SWEET SWEET SWEET

手作りのお菓子やパン、料理など美味しいもの、
そして大好きな本など紹介します♪

赤い激流・第十五回 レビュー

第十四回レビューはコチラ

「殺された夫からの電話?」

あらすじ

敏夫が留置所に入れられた。警察は頭から敏夫を犯人と決め付け、敏夫の供述を全く信用しない。母由美子は敏夫の好きなものばかりを弁当に詰めて、武に差し入れしてもらう。武はいつものように江上刑事に誠意で当たり、敏夫の無実を訴えるが、半分迷惑がられている。敏夫の供述で、清司と敏夫が昼間ナイフを持って格闘した公園を大規模に捜索したが、格闘した痕跡や血痕、ナイフはついに見つからない。武と由美子も警察に混ざって捜索を手伝うが、無駄骨に終わる。
大沢家では、親戚一同が集まり、武や敏夫のことを心配していた。東山正彦は、その場で武に大学の退職金を渡す。信一は、清司が亡くなったのだから、父を大学の楽理の教授にしてもいいはずと、学長や叔父の正彦に詰め寄る。しかし、正彦は武の義理の息子の敏夫が殺人容疑で逮捕された以上、大学に戻ることは無理だと拒否する。信一は、そもそもなぜ清司が、武の辞職を宮島家に要求できたのかを知りたがるが、祖母のあやは、「華江の婚約者なら、宮島家を侮辱することはやめなさい」と、やはり論点をすり替えて説教し、黙らせた。そんな時、華江が大沢家に届いた手紙を見つける。その手紙とは、田代清司からの手紙だった。内容は、敏夫のコンクール一次予選一位通過を喜び、武に引き続き指導を頼むと言うものだった。正彦たちは、清司が生きているのかと驚くが、信一は、単なるイタズラだろうと、一笑に付す。
敏夫の拘留は続く。敏夫に有利な証拠を見つけられないまま、時間だけが過ぎて行った。敏夫のアリバイがないと言う警察に、武は何でもいいから思い出せと敏夫に詰め寄る。敏夫は、ようやくあの晩、公園で酒を飲んで浮かれていた時に、「Rykiel」と書かれたセーターを着た女性に抱きついたことを思い出した。すると華江が、そのセーターをファッション誌で見つけ出し、ブランドを特定する。そのセーターの色は、パリでしか売り出されていないものだった。武は喜んで、毎朝新聞の知り合いに、尋ね人の広告を出すことを依頼する。毎朝新聞の記者は、毎朝テレビや新聞で、大々的に広く情報を募ることを約束してくれる。
しかし、いくら待っても「Rの女」本人はおろか、目撃者すら現れなかった。そんな時、警察に一本の電話がかかってきた。田代清司を名乗る人物からだ。「俺は生きている。敏夫は俺を殺していない」と言う内容だ。警察は、いたずらとして相手にしないが、大沢家にも田代を名乗る手紙が届いていることを知る。
ついに、敏夫の起訴が決まった。
信一は静かに起訴を武に教えるが、武は、清司がフランスに恋人を持っていたことを思い出し、その女が清司を殺しにやってきたのかも…と推測を述べる。信一は、推測では何の役に立たないこと、絶対的な証拠がなければ、敏夫は尊属殺人で死刑になることを告げ、部屋を出て行く。
それを聞いていた由美子は、半狂乱になって泣き叫ぶ。
しかし武は由美子を抱きしめ、「泣いてどうする。私たちが泣いてどうする。私たちしか、敏夫君の味方はいない。私たちで必ず敏夫君を助ける」と励ますのだった。
毎朝音楽コンクールの第二次予選課題曲が決まった。
リストの「ラ・カンパネラ」。
しかし、武の指では、敏夫に最高の演奏を聞かせることはできない。武は考え抜いたすえ、宮島学長にピアノの演奏を依頼する。宮島学長は、かつてリストの演奏で世界的に評価されたピアニストだったのだ。しかし、病み上がりの学長に超絶技巧の曲は難しい。敏夫は、「学長の音楽の技術と精神を敏夫に伝えたい」と口説き落とす。妻のあやは、「あなたのピアノが、敏夫さんの中に生き続けて、将来に残るんですよ。死に花を咲かせるつもりで、やって欲しい」と懇願する。学長は、自分が死んでも、敏夫の中に自分のリストが生き残ると、希望を託して演奏に挑戦する。
演奏は無事に終わった。学長の体力の消耗は激しいが、最高の録音が出来た。学長は、「これが最後の贈り物になるかもしれない」とつぶやいた。
敏夫は拘置所に送られた。敏夫の精神は追い詰められている。全く希望を捨ててしまったようだ。コンクールのことなんて、何も話したくない。何も聞きたくないと言う敏夫に、武は学長の演奏を聞かせる。その音色に、敏夫は釘づけになった。「病気で体が弱っている学長が、最後の力を振り絞って演奏したリストだ。宮島学長はお年だ。しかしこの音は若々しい。ピアニストは、死ぬまでピアニストだ!いつまでも、若々しい音が出せるんだ」武は、日本で最高のリストを聞いてマスターすることを命じる。ピアノがないと言う敏夫に、「壁、床、すべてをピアノのキィだと思って叩け。練習しろ」と返す。
「みんな忘れて、弾け。弾いて弾いて弾きまくれ。田代君のために、弾くんだ。」そう言って、敏夫に楽譜を見せる武。
母さん、俺、先生にどこまでもついていく」
わずかに笑顔を見せる敏夫に、武は確信を持って言う。
「必ず勝つぞ。俺は、田代君に約束したんだ。君を必ず優勝させると

敏夫は拘置所の床に白墨で鍵盤を描き、練習を始めた。学長のラ・カンパネラを頭の中に響かせながら。

毎朝音楽コンクール第二次予選まで、あと一か月。


感想

きた。
尊属殺
この、「実の親を殺したら死刑」
という法律によって、今後の展開は成り立っている。
一応説明しておくと、この法律は、非常に歴史のあるもので、なんと大宝律令の昔から存在しているそうな。
しかし、このドラマのあったあたりから適用されなくなり、次第に有名無実となり、1995年には完全にその姿を消してしまった。
そういえば、昔の漫画で「親殺しは死刑じゃ」というフレーズを読んだことがある。
まぁ、これによって今後の無茶とも言える怒涛の展開もある程度許されるものになっているのだから、たとえ現代の視聴者でも、「そういうものだったんだ」と、頭から納得して見ることをお勧めする。

設定上の注意点は、これくらいにして、本日の感想。というか、お笑いポイント。
いや、お笑いポイントは後に残しておこう。そうしよう。
だって。
今回は、本当に真剣に泣いてしまったのだから!
真剣に心に迫ってきた。
どういうことだろう。いや、いいんだけど。
信一の「敏夫は尊属殺人で死刑だ」という捨て台詞を聞いていた由美子。
その反応が・・・。
まさに半狂乱。息子を理不尽すぎる理由で失う母の心情がこれでもかと迫ってきた。
髪を振り乱し、その身を投げ出して悲しむ母。
この松尾嘉代の演技は素晴らしい。必見である。

笑うのは、武。
敏夫を信じるあまり、だんだん妄想入ってきている。
いや、本来なら笑うところではないのだ。彼にしてみれば、何とかして敏夫を助けたいあまり、わらにもすがる思いなのだろう。
Rの女」のことを考え続けた結果だろうか、何の脈絡もなく、「Rの女」が殺害に関係しているという妄想を信一に話し出した!
この父の言動には信一も焦っただろうなーと、ちょっと同情してしまったよ。この宇津井健が言う「Rの女」っていう発音がまた独特で耳に残るのだが。
そういえば、Rの女が着ていたセーターがフランスでしか売られていないことを知って、パリにいる娘・紀子の先生、美津子に協力を要請しようという提案が、なぜだか具体的にならないうちに、どこかへ消えてしまった。これもまた唐突に思えるが・・・まぁ、この件はそっとしておこう。

そして、あや。
彼女は論点のすり替え女王だ。信一も検事なら、論点のすり替えにだまされるべきではないのだが、そこは華江の婿というにんじんをぶら下げられた身。反論はできない。
そういえば、信一は華江と結婚したとして、宮島家の婿に入るのだろうか?
もともと、華江は宮島家の跡取りとはっきり言っているのだから、みんなそのつもりなんだろう。
信一はどうだか知らないが。
そうなると、大沢家の跡取り問題が勃発するのだが、そこはどうなっている?
大体、信一の性格からして、婿に入るとはとても思えないのだがね。
こういうことは最初にはっきりさせておくべきだよ、信一。

最後に小ネタでお笑いポイント。毎朝新聞社の、毎朝音楽コンクール実行委員室(?)の壁は全て毎朝音楽コンクールのポスターで埋め尽くされている。
張りすぎだろ、どう考えても。

今回も疑問点が多かったが、さらに突っ込んでみると、殺人の容疑者と、面会人があんなにフランクに会えるものなのだろうか?華江なんて、面会の申し込みもせずに、雑誌を敏夫に見せてワイワイとやっている。ちょっと油断すると、かなり和気あいあいとした場面に見えた。

ちなみに、エフゲニー・キーシンによる「ラ・カンパネラ」の動画はコチラ
この動画を見れば、病み上がりの宮島学長に弾かせることがどれほど無茶なのか分かってもらえると思う・・・。
敏夫の、「床の上でラ・カンパネラ」であるが、これは水谷豊がやるからサマになると言わざるを得ない。
別のドラマで、自称・天才ピアニストの娘が「紙のピアノじゃ、指が滑って練習できない!」なんて文句を言っているのが馬鹿らしくなるほどの演技だ。


第十六回に続く・・・
comments (14) : trackbacks (0) : Edit
1/1