SWEET SWEET SWEET

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赤い激流・第六回 レビュー

第五回のレビューはコチラ

「生きかえった夫の復讐」

あらすじ

敏夫は武のもとから去り、ジャズバンドでバイトをしていた。信一と華江はデートの最中にそれに出くわし、華江は敏夫を探していた武とともに、敏夫に大学に戻るよう説得する。そこへ清司が現れ、華江は清司に、父親のくせに、敏夫をだめにしているだけだ。清司にはもはやピアノを教える技術もないと言って責める。散々言われた清司は、敏夫を大沢に返す代わりに、由美子を差し出せと言う。敏夫はその場をごまかすために、華江をステージに上がらせ、電線音頭を躍らせる。信一は、怒って宮島家に告げ口する。宮島学長は華江と敏夫の振る舞いを厳しく叱り、大学に出てこない敏夫を退学させると言う。武は敏夫に代わって謝るが受け入れられない。武は敏夫が辞めるなら、自分も辞職すると言う。これほどの才能ある生徒を教えられないのなら、大学にいても仕方ないというのだ。それを聞いた学長の妻・あやは、優秀で人望のある助教授の武を辞めさせることなど許されないと言い、電線音頭を踊った敏夫を退学にさせるなら、同じく華江も退学にさせるべきと言って、二人を許すように学長に迫り、事なきを得る。
学校を辞めずに済んだが、武はなぜクラッシックピアノを辞めるのか敏夫に尋ねる。その理由は言えないと逃げる敏夫だが、公園中を追い掛け回され、あまりのしつこさに根負けする。父の恥ではあるが、大沢家でピアノを習うと、清司が大沢家をつぶすと言っていることを話す。武は、笑って、誠意をもって話し合えば、必ず道は開けると、田代清司と話し合うことにする。
二人が清司のもとに行くと、清司は睡眠薬で自殺未遂をしたところだった。幸い、命は取り留めたが、危険な状態だ。清司の絶望を知った武は、由美子に、妻としてではなく、看護婦として、清司の世話をしてくれないかと話す。由美子は拒否するが、清司の不幸に武が心を痛めているのを知ると、清司を世話することを決心する。
由美子の姿を見た途端、由美子にすがりつく清司。しかし、敏夫に止められ,さらに自分のことしか考えていない父に愛想が尽きたと言われ、逆上する。ついてきていた武にバットで殴りかかり、武は痛めていた腕をさらに傷つけてしまう。
友人の西条医師のもとに行った武は、腕の手術を勧められる。成功率は50%。手術をしなければ、ますますピアノは弾けなくなる。ならばと、手術を受ける武。
ショパンの「子犬のワルツ」を弾く華江のもとに敏夫は泣きながらすがりつく。自分のせいで動かなくなる武の腕。その罪に耐えかねて、華江に救いを求めたのだ。子供みたいに泣くしか今は方法がない。それを受け止めてほしかったのだ。敏夫はひとしきり泣くと、ピアノに向かい、練習を始めた。
手術を前に、弟の実や信一は、手術が失敗しても、生活の心配をするなと励ます。
手術の間、敏夫はピアノを弾き続けた。手術は終わった。やはり難しいものだったのだ。
手術は失敗。あと2,3か月で腕は動かなくなると西条医師は弟の実に告げる。
敏夫はそれを聞き、田代清司と自分のせいだと言って、武の前で土下座をする。敏夫の取り乱しように白を切れず、実は武に真実を告げた。
武はそれを聞いて、一瞬茫然とするが、すぐに、いずれ動かなくなる腕の寿命が、2,3か月に短くなっただけだと言って笑うのだった。あと二か月もあれば、敏夫の英雄ポロネーズを完成できると言って、希望を持つ。
父と自分のせいだと言って自分を責めるばかりの敏夫に、
「芸術に敵も味方もないよ。あるのは愛だ。愛情だけだ。
俺の後についてきてくれ。」

武はそう笑いながら言って励ますのだった。
敏夫はどうしてもやりきれなかった。いつも人を信じ、人を愛してきた武の腕は、父と自分によて奪われたのだ。
初めて、敏夫の胸に父に対する憎しみが生まれた。

しかし、ピアニストにとって命の腕が後わずかな時間しか動かないという事実に、武は不幸のどん底に突き落とされるのだった。



感想

はい、名言きた!
「芸術に敵も味方もない。あるのは愛だ。愛情だけだ」
うおー!
このセリフをこんなに力強く、笑顔で真剣に言えるのは、宇津井建しかいない!
私はそう確信する!
はい。
今日はこのセリフで全てが吹っ飛んでいった感じです。

しかし、そういってごまかさずに、お笑いポイントを抑えておこう。
まず冒頭の電線音頭についてだが、私は詳しくないのでコメントのしようがない。当時流行っていたんだろう。ただ、敏夫によると、あれを踊ると、何かパッションが生まれるらしい。そういうことにしておこう。ただ、あれが伊東四郎の過去に深く関係する何かだということは、抑えておいたほうがいいかもしれない。
それにしても、やはり赤木春江のあやはいい。どっしりと構えて、いつのまにか論点を摩り替えて敏夫の退学を白紙にしてしまった。学長は電線音頭よりも、学校に出席しない事の方をより怒っていたはずだったが、いつのまにか電線音頭によって退学させられるのは納得いかないという話の流れにしてしまったのだ。

それを遥かに凌駕するもう一つのポイントは、もちろん、武と敏夫の「公園でキャッキャウフフのおいかけっこ」だ。
いつものように武が、ピアノをあきらめる理由を問い詰めるために逃げる敏夫を追いかける場面なのであるが、場面が公園で、しかも水谷豊が滑り台やらジャングルジムなどの遊具を駆使して逃げ回るため、どう考えても雨の降る中、二人が戯れているようにしか見えない。
まぁ、それが証拠に、追いつめられた敏夫と追いつめた武は、二人顔を見合わせて笑いあうのだ。
そして、敏夫によるピアノへの言い訳が始まるのだが、ここで敏夫と武の間の、田代清司に対する認識の違いが明らかになる。
敏夫はひたすら父を恐れ、大沢夫妻への影響を心配するが、武は清司を、というか、人間を信じているため、非常に軽い返しをする。
「人間、話せば分かる」と。
視聴者は先ほどから感じていた武のどうしようもないお人よし加減に、いい加減呆れかけているのだが、この底抜けの楽天性に、降参せざるを得なくなる。
そして、彼ならば、何とかしてくれるのではないか、と希望を持つのだ。
少なくとも、私はそうだった。
しかしその希望を脆くも打ち砕く清司の狂乱。いやはや、自殺未遂後は、まさに幽鬼のごとき面相である。ルンペンと呼ぶのがふさわしい。そうかと思うと、コートはバーバリーだったりする。どうなっているのか。

そして、前述の「芸術には敵も味方も〜」のセリフ。
これは何度も言うが、宇津井健、いや大沢武でないと言えないセリフだ。彼のこれまでのおおらかさ、やさしさ、前向きさ、音楽に対する情熱の表現は、まさにこのセリフを言うためだったのだ。それがないと、このセリフには説得力が生まれないだろう。
この男なら、言いそうなことだ・・・と、テレビの前で、視聴者は苦笑を浮かべながら、彼を支持するのだ。

けれども、さすがの武もピアノを弾けなくなる事には落ち込んだらしい。
一体どうなるのか。悪い方へ悪い方へ話しは流れている。この、底抜けに明るい誠意と善意あふれる中年男の運命はどうなるのか。
いやがうえにも盛り上がったところで、次回に続く。

第七回はコチラ
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