことになっていただろう。

今回も頼りになるのは実叔父さんである。敏夫が華江を連れ込み宿に連れて行った事に疑問を感じ、敏夫が連れ込み宿を使うほど世慣れていないことを、すぐさま宿の仲居に聞いて分かってしまった。実直な武ならとっさにここまで頭が回らない。
そして、連れ込み宿での敏夫の挙動不審さ加減が笑いを誘う。華江は自分がどういう所にいるのか分かっていない風だったが、それにしても敏夫の落ち着かなさとの対比が良かった。

さて、今回の前半注目は、信一の大活躍。
宮島家と華江のために奔走するのだが・・・。
検事って、そんなに暇なんか。
仕事中っぽいのだが、音楽大学に来て、敏夫と喧嘩してみたり、明彦に華江と敏夫のデートの後をつけるように言ってみたり・・・。
そして、極めつけは、
「父さんは、僕より敏夫のほうがかわいいんだ!ピアノの腕を継げる敏夫のほうが可愛いんだ!」と、大学の中庭で大絶叫+半泣き(笑)。
あんた、いくつだよ。
思うに、信一は、反抗期というものがなかったのではないだろうか。勉強ができ、エリートコースまっしぐらの彼は、ろくな挫折もなかったに違いない。しかし敏夫の登場で、自分のアイデンティティが、今頃になって揺らいできたのだろう。
なぜ華江は、自分の軽蔑する敏夫と付き合うのか、父はなぜ、敏夫にばかり構うのか・・・。
すべてを持てる者は、それが少しでも欠けたと感じると、途端に喪失感に襲われる。逆に、持たざる者は、少しでも手に入るだけで満足できるものだ。
信一の場合、明らかに前者だろう。武の愛情は、少しも減じていない。ただ、信一に裂く時間が減っただけなのだ。
しかし、信一は自信の揺らぎを感じるあまり、奇妙な言動をする。
従弟で華江に同じくプロポーズした明彦に、「君に華江さんを取られるなら我慢できるが、敏夫に取られるのだけは我慢できない!」と言い放つのだ。明彦は、信一と比べれば明らかに格下だろう。敏夫にだって、勝っているものといえば、家柄だけと言える。それなのに、明彦になら華江を譲るとは?敏夫を嫌うあまり、冷静な判断ができなくなっているとしか思えない。

こんな検事さん、あなたなら、いかがですか?

第九回はコチラ
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赤い激流・第七回 レビュー

第六回のレビューはコチラ

「誰が反対しても結婚します」

由美子は敏夫の住まいに泊まり込んで、清司の看病をすることになった。敏夫は清司に隠れて、大学へ行き、武からピアノを習う。大沢家では、由美子がいないため、武も率先して家事を手伝っていた。弟の実は、「早く由美子と敏夫を取り戻せ」と言うが、武は清司が心も体も弱って、自殺しかねないため、世話をさせていると説明する。実はそんな甘い考えを叱るが、武は譲らない。力ずくで清司を黙らせると実は息巻くため、武も清司のもとへ行くことになる。息子の信一は、由美子と敏夫がいない方が大沢家が平和なため、そんな二人の行動が理解できないが、実は、華江が好きなら由美子を愛する父の行動を理解しろと信一を諭す。元気を取り戻した清司は、ピアノ教室を開いて仕事をすると宣言していた。そこへ武と実が現れ、由美子を返すよう要求する。実は、この間清司に傷つけられたせいで、武の腕が悪化したことを清司に話す。清司ばかりが責められている現状に、さすがに敏夫は、みんなに「これ以上父さんに恥をかかせるな」と言って、由美子を含めて追い返す。追いかけようとする清司を敏夫は抑えるが、清司は抵抗できない。やはり清司の体力は弱っていた。敏夫に説得され、ようやく追いかける事をやめる。
由美子が大沢家に戻った。武は今までのことを詫び、もう離さないと宣言する。妙子も戻った由美子に抱きついて喜んだ。
清司は家庭裁判所に赴き、武と由美子の結婚は無効であると申し立てる。相談員(藤田弓子)は、日本国籍が戻ったのだから、清司との結婚が優先されるはずと清司に話した。あとは調停で、判断してもらうだけだ。大沢家に裁判所から出頭命令が来た。由美子は憤るが、武は、「自分たちの言い分をキチンと話せばわかってもらえる、誠意をもって話せば、田代君に負けるはずはない」といつものように慰めた。

調停が始まった。裁判官に事情を説明する3人。法的にはやはり清司と由美子の結婚が優先されるが、由美子は、田代の妻に戻るつもりは全くないこと、田代が10年前にした仕打ち、10年間音沙汰がなかったこと、いまは武と本当に幸せであることを訴えた。
武もまた、清司が死んだと信じ込んで結婚し、どんなことがあっても由美子を幸せにしたいと訴える。
裁判官(久米明)は、由美子に、ひとまず清司との結婚状態に戻すが、すぐに離婚して武と再婚することを薦める。清司は怒るが、たとえ裁判を起こしても、10年妻子を放っておいた清司は負ける公算が高いことを指摘される。これが一番妥当な判断であると説明され、清司も黙るしかなかった。調停の場から出てきた清司は、敏夫に10年前マルセイユの海に飛び込んだ時の様子を見せると言って、噴水に飛び込む。半狂乱になる清司を、敏夫と武は必死で抑え込んだ。
コンクールのために、敏夫は一日2時間しか武と練習する時間がない。武はそれでは足りないと言うが、清司がいる敏夫には、それ以上は無理だった。
そんな時、信一が武に相談する。華江の誕生パーティーで、華江に求婚するつもりであることを。そのために学長達に話を通しておいて欲しいと、頼んできたのだ。
武は、敏夫も華江を好きなことを知っており、悩む。
しかし、由美子は信一との結婚を薦める。敏夫は田代の血を引く男。感情が激しすぎて、結婚する女は、幸せになれないと考えていた。信一なら、落ち着いて、静かな家庭を築けると言う。武は敏夫に信一にないあったかさ、優しさがあると言うが、由美子は、敏夫では宮島家の跡取りである華江と結婚できるはずはないと言う。
武は宮島家に、信一のプロポーズを申し入れた。
あやは、法律家の信一なら大学の経営に向いていると言って賛成するが、叔父の正彦たちは、音楽家を夫にして学長にすべきと反対する。そして息子の明彦にも結婚の申し込みをさせると意気込む。
明彦は気の弱さから、困り果てるが、華江が自分を馬鹿にしていないことを知ると、結婚の申し込みをすることを決意する。
華江は、信一からも申し込まれると知って、敏夫にパーティーに来てくれるよう頼み、さらにその場で、結婚を申し込んでくれるよう頼むのだった。華江の想う相手は、敏夫だった。そんなこと出来るわけがないと笑う敏夫に、「女の私にこんなこと言わせるの?才能があるのに、自分の将来を決めないで」と詰め寄った。
華江のパーティーが始まった。行かないと言っていた敏夫はパーティーに潜り込む。その場で「エリーゼのために」をプレゼントし、自分も結婚を申し込んだ。敏夫の曲は、華江を感動させる。しかし、宮島学長から華江との結婚は絶対認めないと言われてしまう。非常識で、田代清司の息子である敏夫を受け入れられないと言う。あやも、宮島家を継ぐ男は、やはり敏夫ではだめだと告げる。
敏夫は傷つきながら、その場を立ち去る。
武と由美子はそのあとを追った。
恥をかいたと言う敏夫を、武は叱る。「華江が好きなら、どんなことがあっても結婚しろ、コンクールに優勝して一流ピアニストになれば、華江も無理ではない」と説得する。
そんな才能がないと笑う敏夫に、武は先ほどの曲に感動したと言う。2時間だけではなく、一日中練習しているはずと指摘する。それでもあきらめる敏夫を、武は「どうしてあきらめるのだ。私の弟子なら師の粘り強さを見習え。君なら必ずコンクールに優勝する。自分の持っているすべてを渡すから、あきらめるな」と説得。ついに由美子も、武を見習って頑張れと恋の応援をする。
敏夫は、決心する。武のすべてを自分のものにし、コンクールで優勝を目指すと。
そんな時、清司が敏夫の毎朝音楽コンクールの出場資格票を見つけ、怒りを爆発させるのだった。


感想

ようやく由美子の二重結婚に決着がついた。法律は時に残酷だが、それを行使するのは人間だ。すべての人が納得できるような結論がいつでも出せればこんないいことはない。しかしそれは夢物語なのだろう。
全てを事務的に裁く相談員を藤田弓子が演じていた。非常に若くかわいらしい。久米明の裁判官も一見事務的だが、大沢夫妻が納得できる答えを提供してくれた。大沢家の誠意に応えてくれたのだろう。
法律の冷酷さと、全てが四角四面にはいかない人生の一こまを簡単にうまく切り取ったエピソードだと思う。

さて、今回の重要ポイントは、華江の結婚問題だ。
華江の両親は既に他界しているようだが、華江が宮島家の直系である見なされている事から、どうやら華江の父が宮島学長の息子だったらしい。娘は健在であるにも関わらず、孫娘に宮島家を継がせる事しか考えていないというのも不思議な話だが、上流の血筋とはそのようなものなのだろうか。おそらく、菊子や武の前妻が結婚する頃は華江の父は生きており、正彦や武が婿養子に入る必要がなく、二人が他家に嫁いでしまったため、直系が華江しかいなくなったという事だろう。
とにかく、第一回目を見逃したためここらの事情は、はっきりした事が分からない。返す返すも悔やまれる。
今回は信一に少々笑わされた。
彼は華江にプロポーズするといいながら、華江本人には直接話した形跡が全くない。
彼が気にするのは、外堀を埋めていく事だけのように感じられる。
まず父から宮島学長に話を通してもらうというのも庶民の私から見ればなんだか奇妙だ。自分で行け。
とはいえ、昔の結婚の形とはこのようなものだったのだろう。
現代とは比べ物にならないほど、本人同士というより、家と家の結びつきという見方が大きかったのだろう。逆に言えば、家長が認めれば、本人の意思など関係ないのだ。だからこそ、信一は本人に確認せずに学長に話を通す事を優先させたという事だ。
いいとか悪いではなく、昔はある程度これが一つの文化として浸透していたのだと思う。それを忘れたり、非人間的などと言うのはたやすい。しかし長い歴史の中で、そのような結婚形態があった事は事実なのだ。
何が言いたいかというと、最近のドラマは、そこら辺を無理矢理現代の日本人が納得できるように作り過ぎではないかということだ。
戦時中や戦国時代、江戸時代でもお互い相思相愛になった者同士を結婚させようとする。それはそれで幸せなのだろうが、そうではない者もあった事を想像すると、薄ら寒い感情しか湧いてこない。感動できないのだ。
もちろんお互い気に入ったもの同士が結ばれる事ほど幸運な事はないし、見ている方も幸せになれる。しかしそれが必ずしも普通ではなかった時代に、それが普通であるような描き方をされると、もうね・・・。
まったく知らない者同士の見合い結婚でも、幸せな家庭を築いた人々もたくさんいるだろう。もちろん恋愛によって結婚した人も沢山いたのだろうが。
戦国時代の話など、もっと殺伐としていてもいいと思う。政略結婚を無理に愛情物語にしなくてもいいのではないのだろうか。何年か後には自然に夫婦になってました、みたいな物語をつくれないだろうか。

話がそれてしまった。申し訳ない。
とにかく、華江の結婚は、本人の意思とは関係のないところで進んでいくようだ。
ノブレス・オブリージュということだろうか。
しかし華江も負けていない。なんと、敏夫に向かって、「自分にプロポーズしろ」ときた。
相当鼻っ柱の強いお嬢様だ。
しかし今まで大沢家の味方だったおばあさまのあやは、自ら敏夫との結婚に反対してしまった。まぁ、それが格式ある家を守ってきた女の矜持であろう。

ここで負けない武はさすがだが、ちょっと待って欲しい。信一を忘れているのではないだろうか。はじめにプロポーズを言い出したのは信一なのに、武は敏夫しか応援していない。敏夫が結婚をあきらめる事で心がいじけ、ピアノのレッスンに支障が出ると危惧したのだろうか。結婚話を、やはりコンクールに結び付けて敏夫のやる気を引き出してしまった。表向き「好きな者同士が結ばれるのが当然で・・・」などと言っているが、敏夫が一流ピアニストになるまで、華江が一人で待っているとは限らないのだ。
そこをはっきりさせないで、話を進めるのは、やはりちょっとずれていると思える。
今回の武は、見方を変えれば、なかなかしたたかだった。

いつもは乱闘シーンをお笑いポイントに据えているが、今回の清司・敏夫・武の噴水で自殺再現シーンは、まったく笑えなかった。悲劇的過ぎて、清司の痛みがひりひりするほど伝わってきたからだ。

ちなみに、敏夫のエリーゼのためにだが、なんだか手がいつもと違って丸い気がする。別の人が弾いているのか、水谷豊本人がひいているのだろうか。

第八回レビューはコチラ
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赤い激流・第六回 レビュー

第五回のレビューはコチラ

「生きかえった夫の復讐」

あらすじ

敏夫は武のもとから去り、ジャズバンドでバイトをしていた。信一と華江はデートの最中にそれに出くわし、華江は敏夫を探していた武とともに、敏夫に大学に戻るよう説得する。そこへ清司が現れ、華江は清司に、父親のくせに、敏夫をだめにしているだけだ。清司にはもはやピアノを教える技術もないと言って責める。散々言われた清司は、敏夫を大沢に返す代わりに、由美子を差し出せと言う。敏夫はその場をごまかすために、華江をステージに上がらせ、電線音頭を躍らせる。信一は、怒って宮島家に告げ口する。宮島学長は華江と敏夫の振る舞いを厳しく叱り、大学に出てこない敏夫を退学させると言う。武は敏夫に代わって謝るが受け入れられない。武は敏夫が辞めるなら、自分も辞職すると言う。これほどの才能ある生徒を教えられないのなら、大学にいても仕方ないというのだ。それを聞いた学長の妻・あやは、優秀で人望のある助教授の武を辞めさせることなど許されないと言い、電線音頭を踊った敏夫を退学にさせるなら、同じく華江も退学にさせるべきと言って、二人を許すように学長に迫り、事なきを得る。
学校を辞めずに済んだが、武はなぜクラッシックピアノを辞めるのか敏夫に尋ねる。その理由は言えないと逃げる敏夫だが、公園中を追い掛け回され、あまりのしつこさに根負けする。父の恥ではあるが、大沢家でピアノを習うと、清司が大沢家をつぶすと言っていることを話す。武は、笑って、誠意をもって話し合えば、必ず道は開けると、田代清司と話し合うことにする。
二人が清司のもとに行くと、清司は睡眠薬で自殺未遂をしたところだった。幸い、命は取り留めたが、危険な状態だ。清司の絶望を知った武は、由美子に、妻としてではなく、看護婦として、清司の世話をしてくれないかと話す。由美子は拒否するが、清司の不幸に武が心を痛めているのを知ると、清司を世話することを決心する。
由美子の姿を見た途端、由美子にすがりつく清司。しかし、敏夫に止められ,さらに自分のことしか考えていない父に愛想が尽きたと言われ、逆上する。ついてきていた武にバットで殴りかかり、武は痛めていた腕をさらに傷つけてしまう。
友人の西条医師のもとに行った武は、腕の手術を勧められる。成功率は50%。手術をしなければ、ますますピアノは弾けなくなる。ならばと、手術を受ける武。
ショパンの「子犬のワルツ」を弾く華江のもとに敏夫は泣きながらすがりつく。自分のせいで動かなくなる武の腕。その罪に耐えかねて、華江に救いを求めたのだ。子供みたいに泣くしか今は方法がない。それを受け止めてほしかったのだ。敏夫はひとしきり泣くと、ピアノに向かい、練習を始めた。
手術を前に、弟の実や信一は、手術が失敗しても、生活の心配をするなと励ます。
手術の間、敏夫はピアノを弾き続けた。手術は終わった。やはり難しいものだったのだ。
手術は失敗。あと2,3か月で腕は動かなくなると西条医師は弟の実に告げる。
敏夫はそれを聞き、田代清司と自分のせいだと言って、武の前で土下座をする。敏夫の取り乱しように白を切れず、実は武に真実を告げた。
武はそれを聞いて、一瞬茫然とするが、すぐに、いずれ動かなくなる腕の寿命が、2,3か月に短くなっただけだと言って笑うのだった。あと二か月もあれば、敏夫の英雄ポロネーズを完成できると言って、希望を持つ。
父と自分のせいだと言って自分を責めるばかりの敏夫に、
「芸術に敵も味方もないよ。あるのは愛だ。愛情だけだ。
俺の後についてきてくれ。」

武はそう笑いながら言って励ますのだった。
敏夫はどうしてもやりきれなかった。いつも人を信じ、人を愛してきた武の腕は、父と自分によて奪われたのだ。
初めて、敏夫の胸に父に対する憎しみが生まれた。

しかし、ピアニストにとって命の腕が後わずかな時間しか動かないという事実に、武は不幸のどん底に突き落とされるのだった。



感想

はい、名言きた!
「芸術に敵も味方もない。あるのは愛だ。愛情だけだ」
うおー!
このセリフをこんなに力強く、笑顔で真剣に言えるのは、宇津井建しかいない!
私はそう確信する!
はい。
今日はこのセリフで全てが吹っ飛んでいった感じです。

しかし、そういってごまかさずに、お笑いポイントを抑えておこう。
まず冒頭の電線音頭についてだが、私は詳しくないのでコメントのしようがない。当時流行っていたんだろう。ただ、敏夫によると、あれを踊ると、何かパッションが生まれるらしい。そういうことにしておこう。ただ、あれが伊東四郎の過去に深く関係する何かだということは、抑えておいたほうがいいかもしれない。
それにしても、やはり赤木春江のあやはいい。どっしりと構えて、いつのまにか論点を摩り替えて敏夫の退学を白紙にしてしまった。学長は電線音頭よりも、学校に出席しない事の方をより怒っていたはずだったが、いつのまにか電線音頭によって退学させられるのは納得いかないという話の流れにしてしまったのだ。

それを遥かに凌駕するもう一つのポイントは、もちろん、武と敏夫の「公園でキャッキャウフフのおいかけっこ」だ。
いつものように武が、ピアノをあきらめる理由を問い詰めるために逃げる敏夫を追いかける場面なのであるが、場面が公園で、しかも水谷豊が滑り台やらジャングルジムなどの遊具を駆使して逃げ回るため、どう考えても雨の降る中、二人が戯れているようにしか見えない。
まぁ、それが証拠に、追いつめられた敏夫と追いつめた武は、二人顔を見合わせて笑いあうのだ。
そして、敏夫によるピアノへの言い訳が始まるのだが、ここで敏夫と武の間の、田代清司に対する認識の違いが明らかになる。
敏夫はひたすら父を恐れ、大沢夫妻への影響を心配するが、武は清司を、というか、人間を信じているため、非常に軽い返しをする。
「人間、話せば分かる」と。
視聴者は先ほどから感じていた武のどうしようもないお人よし加減に、いい加減呆れかけているのだが、この底抜けの楽天性に、降参せざるを得なくなる。
そして、彼ならば、何とかしてくれるのではないか、と希望を持つのだ。
少なくとも、私はそうだった。
しかしその希望を脆くも打ち砕く清司の狂乱。いやはや、自殺未遂後は、まさに幽鬼のごとき面相である。ルンペンと呼ぶのがふさわしい。そうかと思うと、コートはバーバリーだったりする。どうなっているのか。

そして、前述の「芸術には敵も味方も〜」のセリフ。
これは何度も言うが、宇津井健、いや大沢武でないと言えないセリフだ。彼のこれまでのおおらかさ、やさしさ、前向きさ、音楽に対する情熱の表現は、まさにこのセリフを言うためだったのだ。それがないと、このセリフには説得力が生まれないだろう。
この男なら、言いそうなことだ・・・と、テレビの前で、視聴者は苦笑を浮かべながら、彼を支持するのだ。

けれども、さすがの武もピアノを弾けなくなる事には落ち込んだらしい。
一体どうなるのか。悪い方へ悪い方へ話しは流れている。この、底抜けに明るい誠意と善意あふれる中年男の運命はどうなるのか。
いやがうえにも盛り上がったところで、次回に続く。

第七回はコチラ
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赤い激流・第五回 レビュー

なんだかすごく読みにくくなっていますね(笑)。
赤い激流・第二回目レビューを再アップしました。
なぜか改行が反映されないのです。非常に読みづらいですが、すみません。
治せれば治したいです・・・。

第四回レビューはコチラ


「きかせてよ愛の曲を」

あらすじ

武の手の痛みはひどくなるばかりだ。
敏夫のコンクールまで、一秒も無駄にできないと、大沢家で連日レッスンを行う。英雄ポロネーズに込めたショパンの心を敏夫に説く武。
武を苦しめるため大沢家に居座る田代清司は、毎日その音色を聞かされている。課題曲である英雄ポロネーズは、武に敗れた過去の自分を思いださせ、逆に清司は追い詰められていくのだった。そんな時、武の誕生祝のため、親戚一同が大沢家を訪れる。必死で清司を隠す敏夫だが、清司は、訪れた人間が宮島学長であることを思い出す。清司はいまだに、学長と武が手を組んで、不正にコンクールの審査を操作し、自分が負けたと思い込んでいた。誕生会の席で、学長や華江に請われてピアノを弾くことになる敏夫。ほんのさわりの部分だけだったが、学長や華江の盛大な拍手を得た。思わず学長の前に姿を現す清司だが、武の弟・実が間一髪で訪れ、その場をうまくごまかした。別室で実に叱責される清司は一瞬気弱な表情になり、つぶやいた。「幽霊にだって心はある。どうしても辛抱できないときが、あるんだ・・・」由美子はいっそのこと自分が大沢家を出ていくことを提案するが、実はそれよりも清司を警察に引き渡すことを提案。武は、清司だけ不幸にすることはできないと強硬に反対する。「彼も苦しいのだ。同じ芸術家として、痛いほど気持ちがわかる」と言って、清司をかばう。実は武の人の好さに呆れるが、兄らしいと溜息をつく。
敏夫のレッスンは続く。その音色をずっと聞いていた清司は、由美子に「敏夫はうまくなった。大沢の指導力にだけは、兜を脱ぐ」と漏らすのだった。
武の息子・信一は検事としてこのような生活に我慢が出来ず、警察に公文書偽造と不法入国の容疑で引き渡す。
清司は武に陥れられたと叫ぶが、連行されてしまう。信一が独断でやったことだが、敏夫は武を責めなかった。父の連行を冷静に受け止め、大沢家は出ていかないし、レッスンも続けると宣言する。
清司が逮捕されたことで、結果的に二重結婚になってしまったことが宮島音楽大学のスキャンダルとして報道されてしまった。
宮島家に謝罪に訪れた武と由美子は、宮島学長から、スキャンダルに関係している敏夫は、権威と格式を重んずる毎朝音楽コンクールには、出場すら難しいと言われる。遅れて宮島家に謝罪に来た敏夫はそれを聞いて、宮島家を飛び出した。
由美子は学長の娘・菊子から清司との復縁を迫られるが、それは拒否し、単に大沢家から出ていくと申し出る。しかし武は、絶対に由美子を幸せにする、絶対に離さないと宣言。由美子もできることなら武と離れたくないと涙ながらに訴える。それを聞いた学長の妻・あやは、二人は絶対に別れるべきではないと応援する。学長も、しぶしぶ、今回は二人を許すのだった。
宮島家を飛び出した敏夫は、華江にデートに誘われる。敏夫は、コンクールに出られず、武の夢をかなえられないと自暴自棄になるが、華江に説得され、コンクールに出られずとも、武のピアノの腕を継ぐことを改めて決心する。
検察庁を訪れた武は、検事である信一に、清司のための保釈金を渡す。呆れる信一だが、武は「人を不幸にして、自分だけ幸せでいることなどできない」と、いつもの理論で息子に迫る。信一は、「父さんの人の好さにはついていけない、けれども、それが父さんだ」と、あきらめたように言うと、保釈金を受け取り、最後は父に笑顔を向けるのだった。
信一は、敏夫に父親が保釈になることを告げる。武が金を工面したことも説明した。「これ以上お人よしの父に付け込まないでくれ。今後大沢家に近づくな」信一からの命令を、敏夫は黙って聞いていた。
保釈の知らせを聞いた清司は、「裁判が始まるまでに大沢をめちゃくちゃにしてぶっ潰す」と宣言。保釈金の出所を聞いても、それっぽっちで、自分の人生をめちゃくちゃにした罪は消えないと言う。敏夫は、それなら自分は大沢家を出て、レッスンもやめるから、武と由美子に手出しはしないでくれと頼む。由美子手を出したら、「父さんを殺すかもしれない」とつぶやく。
清司は、そんな息子と、無言でにらみ合った。
その夜、敏夫は大沢家を出た。祖国のために戦い、それでも敗れ首都を占領された人々のように、敏夫も清司に敗れてしまった。
保釈の日、拘置所の前で待つ敏夫に、武と由美子が近づいた。二人は敏夫を大沢家に連れ戻すために来た。
敏夫は武に、大学を辞め、コンクールもあきらめ、清司と二人で暮らすことを告げる。武は敏夫を激しく叱責する。「スキャンダルがあったくらいでコンクールをあきらめるな。すべてに勝つほど練習しろ、余計なことは考えるな!」しかし、敏夫は武にすがりついて言う。「わかっている。わかっています!でも・・・どうにもならないんです」清司が拘置所の門から出てきた。敏夫は清司に何か言わせる隙を与えず、車に押し込んで走り去る。敏夫は初めて、なぜ父は生きて帰ってきてしまったのか、と考えていた。
武は息子と弟子を一度に失った悲しみに、絶望していた。

毎朝音楽コンクールまで、あと3か月。



感想

うーん。辛い。みんな辛いね。
そんな中の笑えるポイント。
宮島家に謝罪に来た大沢夫妻。
スキャンダルを責められ、親戚一同の前で、別れる別れないの愁嘆場を演じることになる。
「由美子さん、君は、私と別れるというのか!?」とか何とかやりだしたのを見て、前田吟が「君、そういう話は帰ってやりたまえよ」と至極まっとうな意見を言う。
しかし武はすかさず
「あなたは黙っててください!」と喰い気味に一喝。
そして、怒涛の二人の愛の告白場面へなだれ込む。
多分、前田吟の台詞は「おいおい、ここでやるのか!?」という、視聴者全員が思っていたことの代弁と思われるが、あっさりとその思惑は武に封じられる。
つまり、このシーンを親戚一同の前でやることはありえないってことはスタッフも分かっていたのだろうが、その違和感を「あなたは黙っててください」という台詞によって解消したということだろう。
しかしその笑えるポイントの後に襲ってくるのが感動ポイントだ。
ほんと、このドラマは笑ったと思った直後に泣かせてくれるので、息つく暇がない。コメディならば最高の流れなのだが、困ったことに、このドラマはコメディではない。
感動するのは、武の由美子への愛だ。未亡人だった彼女を幸せにしたいと、武は考え抜いて結婚した。「結婚した以上、私は由美子を最後まで守り抜く。共に生きていく。それが結婚ではないか」
それを聞いて、由美子も泣きながら心情を告白する。武とは離れたくはないが、大沢家のために身を引くしかないという切ない女心。
ザ・昭和を体現する女優・松尾嘉代の面目躍如である。
その話に感動した宮島あや(赤木春江)は、二人を応援する立場を取る。
私も武の結婚観に感動した。結婚したら一蓮托生・相手に不都合が現れたとしても、二人一緒に乗り越えていくのだ。逃げたりしない。
それだけの覚悟を、現代のコンクリートジャングルで、どれだけの人が持っているだろうか?
赤木春江演ずるあやは、あの体裁を重んじる宮島家の中にあって、華江と共に人を色眼鏡で見ない人物だ。敏夫に対しても、乱暴な様子を見せられても、若くて元気がいいのはいいことだというスタンスをくずさない。今回のスキャンダルに対しても、宮島家の他の人々が非難するだけなのに対し、彼女は大沢家を心から心配している。やはりいいおばあちゃんである。

そして今回、見逃してはいけないポイントがある。
拘置所の前での武と敏夫のぶつかり合いである。
大沢家から姿を消した敏夫。レッスンを辞め、大学も辞めるという義理の息子を、武は頬をひっぱたいて叱る。いつもの「余計なことを考えず、一流ピアニストになれ!」というアレだ。
しかし、幾度となく視聴者の心を打ってきた武の叫びは、今回初めて、むなしく響く。
視聴者は、武の知らない敏夫の真の思惑を知っているからだ。
敏夫とて、武と心はひとつなのだ。師と共にありたいと心から願っているのだ。
「分かっている、分かっています!」という切ない叫びで私の涙腺は崩壊。
しかし、清司がいる限り、それはかなわない。この師と弟子の心のズレを、視聴者は痛いほど感じて、今回は武に同調できないのだ。
そして、同調できないストレスによって、敏夫と同様、清司に対して「なぜ生きて帰ってきた」と不満を募らせることになる。
困ったもんだ。

第六回レビューはコチラ
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赤い激流 第四回 レビュー

第三回のレビューはコチラ
本日続けてのエントリーです。今回も濃い。そして涙・・・。

「同居する二人の父」

あらすじ

宮島家では、毎朝音楽コンクールの話題で盛り上がっていた。宮島学長が、毎朝音楽コンクールに優勝した男に、孫の華江と結婚させ、大学も継がせると言ったのだ。東山正彦の妻で学長の娘・菊子は息子の明彦を出場させて、優勝するようにはっぱをかける。そうすれば、宮島家と大学は、東山家のものになるのだ。父の正彦のもと、明彦の特訓が始まるが、敏夫と明彦、優れているのは、明らかに敏夫だった。
明彦は両親に比べて気が弱く、そのためにピアノも上手くいかない。それに悩んでライバルであるはずの敏夫に相談するが、それが却ってあだになり、東山夫婦の怒りを買う。
大沢武の息子・信一は昔から華江のことが好きだった。しかし敏夫が来てから華江の態度が冷たいことに悩んでいる。東山家とのいさかいを見て、敏夫がいることで、今に父はひどい目に遭うと、信一は警告する。侮辱されても何も口答えしない敏夫に、武は感心するが、敏夫は「コンクールで優勝して、先生を見返すことしか考えていない」と答える。それを聞いても、武は笑ってレッスンを続けるのだった。
しかし、腕の痛みは容赦なく武を襲う。痛みに耐える武を見かねて敏夫は「先生は、弾かないで、言葉で指導してくれ」と言うが、武はやめない。「口先だけの指導で、私のピアノの技術と精神は受け継がれるわけがない」と、自ら演奏してみせるのだった。
腕の痛みはだんだんひどくなっている。やはりあと半年ほどで動かなくなるだろう」弟の実に、武はそうつぶやいた。だが、敏夫の話題になると、表情は一変する。敏夫の成長の速さがうれしくて仕方ないのだ。実も、兄のピアノを受け継ぐ敏夫の存在がうれしかった。しかし武は腑に落ちなかった。敏夫がやけに素直なことに。実が腕のことを話したのではないかと疑うが、実は白を切り、「兄貴の誠意が伝わったんだ」と言って励ました。
敏夫がアパートに戻ると、父清司はピアノを弾いていた。やはり妻・由美子のことがあきらめられず、迎えに行くと聞かない。敏夫は必死で止めるが、ついに勝手に出て行ってしまう。敏夫はジャズ仲間の三郎と良介を連れて、大沢家の前で見張ることにしたが、父は現れなかった。朝、敏夫を発見した大沢家の人々は、信一を除いて敏夫たちを歓迎する。
そのまま大沢家でピアノのレッスンを始める武だが、敏夫はいつ清司が来るかと、気が気でない。そんな態度を武は叱るが、華江からの電話で、毎朝音楽コンクールで優勝するように励まされる。そんな時、果たして清司は大沢家の玄関をくぐった。
敏夫は家人に知られる前に清司を空地に連れ出し、母さんを不幸にしないでくれと頼むが、清司は聞く耳を持たない。そんな清司に、敏夫は訴える。10年前、清司が蒸発してから、どれほど苦労して母が自分を育てたか。まだ28だった母は、女であることを忘れて必死で生きてきたこと。その母が、やっと武と幸せになったことを訴えた。
清司は、一瞬やるせない表情になるが、すぐに気を取り直し、由美子のもとに行こうとする。敏夫は必死でそれを止めた。
敏夫を心配する武に、信一が敏夫は空地で浮浪者と乱闘していると伝える。
武が駆けつけると、乱闘に疲れて倒れている敏夫がいた。武が敏夫を抱き起こして訳を尋ねていると、傍らの男が話しかけた。
大沢、俺だよ。しばらくだな」
そこには、死んだはずの男・田代清司がいた。
思わずへたり込む武。
そこに遅れて由美子が駆けつけた。
由美子・・・」
4人の人間が、言葉もなく、立ち尽くしていた。
大沢家で、信一が妹・妙子に語りかけた。
妙子・・・兄さん最初からわかっていたんだ。父さんの再婚は完全な失敗だ。ひどいことになるって・・・」大沢家に戻った4人は、ピアノの前で、不毛な論争を続けた。
ピアニストという地位だけでなく、妻と子供を奪ったと武を責める清司。敏夫は、母を捨てた父に、夫を名乗る資格はないという。武は、未亡人であった由美子と敏夫を幸せにしたかったと訴える。しかし、武は由美子に聞いてみる。清司のもとに戻る気があるのか?と。
由美子は毅然として答えた。清司のもとには戻る気がないこと。自分の中で、清司は死んだ人間であること。自分は武の妻であり、大沢家から出るつもりはないこと。
そこへ武の弟・実が入ってきた。敏夫は一旦清司を別室に連れて行き、落ち着かせようとする。しかし、清司は全く聞こうとしない。
武は敏夫に聞いた。自分から離れて、清司とともに暮らすのか、と。
敏夫は答える。「離れない!どうして自分が先生から離れられるんですか。先生の手は、俺の命を救ってくれたせいで動かなくなる。それなら、自分が先生の音楽の技術と精神すべてを受け継いで、先生の右腕になるしか恩返しの方法はない。おれは一生、先生のそばにいます。離れません!俺の父は、田代清司だ。でも、俺を本当に育ててくれるのは・・・あんただ!ピアノを教えてくれるのは、先生しかいない!俺を見捨てないでください!俺にピアノを教えてください!」武はそんな敏夫を抱きしめた。「わかった!離さん、離さんよ!」
師弟が、本物の師弟として心で結びついた瞬間だった

実は清司に物の道理を説くが、それも聞く相手ではない。実は昔天才と呼ばれた男ならば、二人を捨てた事実と向き合い、ちゃんと生きてほしいと訴える。実の誠意ある態度にようやく清司も動いた。当面由美子たちをあきらめる代わりに、大沢家に、自分を匿うよう要求してきた。実は当然怒るが、武はそれを受け入れる。清司だけを悲しませることはできないと、当分、大沢家で同居することを認めた。




感想

泣けたー(ToT)
感動の嵐だったよ・・・。
その前もやっぱり乱闘で笑ったんだが・・・。

一つずつ見ていこう。(笑)

今回の泣き所は、なんといっても敏夫が武に
「血のつながった父は田代清司だが、俺を育ててくれるのは、あんただ!」
と宣言する場面。
今までの流れに乗ってきて、これほどカタルシスを得るセリフがあるだろうか?
まさに、武はこのセリフのために、東奔西走してきたと言ってもいい。
また、水谷豊の演技も最高に泣かせる。
これ以上ないほど切羽詰まった表情。自分が必要とするものを、ひたすら求める純粋さ。
今までの傍若無人な演技は、この場面で最大限に生きてくる。
あれほど武に反抗していた敏夫の変化と成長を、視聴者はまざまざと見せつけられるのだ。
くさいとか、大げさとかいう評価は、この演技の前には沈黙するしかない。それだけの迫力がある。
これぞ師弟愛。
名場面だ。

次に、緒方拳演ずる田代清司が本格参戦である。
今回の乱闘の場面は、この緒方拳と水谷豊の乱闘だ。どうしても妻に会いたい父と、母に会わせたくない息子のぶつかり合いだ。
いやー、すごい。
唖然茫然である。
ピアニストが乱闘をするな!と言うのもむなしくなるほどのすさまじさだ。
どうしても笑える。

緒方拳はこれ以上ない濃い演技だ。
一昔前のチンピラのイメージって、こんな感じだよなぁ・・・とオモタ。
とにかく、人のいうことを聞きやしない。敏夫が何を言っても、「大沢が憎い。由美子に会いたい」そればっかりである。
彼は天才と呼ばれたピアニスト。その彼が10年間一人の男を憎み続けたのだ。もはや強迫観念に取りつかれていると言ってもいいだろう。しかも、彼には金も、地位も、国籍すらない。自分を天才足らしめたピアノの技術すら、もはや意のままにならないのだ。
そんな彼が、自由になるのは、大沢を憎み、由美子を求める心だけだ。
これからが本当の闘いです。
緒方拳、とにかくすごい演技です。とても晩年の枯れた演技を同一人物がやっているとは思えません。怖いです。

ちなみに、敏夫のアパートの大家さん(?)は初井言榮である。大映ドラマでは非常にお世話になった方。厳格な祖母の役などがはまり役だったが、このドラマではコミカルな演技を見せてくれる。わかりやすく言うと、天空の城・ラピュタのドーラの声の人です。

第5回目レビューはコチラ
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赤い激流第三回 レビュー

第二回目のレビューはコチラ

「どうする?二人の夫にはさまれて」

あらすじ

敏夫が大学に通いだした。しかし、宮島音楽大学の助教授で、宮島家の娘婿東山正彦(前田吟)からの評価は最悪だった。東山正彦は、宮島家のいわばマスオさんだが、同じ宮島家の娘婿である武にライバル心を燃やし、教授の座を争っていた。正彦の息子・明彦は、ピアノ科の学生で、正彦は宮島家直系の孫である華江と結婚させて、音楽大学を継がせることをもくろんでいた。正彦からの敏夫への不満に対して、義理の父である武は、黙って頭を下げるしかなかった。
武の弟・実は指揮科の特別講師として、大学に通っている。反抗的な敏夫をおとなしくさせるため、武の腕の怪我は、敏夫を助けるときに負ったものだと伝えたらどうかと提案するが、武は激しく反対する。「俺は、義理や恩義で敏夫君を教えているわけではない。彼の才能が伸びるのが楽しみなのだ。彼の奔放さが好きなんだ。この怪我が自分のせいだと知ることで、その奔放さをいじけさせたくない。絶対に、敏夫君に言うな!」そう実に説得するのを、やはりピアノ科の学生、宮島家の孫・華江は偶然聞いてしまった。
そして、妻である由美子も、その秘密を知ってしまう。
今年の毎朝音楽コンクールの課題曲が決まった。ショパンの「英雄ポロネーズ」である。武は勇んで敏夫に課題曲を弾いてみせる。しかし、敏夫は急に怒り出す。この曲は、父・清司が同じ毎朝音楽コンクールで武に敗れた曲なのだ。それがきっかけで、父は自殺した。そんな曲を、とても弾けないと、敏夫は荒れる。
荒れる敏夫は義理の妹・妙子にふざけてほっぺにキスをする。それを兄の信一に誤解されて、信一は敏夫に出ていけと迫る。
家を飛び出した敏夫は、自分のアパートに戻り、怒りにまかせて電気もつけずにショパンの「革命のエチュード」を弾きまくる。それを後ろで聞いている男がいた。
気配に気づいて、電気をつける敏夫。そこには、ずっとパネルの中でしか会えなかった父・田代清司がいた。清司も革命のエチュードを弾いてみせるが、力が抜けたように「下手になったな・・・」とつぶやく。
武は、英雄ポロネーズを弾かせようとした自分の無神経さを恥じていた。しかし由美子は、「田代は家庭を家庭とも思わない身勝手な人でした。敏夫は父の愛に飢えているだけ。本当はあなたを慕っています。敏夫にはきっと弾くように言い聞かせます。」と答える。
敏夫は幽霊を見るように清司を恐れたが、だんだん生身の人間であることがわかる。清司が、武と由美子の再婚に腹を立てているのを知ると、母さんだけは、そっとしておいてやれと懇願する。
清司が現れた以上、大沢家には戻れない敏夫。ジャズバンド仲間とジャズピアノの練習に打ち込むが、やはり大学に戻り、武のもとへレッスンに行く。しかし、英雄ポロネーズは弾かないと宣言する。レッスンに敏夫が現れたことに安堵した武は、では革命のエチュードを練習しようと提案。自分が演奏してみせるが、そんな時に腕が痛み出し、ミスタッチを繰り返す。敏夫は弾けない武を馬鹿にしてレッスン場から出ていく。それを聞いていた華江は、敏夫に「叔父様の苦しみも知らないで叔父様の悪口を言わないで!」と怒りをぶつける。敏夫には何の事だか分らなかった。
武の苦しみが、腕の痛みだと知った敏夫は、その原因を華江に問いただすために宮島家に忍び込み、運悪く正彦たちに見つかってしまう。
正彦は、即刻敏夫を大学から追い出そうとするが、宮島学長の妻で華江たちの祖母・あや(赤木春江)がその場をとりなし、事なきを得る。
敏夫を叱る由美子に対して、敏夫は、武を侮辱する発言を繰り返す。それにカッとなった由美子は、武の腕のことを口に出してしまうが、武に止められる。敏夫は由美子に「もうどうにもならない、俺には天才の血が流れている。止められない」とつぶやく。由美子に清司が帰ってきたらどうする?と聞くが、由美子は「どうもしない。私が愛するのは武さんだけ」と答えた。敏夫は覚悟を決め、母に対して大沢さんのもとで幸せになれと叫んで去る。
清司に危険を感じる敏夫は、「知らない町で、母さんのことなんか忘れて、二人で気楽に暮らそう」と提案する。清司は、由美子が自分のもとに戻ってくると確信し、必ず取り戻すと意気込む。
敏夫は大学に行かず、ジャズ仲間とバイトに明け暮れた。清司を養うためだ。
武は悩んでいた。敏夫を本当の息子として愛しているのに、敏夫はなついてくれず、教師としても失格だ。そんな心情を弟の実に吐露する。実は、「敏夫のようなじゃじゃ馬は、兄貴のようなお人よしには無理だ」と答え、自ら敏夫を説得しにかかる。
実が敏夫の前に現れた。武の腕は後半年か一年で動かなくなる。その理由は火事場で敏夫を助けたから。だからと言って武が一度でも恩着せがましくしたことがないこと、ピアノを教えるのはそれが理由ではなく、敏夫を愛しているから、怪我の理由を言わないのは、敏夫が大事だからだと教える。「このことは兄貴には黙っていろ。兄貴の愛情を無にするな。それができないなら、お前は本当に野良犬だ」それだけ言うと、実は立ち去る。敏夫は武の深い愛情を感じ、身もだえして涙するしかなかった。
敏夫は武に電話して、明日のレッスンは必ず受けることを約束する。
武は、素直に喜んだ。明日のレッスンが楽しみで仕方がない。「私は、彼にレッスンすることが出来るだけでうれしいんだ。うれしいなぁ」
そう言って笑う武。この瞬間、彼は本当に幸せだった。


感想

だめだ!
どうしてもあらすじが長くなってしまう・・・!
一つ一つのエピソードが濃すぎて、省略できない・・・!
何とかしなければ、だれも読んでいないだろう。
とは言っても、また感動して泣いてしまった私。
つか、泣いているといっても、突っ込みどころ満載の「赤いシリーズ」。ちゃんと笑いの合間に泣いているんですよ(爆)。
今回の泣き所は、武の弟・実(石立鉄男)が敏夫を説得するシーン。本当に、このドラマでは石立鉄男が役得過ぎて、笑えます。かっこよすぎて最高です。
この場面が、なぜだか乱闘です。前回も乱闘シーンで泣きましたが、今回も乱闘です。
敏夫をホテルの中庭(?)に連れ出した実は、『男の会話はこぶしでするものさ』とばかりに、いきなり殴りつけ、プール(?)に突き落とします(笑)。つか、ピアニストに乱暴はやめてください!っていう視聴者の心の叫びはむなしく響く・・・。
プールの中でずぶぬれになりながら敏夫を殴りつける実。その合間に、あの感動的な武の愛情話で、敏夫を説得するわけですが、これが泣けるんだー。
そのあと一人になった敏夫の演技も、青年の苦悩を絶妙に表現していて泣ける。
さらにそのあと、レッスンを受けると言われたときの、宇津井健の演技。
彼は、敏夫に対しては、大げさに騒ぎ立てたりしない。ただ一言、「そうか」と笑顔で答えるのみ。敏夫に無用な負担をかけないためだ。その静かな「そうか」に感動。
でも電話を切った後に喜びを無邪気に爆発させる。その純真さに、見ているほうはまた感動するのだ。

それにしても、赤木春江のおばあちゃんもいい演技だ。彼女が出てくるだけで、なんだかほっとする。この人が後年、「幸楽」で散々嫁いびりするとは、にわかには信じ難い。

ちなみに、石立鉄男が指揮科授業をしていた時に流れるピアノの連弾は、モーツアルト・交響曲第41番 第一楽章のピアノアレンジ。

第四回目はコチラ
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赤い激流・第二回 レビュー

第一回目が、まことにふがいない結果だったので、二回目をさっさとアップ。
第一回目レビューはコチラ

「育ちゆく愛にしのび寄る過去」

あらすじ

大沢武と由美子は再婚した。しかし、由美子の息子・敏夫は武を父の敵と信じて同居しようとはしない。大沢家の長男・信一もまた、父の結婚式をぶち壊した敏夫を嫌いぬいていた。
武は右腕の痛みがひどく、大学病院で友人である医師の診察を受けた。火事の時に敏夫を助けたことが原因で、腕をひどく痛め、このままピアノを弾き続ければ半年か一年のうちに、まったく動かなくなると宣告されたのだ。ピアニストである武にとって、ピアノを禁じられることは、死を意味していた。
武の弟で、世界的な名声を持つ指揮者・実(石立鉄男)は言う。「由美子さんの息子の敏夫にピアノを教えるんだ。」武と実は、敏夫にピアニストとしての計り知れない才能を感じてた。「敏夫を助けたおかげで兄さんの腕は動かなくなる、しかし、敏夫にピアノの技術をすべて伝えれば、敏夫の中に、兄さんのピアノは生き続ける」と。
武は由美子とともに敏夫のアパートを訪れた。敏夫を大沢家に迎い入れるためだ。しかし、敏夫は受け入れない。大沢武は、田代清司の敵。そう凝り固まってしまった敏夫の心を溶かすことはできない。武は、一流ピアニストになりたいなら、私の弟子になれと諭す。父の敵にピアノを習うことなどできないという敏夫に、武は、「君の才能が惜しい。私が敵でもいいじゃないか、私からピアノを習って、私を踏み台にして、一流になれ」と迫る。
その時、港に着いた船から一人の男が降り立った。
一旦は武と由美子を追い返した敏夫だが、悩んだ末、武の弟子になることを決心し、大沢家に住むことになる。武は喜んで彼を迎え、さっそくレッスンを始める。
敏夫のピアノを聞いて、宮島家の孫娘・華江(竹下景子)もその才能を確信する。しかし、信一が敏夫のジャズ仲間や由美子につらく当たるのを見て、敏夫は怒りを爆発させる。
武は、対立する二人をとりなし、敏夫に宮島音楽大学の編入試験を受けるように勧める。気が進まない敏夫だったが、信一に受かるわけがないと馬鹿にされ、意地でも合格すると意気込む。編入試験の課題曲はリストのハンガリアンラプソディ。武のしごきはきつかった。敏夫でも音を上げるほどだったが、武は、練習で傷ついた敏夫の指を自ら手当し、父の敵を討つなら、これくらいで音を上げるなと励ます。試験を控えて、敏夫は信一に、合格したら、由美子を母と呼ぶこと、自分を野良犬と呼ぶのをやめることを要求する。しかし、義理の妹・妙子にだけは、不安を吐露するのだった。
編入試験は実技の点数は最高だったが、学科試験によって不合格になってしまう。敏夫はそれを聞いて大沢家から出ていこうとするが、武と弟の実が学長に掛け合う。実技が最高なのに、国語と英語がわずかに足りないくらいで落とすなんて、とても受け入れられないと。武は学長に問う。「学長、音楽の教育ってなんですか。私は才能ある生徒を見つけて、すべてを伝える。生徒は、私の技術と精神をすべて吸収し、私に代わって成長していく。それだけです。私の考えが間違いならば、私は大学を辞めます」この言葉が学長の心を動かした。結果、敏夫は合格となった。
それを聞いた敏夫は、裏口入学だと言って武を責める。やはり学長と手を組んで、父を陥れたのだと。
そんな敏夫を武は力ずくで押さえつけ、説得する。「お前の生きる道は、ピアニストになることだ。それ以外のことは考えるな。おれなんか、足元にも及ばないピアニストになるために、小さいことはかまうな。おれは縄に括り付けてもお前を大学に引っ張っていく!」武の必死の説得を、敏夫は「ここは俺の部屋だ!出ていけ!」と、強がりながら受け入れる。初めて、武と敏夫の間に師弟、いや、親子の結びつきができた瞬間だった。
その時、敏夫のアパートに、港に降り立った男が現れた。大沢武と由美子の結婚を知り、部屋に入り込み、自分の若き日の写真を見つけて愉快そうに笑う男、その男こそ、10年前死んだはずの、田代清司。敏夫の父親だった。


感想
長いっつーの!

あらすじだけでこの長さって、もはやあらすじではないと言える。
取捨選択が出来なくてすみません。
しかし!
まだ二回目なので、状況説明もかねてあえて書きました。ここをはしょると、今後の展開に響いてくるのですよ。我慢して読んでくだされ。
それにしても濃い。とにかくエピソードを詰め込んでいる。普通のドラマだったら、今回だけで2話か3話分になったはずだ。たとえば、敏夫が大沢家に来るまでだけで1話分使ってもいいと思う。さらに、敏夫が大学受験するくだり。私はてっきり、大学の受験は次回に持ち越すもんだと思っていたが、あにはからんや、合否まで一話の中に詰め込んでしまった。すさまじいスピードである。
しかしそれだけに、無駄な部分が全くない。役者のセリフは膨大なのだが。
そして、今回思わず私は泣いてしまった。
まず宇津井健が、敏夫を合格させるために、学長に向かって演説をぶつ場面。教育者とはかくあるべしと、教えてくれる。さらに敏夫を無理やり説得し、大学に通うことを受け入れさせる場面。この場面は乱闘、格闘である。若い水谷豊を相手に大立ち回りする。しかも、説得の演技が感動的なのだ。まさに体当たりの演技。宇津井健が、ここまで激しい芝居をするとは、ちょっと予想してなかった。
それにしても、ピアニストがこんなに危険な乱闘をするとも思えないのだが・・・。
そして、敏夫だ。彼は散々傍若無人にふるまう。反発している相手には容赦しない。けれども、今回のエピソードで、彼が単なる乱暴で無礼なだけの人間ではないことがわかる。
彼が大沢家でピアノを習おうとしたのは、母の説得があったからだ。「母さん孝行のために、ピアノを習ってちょうだい」と言われると、母さんのために、と素直に大沢家に来る。そして、大学受験に失敗すると、確かに荒れ、出ていこうとする。しかしそれは、大沢家の長男、信一との賭けに負けたからではない。師である武に対して、恥ずかしくて顔向けできないからだ。そう、彼は素直で恩義を感じ羞恥心も持ち合わせた純粋な青年なのだ。
敏夫の大学行きが決まり、物事は順調に進むかに見えた。しかし、そうは問屋が卸さないのである。

ちなみに、大沢武が家で演奏していた曲は、ショパンの「木枯らしのエチュード」。「スチュワーデス物語」では、新藤真理子の得意曲だった。

第三回目レビューはコチラ
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赤い激流・第一回 レビュー。

赤い激流への熱い思いはコチラ


「許されぬ結婚式」

あらすじ
はい。張り切ってあらすじといきたいところですが!
なんと!
第一回目から、録画失敗しました!
痛恨の極みであります・・・。大ショック!
山口百恵が・・・。噂では、山口百恵は一回目にしか出てこないらしいのですよ。
本当は、人物相関図とか、登場人物の一覧とか作りたいんですが、時間がないので、無理かな・・・。

ま、気を取り直して、後の回を見たり、公式HPを見て第一回の予想を立てて書くことにします(笑)。
何しろ見ていないので(笑)時系列などが違っていて当然です。そこら辺はご了承ください。

あらすじ

大沢武(宇津井健)は、宮島音楽大学のピアノ科助教授にして、大学の創始者・宮島学長の娘婿である。妻は早くに亡くしているが、長男の信一(中島久之)は東大卒で東京地方検察庁に勤める検事、長女の紀子(山口百恵)はバイオリニストを目指し、パリ国立音楽大学に留学、次女の妙子(久木田美弥)は宮島音楽大学に通うバイオリン科の学生で、幸せな家庭を築いていた。ある日、彼はとあるジャズバーで、非凡な才能を持つジャズピアニストに出会う。彼の名は田代敏夫(水谷豊)。
そして偶然に、二人が同じビルにいる際にビル火災が起こり、敏夫が窓から落ちそうになってしまう。武は青年の命を救うべく彼に手を差し伸べ、窓から彼を引き上げ救助するのだった。
青年を助けた武は、その青年が、かつて自分と数々のコンクールでしのぎを削った相手、天才と呼ばれたピアニスト・田代清司(緒方拳)の息子であることを知る。
そして、田代の妻・由美子(松尾嘉代)と久しぶりに再会する。清司と武は、コンクールだけでなく、由美子の愛も争った相手だったのだ。しかし、田代清司は、毎朝音楽コンクールで武に敗れたことに絶望し、10年前由美子と敏夫を捨て、フランスに渡り、マルセイユの海で自殺していたのだった。
未亡人として敏夫を一人で育てていた由美子に、武は改めてプロポーズする。武の誠意に心打たれた由美子はその申し出を受け、再婚する。
しかし、その再婚を祝福しない男がいた。清司の息子、敏夫である。敏夫は、コンクールに敗れた清司から、コンクールの審査が宮島音楽大学の学長によって、娘婿の武を優勝させるために操作されたものであると聞いており、それを全て信じて、武に憎悪を募らせていたのだ。敏夫は清司を忘れることなく、住んでいるアパートにピアニスト・清司を写したパネルを飾っており、父のようなピアニストになることを夢見ていた。
敏夫は二人の結婚式に乗り込み、式をめちゃくちゃにしてしまう。そんな敏夫を見て、武の長男・信一や親戚一同は敏夫に悪感情を抱く。
しかし、武は敏夫を義理の息子として温かく迎えたいと思っている。
そんな時、武の腕がしびれ、痛み出した。ピアノを弾くこともままならない。この腕の痛みが、彼と、敏夫の運命を、大きく変えることになるのだった。


感想

てか!見てないのにここまで予想あらすじを書いた私をほめて欲しい(笑)。
見てないのに感想も何もあったモンではありませんが・・・。
しかし残念。山口百恵の、「バイオリンを弾く演技」を見たかったもんです。
というわけで、詳しい感想は、次回に回します・・・。申し訳ありません。
しかし、父親がピアノ科の助教授であるにもかかわらず、娘二人はバイオリニストを目指してるって・・・新しいんじゃない?

第二回のレビューはコチラ
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赤い激流の思い出。

「毎朝音楽コンクール」
この、某新聞社を足して2で割ったようなコンクール名を、私は一生忘れないだろう。
このコンクールとの出会いは、まだ学生のころだったと思う。
夕方、何気なく映っていたテレビから聞こえて来る音声の中に、この名前はあった。(ちなみに、読み方は『まいちょう』である。まいあさではない)
二人の男が、このコンクールに向けて、ひたすらピアノのレッスンをしていた。
しかも、刑務所の中で。
一人はピアノの師。一人は、死刑囚の弟子。
このぶっ飛んだ設定に、私はたちまち釘付けになった。

そう、これはドラマ・赤い激流の中の、架空のコンクールなのだ。
私が見たのは、再放送だった。
もうずいぶん前のドラマなので、気にしないであらすじを書くと、このドラマは、音楽大学の助教授である大沢武(宇津井健)と、彼に才能を見出され、しかし過酷な運命に翻弄される青年・田代敏夫(水谷豊)が、一流ピアニストへの登竜門・毎朝音楽コンクールを目指す物語だ。しかし、前半の話は見落としていて、すでに主人公の水谷豊が父親殺しの容疑で逮捕されてしまった後から見始めたのだと思う。
途中から見始めたので、なぜ父親が殺害されたのか、さっぱり分からなかった。しかも、水谷豊はどうやら冤罪らしい。確か、裁判はまだ始まっていなかったと思ったが。青年が留置所にいるにもかかわらず、師・宇津井健は役所の人間を誠意で口説き落とし、弟子・水谷豊にピアノのレッスンをするのだ。
荒唐無稽といわれればそれまでだが、あらすじがさっぱり分からないにもかかわらず、私は夢中になった。
夢中にさせられるだけの、ドラマの勢いがものすごかったのだ。
役者がとにかく、熱い!今のドラマからは考えられないくらい過剰とも思える演技と演出。
しかしそれが昔のフィルム映像なだけにしっくり来る。
今のドラマにないもの、いや、今のドラマが忘れてしまったものが、確実に、ここにある。
そして毎回話が二転・三転する。
まさに激流。
ピアノコンクールが物語の骨子なのだが、視聴者がいやおうなくひきつけられる点は、殺人の真犯人は誰かということだ。
何しろ、主人公が犯人にされているのだ。冤罪であることは分かりきっている。しかも、水谷青年を救うため、ひいてはピアノコンクールに出場させるために、師である宇津井健が真犯人の名乗りを上げたりする。もちろん嘘だが。さらに水谷豊の母親役の松尾嘉代まで真犯人の名乗りを上げる。彼女は宇津井健と再婚しており、つまり夫や息子を救うためなので、もちろん嘘だ。
さらに悪いことに、登場人物それぞれがそれぞれに被害者を殺害するだけの動機を持っているのだ。誰が犯人でもおかしくはない。
みんなが疑心暗鬼になる中、宇津井健と松尾嘉代だけは、青年水谷を信じ、彼を励まし、導く。
これは師弟愛と親子愛のドラマなのだ。
宇津井健は、おなじみの誠意と博愛を持って全てを制すという役柄の演技で、熱く私たちの心を打つ。
もしかしたら、彼こそ、どの役をやっても宇津井健であると言ってもいいかも知れない。しかしそれは、本人のイメージでもって演技しているのではなく、その優しく純真、おおらかで、全てを包んでくれるキャラクターが、宇津井健にしかできないという意味で私はそう言いたいのだ。
現在のキム○クのように、何をやってもキム○クという役者といえば、このドラマで言うと、石立鉄男がそれかも知れない。彼は何をやっても石立鉄男にしか見えない。彼の強烈な個性がそうさせているのだ。しかしキム○クと決定的な違いがある。彼の演技には説得力がある。彼の個性と役柄がちゃんと融合しているのだ。彼の中に、ちゃんと役柄は生きている。そして、見るものを、強引に納得させてしまうのだ。

そして水谷豊。彼もものすごい過剰演技だ。相当ぶっ飛んだテンションで私たちや宇津井健に迫ってくる。しかしドラマを見ていくうちに、その演技が不思議でもなんでもなくなる。若き天才芸術家を、全身で表現しているのだろう。
彼のピアノ演奏の演技もすごかった。本当に演奏しているように見えた。しかしまさかテンペスト(第三楽章)が弾けるとは信じられず、毎回、母と「本当に弾いているのか」というテーマで論争を展開したものだ。

まぁ、私ごときの役者論は置いといて(ていうか、演技のことなど、私はまるっきり素人なので、あしからず)、ドラマに戻ろう。
殺人の真犯人探しと平行して、毎朝音楽コンクールは、刻一刻と迫ってくる。果たして、殺人犯としてとらわれた水谷豊はコンクールに出場できるのか。宇津井健は、弟子にピアノを教えることができるのか。犯人は誰か?怒涛の展開の中、物語は終幕を迎える。
最後の顛末のネタばれは、ここでは避ける。
しかしこのドラマ、DVD化されていないらしい。
赤いシリーズといえば、山口百恵だが、彼女は「激流」にはちょい役で一度か二度しか出ていないのだ。その他の事情があるのかどうだか知らないが、DVD化されていないから、再放送を待つしかない。私は長年、前半の見落とした部分を見たくてたまらなかったが、今年、8月からCS放送で再放送される情報をつかんで、小躍りした。
これのために、TBSチャンネルと契約したのだ。
もう一度、水谷豊のテンペストが聞ける・・・。そう思っていた。
これから、その再放送を見た感想とあらすじを記していこうと思う。
ものすごく、需要がないし、現在すでに11回目に到達しているため、レビューとしてはすごく遅れているのだが、この熱い感動を、残さないわけにはいかず、書いていこうと思っていますので、しばしお付き合いください。というか、全然無視してくださっていいのですけど・・・(汗)。

ちなみに、テーマ曲のピアノ部分は、今は亡き羽田健太郎氏が演奏している。
オープニングの動画はコチラです。音質いいです。オープニングのロングバージョンです。荘厳です。メロドラマ風です。
必聴ですぞ!
では長くなりましたが、次回からよろしくお願いします。

第一回目のレビューはコチラ
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