赤い激流・第十八回 レビュー
第十七回はコチラ。
「死刑判決に父と母の涙」
あらすじ
敏夫の判決が出る裁判が、2日後に迫った。判決の内容を恐れておびえる由美子だが、敏夫はひたすらピアノを弾いてすごし恐怖と戦っている。ピアノの音色を聞いて、武は由美子を励まし、妹の妙子は涙した。山田弁護士は、今のままでは敏夫に死刑判決が下る見通しが高いと説明する。しかし、高裁、最高裁まで戦うと言う。五年、十年はかかると言う山田に武は反論する。「そんなに待てない。ピアノが弾けなくては、敏夫君は生きている甲斐がない。敏夫が生きるには、高裁も最高裁もない。明後日の判決を無罪にするしかない」そのためには、真犯人を見つけるしかなかった。
大沢家に、髪を切ってさっぱりした明彦が訪れた。毎朝コンクールの本選の課題曲が決まったと言う。ベートーベンのテンペスト。明彦は二次予選で敗れたが、敏夫に優勝してほしくて、伝えに来たと言う。敏夫は明彦の分まで頑張ると宣言し、二人は握手を交わした。
敏夫が武のテンペストの楽譜を開くと、由美子が若いころの写真が挟まっていた。
武は弟の実とともに、検察庁の信一のもとへ行き、敏夫の無実を証明する方法を尋ねる。
信一は、敏夫が犯人だと納得させるため、本当は許されないことだが、検察庁の資料室へ二人を通し、資料を読むように話す。信一は父武の姿を見かねて、清司が死の前に言った、「これから1億円持ってくるやつがいる」という言葉を、もう一度洗いなおしたらどうかと去り際に言い残す。刑事は黙殺したが、1億円を持ってきた人間が清司に最後に会った人物には間違いない。武は、今まですっかり忘れていた事実を、実に話す。実は、それを聞いてアメリカに発つ前、宮島家の人間が清司にゆすられていたことを思い出す。宮島学長がゆすりの理由を実に教えるという約束を果たしてもらうため、宮島家に乗り込む。東山夫妻は、宮島学長が不在だと言い、武をゆすり呼ばわりし、名誉棄損で訴えると怒る。実は、宮島学長が真実を話す約束をしていたことを理由に迫るが、そこへ宮島あやが「大沢家や敏夫のことは心配しているが、ゆすられていた事実はない」と断言する。学長は、宮島家にはいなかった。
その押し問答を明彦が聞いていた。明彦は華江に武と実の訪問を話す。東山夫妻とあやは、華江を止めるが、武や敏夫の窮状を黙ってみていられない華江。あやは、そんな華江に迫る。「あなたも宮島家の人間なら、私たちの苦しさが分かるでしょう。田代清司にゆすられていた事実が知れれば、宮島家も、大学もおしまいなのよ。大学を失って、おじい様はどうやって生きていくの?おじい様を苦しめないで」しかし、華江は祖父と敏夫への愛に心を裂かれながらも、敏夫に会って、宮島学長が入院している病院を話す。
敏夫は学長が入院する病院に行き、「このままでは死刑になる。清司にゆすられていた理由を教えてほしい」と迫る。敏夫は、学長が弾いてくれた「ラ・カンパネラ」を聞かせ、このピアノを聞いて、うれしくて泣いたことを話す。「ピアニストって何です?一生ピアノを弾くことでしょ?これを聞いて、おじいちゃんみたいなピアニストになりたいって思った。一生ピアノを弾きたいって思った。死にたくない。助けてほしいい。大沢先生のことも助けてほしい。大沢先生の後を継ぐ俺が死んだら、大沢先生のピアノも死んじゃうよ。これほど素晴らしいピアノを弾く人ならば、教えてほしい」と話す。
「わかった。武君を呼んでくれ。真相を話す」ついに学長が覚悟した。
病院に駆け付けた武は、そこで友人の西条医師に会う。西条医師も敏夫を心配し、裁判を傍聴すると言った。学長は、正彦の裏口入学を話す。その場にあやも居合わせ、武に大学の不正を世間に公表しないでほしいと暗に要請する。武は正彦にその話をし、1億円のことも聞いてみる。が、正彦はもちろん認めず、さらにアリバイがあることを話し、嘲る。正彦は不倫相手のマンションにいたのだ。武と由美子はアリバイの検証をしてみるが、その結果、殺害がそれほど不可能ではないことが分かる。清司のマンションと不倫相手のバーのマダム・真山玲子が住むマンションは目と鼻の先だった。マダムは、正彦の様子がいつもと変わりなかったと話す。武は真実を話してほしいと頼むが、追い返される。マダムは正彦に連絡するが、その電話を菊子が聞いていた。菊子はバーに乗り込み、マダムに嫌味を言いつくして、手切れ金を渡す。
敏夫はマダムが店から出てくるのを見計らって、マダムを車に拉致する。敏夫は正彦の帰り際、マダムが「私が一言しゃべれば大変なことになる」と話しかけるのを聞いていた。敏夫は車を散々飛ばしてマダムを怖がらせる。敏夫の度胸を認めたマダムは、恥をかかされたお返しと、証言することを決める。
大沢家に来たマダム・真山は、山田弁護士に、一億円を用意した人物を知っているので、裁判で証言すると約束する。しかし、その人物がだれかはその場では言わなかった。これが実現すれば、裁判が無効になる可能性がある。弁護士とマダムが帰った後、武は喜んで、テンペストの新しい楽譜を取り出すが、敏夫は古い武の楽譜でいいと言う。敏夫は由美子の写真を取り出し、テンペストは先生と母さんの思いでの曲だろ?と聞く。昔、武は由美子にテンペストを良く弾いて聞かせたと言う。武は敏夫に、思い出の曲、テンペストを弾いて聞かせた。大沢家は希望にあふれた。
マダムが自宅に戻ると、札束が詰まったアタッシュケースと航空券、さらに椅子に腰かけ、酒を飲む人物が待っていた。「取引しようってわけ?」マダムがにやりと笑った。
裁判当日、武と実がマダム・真山の自宅に行くが、近所の女性が、真山は旅行に出かけたと教えてくれる。兄弟はあわてて羽田空港に向かい、真山を探す。
敏夫は裁判所で大沢兄弟と真山の到着を待つ。宮島家も裁判所に来て、華江と明彦が敏夫を励ました。飛行場で武と実は真山をついに見つけるが、真山に証言する気はもはやなく、二人から逃れ、どこかへ旅立ってしまった。
裁判が始まった。山田弁護士は、証人が遅れていることを理由に裁判の延期を申し出るが、裁判官は、その必要を認めず、判決が読み上げられた。
「被告人、田代敏夫を死刑に処する」
武は、真犯人に怒りを燃やすしかなかった。
敏夫は東京刑務所に収監される。護送車に乗り込む敏夫に、武と由美子は追いすがる。テンペストの楽譜を返すと言う敏夫に、武は諦めるなと叫ぶ。武は「きっと真山玲子を探し出し、助ける」と断言した。親子が、護送車の窓越しに見詰め合う。
「先生、母さん、さようなら」
「生きて!どんなことがあっても、生きて!」由美子は護送車を追いかけながら泣き崩れた。
感想。
すっきりしない回である。
全くすっきりしない。
すっきりしたのは、明彦の髪型だけだった。
すべてが空回りの回だ。
武と実は、勇んで宮島家に真相を尋ねに行くが、あっさりと追い返される。宮島家に抵抗する華江を、あやは、やはり論点をすり替えて引き留め、敏夫は学長から真相を引き出すことに成功するが、論点をすり替えたあやによって、真実の公表は止められる。正彦に真実を迫るが、あっさりとはぐらかされ、マダム・真山には翻弄されるだけ。
山田弁護士は、優秀なはずなのに、裁判のその時まで証言の本当の内容を確認しないまま終わってしまった。
大体、今まで1億円云々のくだりを忘れていたとは何事かね。しかも、信一も今頃言うなって話である。
そもそも、敏夫の死刑と、宮島音楽大学+学長の生き死には、同列ではない。それは全く別の話としてとらえるべきである。それなのに、敏夫の死刑の話をすると、あやは必ず宮島家の名誉に論点をすり替えて、華江や武の情に訴えて話の進展を妨害する。
ではどうすれば良かったのかというと、やはり正彦を免職すべきだったのだ。清司に脅された時点でそうしておけば、まだ傷は浅かったかもしれない。
その責任問題に蓋をして、宮島家の保身のみを訴えるあやは、やはり論点をすり替えているとしか言いようがない。まぁ、それは客観的に見ている者だけが言えることで、実際そうなってみれば、なりふり構っていられないのだろう。
それにしても、マダムの証言とは一体何なのだろう。一億円用意した人物が、正彦とは限らないと、マダムはほのめかしている。それほどの証言を今まで黙っていたとなると、なんだか別の問題も出てきそうだ。自分が一言いえば、大変なことになると正彦を脅してもいるが、正彦はこんなことになっても、まだ大学や宮島家に居座るつもりなのか。しかも、菊子にばれるまで、愛人関係も解消しようとしていない。ひどいね。
全く反省してないな、この男。
第十九回につづく・・・
「死刑判決に父と母の涙」
あらすじ
敏夫の判決が出る裁判が、2日後に迫った。判決の内容を恐れておびえる由美子だが、敏夫はひたすらピアノを弾いてすごし恐怖と戦っている。ピアノの音色を聞いて、武は由美子を励まし、妹の妙子は涙した。山田弁護士は、今のままでは敏夫に死刑判決が下る見通しが高いと説明する。しかし、高裁、最高裁まで戦うと言う。五年、十年はかかると言う山田に武は反論する。「そんなに待てない。ピアノが弾けなくては、敏夫君は生きている甲斐がない。敏夫が生きるには、高裁も最高裁もない。明後日の判決を無罪にするしかない」そのためには、真犯人を見つけるしかなかった。
大沢家に、髪を切ってさっぱりした明彦が訪れた。毎朝コンクールの本選の課題曲が決まったと言う。ベートーベンのテンペスト。明彦は二次予選で敗れたが、敏夫に優勝してほしくて、伝えに来たと言う。敏夫は明彦の分まで頑張ると宣言し、二人は握手を交わした。
敏夫が武のテンペストの楽譜を開くと、由美子が若いころの写真が挟まっていた。
武は弟の実とともに、検察庁の信一のもとへ行き、敏夫の無実を証明する方法を尋ねる。
信一は、敏夫が犯人だと納得させるため、本当は許されないことだが、検察庁の資料室へ二人を通し、資料を読むように話す。信一は父武の姿を見かねて、清司が死の前に言った、「これから1億円持ってくるやつがいる」という言葉を、もう一度洗いなおしたらどうかと去り際に言い残す。刑事は黙殺したが、1億円を持ってきた人間が清司に最後に会った人物には間違いない。武は、今まですっかり忘れていた事実を、実に話す。実は、それを聞いてアメリカに発つ前、宮島家の人間が清司にゆすられていたことを思い出す。宮島学長がゆすりの理由を実に教えるという約束を果たしてもらうため、宮島家に乗り込む。東山夫妻は、宮島学長が不在だと言い、武をゆすり呼ばわりし、名誉棄損で訴えると怒る。実は、宮島学長が真実を話す約束をしていたことを理由に迫るが、そこへ宮島あやが「大沢家や敏夫のことは心配しているが、ゆすられていた事実はない」と断言する。学長は、宮島家にはいなかった。
その押し問答を明彦が聞いていた。明彦は華江に武と実の訪問を話す。東山夫妻とあやは、華江を止めるが、武や敏夫の窮状を黙ってみていられない華江。あやは、そんな華江に迫る。「あなたも宮島家の人間なら、私たちの苦しさが分かるでしょう。田代清司にゆすられていた事実が知れれば、宮島家も、大学もおしまいなのよ。大学を失って、おじい様はどうやって生きていくの?おじい様を苦しめないで」しかし、華江は祖父と敏夫への愛に心を裂かれながらも、敏夫に会って、宮島学長が入院している病院を話す。
敏夫は学長が入院する病院に行き、「このままでは死刑になる。清司にゆすられていた理由を教えてほしい」と迫る。敏夫は、学長が弾いてくれた「ラ・カンパネラ」を聞かせ、このピアノを聞いて、うれしくて泣いたことを話す。「ピアニストって何です?一生ピアノを弾くことでしょ?これを聞いて、おじいちゃんみたいなピアニストになりたいって思った。一生ピアノを弾きたいって思った。死にたくない。助けてほしいい。大沢先生のことも助けてほしい。大沢先生の後を継ぐ俺が死んだら、大沢先生のピアノも死んじゃうよ。これほど素晴らしいピアノを弾く人ならば、教えてほしい」と話す。
「わかった。武君を呼んでくれ。真相を話す」ついに学長が覚悟した。
病院に駆け付けた武は、そこで友人の西条医師に会う。西条医師も敏夫を心配し、裁判を傍聴すると言った。学長は、正彦の裏口入学を話す。その場にあやも居合わせ、武に大学の不正を世間に公表しないでほしいと暗に要請する。武は正彦にその話をし、1億円のことも聞いてみる。が、正彦はもちろん認めず、さらにアリバイがあることを話し、嘲る。正彦は不倫相手のマンションにいたのだ。武と由美子はアリバイの検証をしてみるが、その結果、殺害がそれほど不可能ではないことが分かる。清司のマンションと不倫相手のバーのマダム・真山玲子が住むマンションは目と鼻の先だった。マダムは、正彦の様子がいつもと変わりなかったと話す。武は真実を話してほしいと頼むが、追い返される。マダムは正彦に連絡するが、その電話を菊子が聞いていた。菊子はバーに乗り込み、マダムに嫌味を言いつくして、手切れ金を渡す。
敏夫はマダムが店から出てくるのを見計らって、マダムを車に拉致する。敏夫は正彦の帰り際、マダムが「私が一言しゃべれば大変なことになる」と話しかけるのを聞いていた。敏夫は車を散々飛ばしてマダムを怖がらせる。敏夫の度胸を認めたマダムは、恥をかかされたお返しと、証言することを決める。
大沢家に来たマダム・真山は、山田弁護士に、一億円を用意した人物を知っているので、裁判で証言すると約束する。しかし、その人物がだれかはその場では言わなかった。これが実現すれば、裁判が無効になる可能性がある。弁護士とマダムが帰った後、武は喜んで、テンペストの新しい楽譜を取り出すが、敏夫は古い武の楽譜でいいと言う。敏夫は由美子の写真を取り出し、テンペストは先生と母さんの思いでの曲だろ?と聞く。昔、武は由美子にテンペストを良く弾いて聞かせたと言う。武は敏夫に、思い出の曲、テンペストを弾いて聞かせた。大沢家は希望にあふれた。
マダムが自宅に戻ると、札束が詰まったアタッシュケースと航空券、さらに椅子に腰かけ、酒を飲む人物が待っていた。「取引しようってわけ?」マダムがにやりと笑った。
裁判当日、武と実がマダム・真山の自宅に行くが、近所の女性が、真山は旅行に出かけたと教えてくれる。兄弟はあわてて羽田空港に向かい、真山を探す。
敏夫は裁判所で大沢兄弟と真山の到着を待つ。宮島家も裁判所に来て、華江と明彦が敏夫を励ました。飛行場で武と実は真山をついに見つけるが、真山に証言する気はもはやなく、二人から逃れ、どこかへ旅立ってしまった。
裁判が始まった。山田弁護士は、証人が遅れていることを理由に裁判の延期を申し出るが、裁判官は、その必要を認めず、判決が読み上げられた。
「被告人、田代敏夫を死刑に処する」
武は、真犯人に怒りを燃やすしかなかった。
敏夫は東京刑務所に収監される。護送車に乗り込む敏夫に、武と由美子は追いすがる。テンペストの楽譜を返すと言う敏夫に、武は諦めるなと叫ぶ。武は「きっと真山玲子を探し出し、助ける」と断言した。親子が、護送車の窓越しに見詰め合う。
「先生、母さん、さようなら」
「生きて!どんなことがあっても、生きて!」由美子は護送車を追いかけながら泣き崩れた。
感想。
すっきりしない回である。
全くすっきりしない。
すっきりしたのは、明彦の髪型だけだった。
すべてが空回りの回だ。
武と実は、勇んで宮島家に真相を尋ねに行くが、あっさりと追い返される。宮島家に抵抗する華江を、あやは、やはり論点をすり替えて引き留め、敏夫は学長から真相を引き出すことに成功するが、論点をすり替えたあやによって、真実の公表は止められる。正彦に真実を迫るが、あっさりとはぐらかされ、マダム・真山には翻弄されるだけ。
山田弁護士は、優秀なはずなのに、裁判のその時まで証言の本当の内容を確認しないまま終わってしまった。
大体、今まで1億円云々のくだりを忘れていたとは何事かね。しかも、信一も今頃言うなって話である。
そもそも、敏夫の死刑と、宮島音楽大学+学長の生き死には、同列ではない。それは全く別の話としてとらえるべきである。それなのに、敏夫の死刑の話をすると、あやは必ず宮島家の名誉に論点をすり替えて、華江や武の情に訴えて話の進展を妨害する。
ではどうすれば良かったのかというと、やはり正彦を免職すべきだったのだ。清司に脅された時点でそうしておけば、まだ傷は浅かったかもしれない。
その責任問題に蓋をして、宮島家の保身のみを訴えるあやは、やはり論点をすり替えているとしか言いようがない。まぁ、それは客観的に見ている者だけが言えることで、実際そうなってみれば、なりふり構っていられないのだろう。
それにしても、マダムの証言とは一体何なのだろう。一億円用意した人物が、正彦とは限らないと、マダムはほのめかしている。それほどの証言を今まで黙っていたとなると、なんだか別の問題も出てきそうだ。自分が一言いえば、大変なことになると正彦を脅してもいるが、正彦はこんなことになっても、まだ大学や宮島家に居座るつもりなのか。しかも、菊子にばれるまで、愛人関係も解消しようとしていない。ひどいね。
全く反省してないな、この男。
第十九回につづく・・・