赤い激流の思い出。
「毎朝音楽コンクール」
この、某新聞社を足して2で割ったようなコンクール名を、私は一生忘れないだろう。
このコンクールとの出会いは、まだ学生のころだったと思う。
夕方、何気なく映っていたテレビから聞こえて来る音声の中に、この名前はあった。(ちなみに、読み方は『まいちょう』である。まいあさではない)
二人の男が、このコンクールに向けて、ひたすらピアノのレッスンをしていた。
しかも、刑務所の中で。
一人はピアノの師。一人は、死刑囚の弟子。
このぶっ飛んだ設定に、私はたちまち釘付けになった。
そう、これはドラマ・赤い激流の中の、架空のコンクールなのだ。
私が見たのは、再放送だった。
もうずいぶん前のドラマなので、気にしないであらすじを書くと、このドラマは、音楽大学の助教授である大沢武(宇津井健)と、彼に才能を見出され、しかし過酷な運命に翻弄される青年・田代敏夫(水谷豊)が、一流ピアニストへの登竜門・毎朝音楽コンクールを目指す物語だ。しかし、前半の話は見落としていて、すでに主人公の水谷豊が父親殺しの容疑で逮捕されてしまった後から見始めたのだと思う。
途中から見始めたので、なぜ父親が殺害されたのか、さっぱり分からなかった。しかも、水谷豊はどうやら冤罪らしい。確か、裁判はまだ始まっていなかったと思ったが。青年が留置所にいるにもかかわらず、師・宇津井健は役所の人間を誠意で口説き落とし、弟子・水谷豊にピアノのレッスンをするのだ。
荒唐無稽といわれればそれまでだが、あらすじがさっぱり分からないにもかかわらず、私は夢中になった。
夢中にさせられるだけの、ドラマの勢いがものすごかったのだ。
役者がとにかく、熱い!今のドラマからは考えられないくらい過剰とも思える演技と演出。
しかしそれが昔のフィルム映像なだけにしっくり来る。
今のドラマにないもの、いや、今のドラマが忘れてしまったものが、確実に、ここにある。
そして毎回話が二転・三転する。
まさに激流。
ピアノコンクールが物語の骨子なのだが、視聴者がいやおうなくひきつけられる点は、殺人の真犯人は誰かということだ。
何しろ、主人公が犯人にされているのだ。冤罪であることは分かりきっている。しかも、水谷青年を救うため、ひいてはピアノコンクールに出場させるために、師である宇津井健が真犯人の名乗りを上げたりする。もちろん嘘だが。さらに水谷豊の母親役の松尾嘉代まで真犯人の名乗りを上げる。彼女は宇津井健と再婚しており、つまり夫や息子を救うためなので、もちろん嘘だ。
さらに悪いことに、登場人物それぞれがそれぞれに被害者を殺害するだけの動機を持っているのだ。誰が犯人でもおかしくはない。
みんなが疑心暗鬼になる中、宇津井健と松尾嘉代だけは、青年水谷を信じ、彼を励まし、導く。
これは師弟愛と親子愛のドラマなのだ。
宇津井健は、おなじみの誠意と博愛を持って全てを制すという役柄の演技で、熱く私たちの心を打つ。
もしかしたら、彼こそ、どの役をやっても宇津井健であると言ってもいいかも知れない。しかしそれは、本人のイメージでもって演技しているのではなく、その優しく純真、おおらかで、全てを包んでくれるキャラクターが、宇津井健にしかできないという意味で私はそう言いたいのだ。
現在のキム○クのように、何をやってもキム○クという役者といえば、このドラマで言うと、石立鉄男がそれかも知れない。彼は何をやっても石立鉄男にしか見えない。彼の強烈な個性がそうさせているのだ。しかしキム○クと決定的な違いがある。彼の演技には説得力がある。彼の個性と役柄がちゃんと融合しているのだ。彼の中に、ちゃんと役柄は生きている。そして、見るものを、強引に納得させてしまうのだ。
そして水谷豊。彼もものすごい過剰演技だ。相当ぶっ飛んだテンションで私たちや宇津井健に迫ってくる。しかしドラマを見ていくうちに、その演技が不思議でもなんでもなくなる。若き天才芸術家を、全身で表現しているのだろう。
彼のピアノ演奏の演技もすごかった。本当に演奏しているように見えた。しかしまさかテンペスト(第三楽章)が弾けるとは信じられず、毎回、母と「本当に弾いているのか」というテーマで論争を展開したものだ。
まぁ、私ごときの役者論は置いといて(ていうか、演技のことなど、私はまるっきり素人なので、あしからず)、ドラマに戻ろう。
殺人の真犯人探しと平行して、毎朝音楽コンクールは、刻一刻と迫ってくる。果たして、殺人犯としてとらわれた水谷豊はコンクールに出場できるのか。宇津井健は、弟子にピアノを教えることができるのか。犯人は誰か?怒涛の展開の中、物語は終幕を迎える。
最後の顛末のネタばれは、ここでは避ける。
しかしこのドラマ、DVD化されていないらしい。
赤いシリーズといえば、山口百恵だが、彼女は「激流」にはちょい役で一度か二度しか出ていないのだ。その他の事情があるのかどうだか知らないが、DVD化されていないから、再放送を待つしかない。私は長年、前半の見落とした部分を見たくてたまらなかったが、今年、8月からCS放送で再放送される情報をつかんで、小躍りした。
これのために、TBSチャンネルと契約したのだ。
もう一度、水谷豊のテンペストが聞ける・・・。そう思っていた。
これから、その再放送を見た感想とあらすじを記していこうと思う。
ものすごく、需要がないし、現在すでに11回目に到達しているため、レビューとしてはすごく遅れているのだが、この熱い感動を、残さないわけにはいかず、書いていこうと思っていますので、しばしお付き合いください。というか、全然無視してくださっていいのですけど・・・(汗)。
ちなみに、テーマ曲のピアノ部分は、今は亡き羽田健太郎氏が演奏している。
オープニングの動画はコチラです。音質いいです。オープニングのロングバージョンです。荘厳です。メロドラマ風です。
必聴ですぞ!
では長くなりましたが、次回からよろしくお願いします。
第一回目のレビューはコチラ
この、某新聞社を足して2で割ったようなコンクール名を、私は一生忘れないだろう。
このコンクールとの出会いは、まだ学生のころだったと思う。
夕方、何気なく映っていたテレビから聞こえて来る音声の中に、この名前はあった。(ちなみに、読み方は『まいちょう』である。まいあさではない)
二人の男が、このコンクールに向けて、ひたすらピアノのレッスンをしていた。
しかも、刑務所の中で。
一人はピアノの師。一人は、死刑囚の弟子。
このぶっ飛んだ設定に、私はたちまち釘付けになった。
そう、これはドラマ・赤い激流の中の、架空のコンクールなのだ。
私が見たのは、再放送だった。
もうずいぶん前のドラマなので、気にしないであらすじを書くと、このドラマは、音楽大学の助教授である大沢武(宇津井健)と、彼に才能を見出され、しかし過酷な運命に翻弄される青年・田代敏夫(水谷豊)が、一流ピアニストへの登竜門・毎朝音楽コンクールを目指す物語だ。しかし、前半の話は見落としていて、すでに主人公の水谷豊が父親殺しの容疑で逮捕されてしまった後から見始めたのだと思う。
途中から見始めたので、なぜ父親が殺害されたのか、さっぱり分からなかった。しかも、水谷豊はどうやら冤罪らしい。確か、裁判はまだ始まっていなかったと思ったが。青年が留置所にいるにもかかわらず、師・宇津井健は役所の人間を誠意で口説き落とし、弟子・水谷豊にピアノのレッスンをするのだ。
荒唐無稽といわれればそれまでだが、あらすじがさっぱり分からないにもかかわらず、私は夢中になった。
夢中にさせられるだけの、ドラマの勢いがものすごかったのだ。
役者がとにかく、熱い!今のドラマからは考えられないくらい過剰とも思える演技と演出。
しかしそれが昔のフィルム映像なだけにしっくり来る。
今のドラマにないもの、いや、今のドラマが忘れてしまったものが、確実に、ここにある。
そして毎回話が二転・三転する。
まさに激流。
ピアノコンクールが物語の骨子なのだが、視聴者がいやおうなくひきつけられる点は、殺人の真犯人は誰かということだ。
何しろ、主人公が犯人にされているのだ。冤罪であることは分かりきっている。しかも、水谷青年を救うため、ひいてはピアノコンクールに出場させるために、師である宇津井健が真犯人の名乗りを上げたりする。もちろん嘘だが。さらに水谷豊の母親役の松尾嘉代まで真犯人の名乗りを上げる。彼女は宇津井健と再婚しており、つまり夫や息子を救うためなので、もちろん嘘だ。
さらに悪いことに、登場人物それぞれがそれぞれに被害者を殺害するだけの動機を持っているのだ。誰が犯人でもおかしくはない。
みんなが疑心暗鬼になる中、宇津井健と松尾嘉代だけは、青年水谷を信じ、彼を励まし、導く。
これは師弟愛と親子愛のドラマなのだ。
宇津井健は、おなじみの誠意と博愛を持って全てを制すという役柄の演技で、熱く私たちの心を打つ。
もしかしたら、彼こそ、どの役をやっても宇津井健であると言ってもいいかも知れない。しかしそれは、本人のイメージでもって演技しているのではなく、その優しく純真、おおらかで、全てを包んでくれるキャラクターが、宇津井健にしかできないという意味で私はそう言いたいのだ。
現在のキム○クのように、何をやってもキム○クという役者といえば、このドラマで言うと、石立鉄男がそれかも知れない。彼は何をやっても石立鉄男にしか見えない。彼の強烈な個性がそうさせているのだ。しかしキム○クと決定的な違いがある。彼の演技には説得力がある。彼の個性と役柄がちゃんと融合しているのだ。彼の中に、ちゃんと役柄は生きている。そして、見るものを、強引に納得させてしまうのだ。
そして水谷豊。彼もものすごい過剰演技だ。相当ぶっ飛んだテンションで私たちや宇津井健に迫ってくる。しかしドラマを見ていくうちに、その演技が不思議でもなんでもなくなる。若き天才芸術家を、全身で表現しているのだろう。
彼のピアノ演奏の演技もすごかった。本当に演奏しているように見えた。しかしまさかテンペスト(第三楽章)が弾けるとは信じられず、毎回、母と「本当に弾いているのか」というテーマで論争を展開したものだ。
まぁ、私ごときの役者論は置いといて(ていうか、演技のことなど、私はまるっきり素人なので、あしからず)、ドラマに戻ろう。
殺人の真犯人探しと平行して、毎朝音楽コンクールは、刻一刻と迫ってくる。果たして、殺人犯としてとらわれた水谷豊はコンクールに出場できるのか。宇津井健は、弟子にピアノを教えることができるのか。犯人は誰か?怒涛の展開の中、物語は終幕を迎える。
最後の顛末のネタばれは、ここでは避ける。
しかしこのドラマ、DVD化されていないらしい。
赤いシリーズといえば、山口百恵だが、彼女は「激流」にはちょい役で一度か二度しか出ていないのだ。その他の事情があるのかどうだか知らないが、DVD化されていないから、再放送を待つしかない。私は長年、前半の見落とした部分を見たくてたまらなかったが、今年、8月からCS放送で再放送される情報をつかんで、小躍りした。
これのために、TBSチャンネルと契約したのだ。
もう一度、水谷豊のテンペストが聞ける・・・。そう思っていた。
これから、その再放送を見た感想とあらすじを記していこうと思う。
ものすごく、需要がないし、現在すでに11回目に到達しているため、レビューとしてはすごく遅れているのだが、この熱い感動を、残さないわけにはいかず、書いていこうと思っていますので、しばしお付き合いください。というか、全然無視してくださっていいのですけど・・・(汗)。
ちなみに、テーマ曲のピアノ部分は、今は亡き羽田健太郎氏が演奏している。
オープニングの動画はコチラです。音質いいです。オープニングのロングバージョンです。荘厳です。メロドラマ風です。
必聴ですぞ!
では長くなりましたが、次回からよろしくお願いします。
第一回目のレビューはコチラ