SWEET SWEET SWEET

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赤い激流・第七回 レビュー

第六回のレビューはコチラ

「誰が反対しても結婚します」

由美子は敏夫の住まいに泊まり込んで、清司の看病をすることになった。敏夫は清司に隠れて、大学へ行き、武からピアノを習う。大沢家では、由美子がいないため、武も率先して家事を手伝っていた。弟の実は、「早く由美子と敏夫を取り戻せ」と言うが、武は清司が心も体も弱って、自殺しかねないため、世話をさせていると説明する。実はそんな甘い考えを叱るが、武は譲らない。力ずくで清司を黙らせると実は息巻くため、武も清司のもとへ行くことになる。息子の信一は、由美子と敏夫がいない方が大沢家が平和なため、そんな二人の行動が理解できないが、実は、華江が好きなら由美子を愛する父の行動を理解しろと信一を諭す。元気を取り戻した清司は、ピアノ教室を開いて仕事をすると宣言していた。そこへ武と実が現れ、由美子を返すよう要求する。実は、この間清司に傷つけられたせいで、武の腕が悪化したことを清司に話す。清司ばかりが責められている現状に、さすがに敏夫は、みんなに「これ以上父さんに恥をかかせるな」と言って、由美子を含めて追い返す。追いかけようとする清司を敏夫は抑えるが、清司は抵抗できない。やはり清司の体力は弱っていた。敏夫に説得され、ようやく追いかける事をやめる。
由美子が大沢家に戻った。武は今までのことを詫び、もう離さないと宣言する。妙子も戻った由美子に抱きついて喜んだ。
清司は家庭裁判所に赴き、武と由美子の結婚は無効であると申し立てる。相談員(藤田弓子)は、日本国籍が戻ったのだから、清司との結婚が優先されるはずと清司に話した。あとは調停で、判断してもらうだけだ。大沢家に裁判所から出頭命令が来た。由美子は憤るが、武は、「自分たちの言い分をキチンと話せばわかってもらえる、誠意をもって話せば、田代君に負けるはずはない」といつものように慰めた。

調停が始まった。裁判官に事情を説明する3人。法的にはやはり清司と由美子の結婚が優先されるが、由美子は、田代の妻に戻るつもりは全くないこと、田代が10年前にした仕打ち、10年間音沙汰がなかったこと、いまは武と本当に幸せであることを訴えた。
武もまた、清司が死んだと信じ込んで結婚し、どんなことがあっても由美子を幸せにしたいと訴える。
裁判官(久米明)は、由美子に、ひとまず清司との結婚状態に戻すが、すぐに離婚して武と再婚することを薦める。清司は怒るが、たとえ裁判を起こしても、10年妻子を放っておいた清司は負ける公算が高いことを指摘される。これが一番妥当な判断であると説明され、清司も黙るしかなかった。調停の場から出てきた清司は、敏夫に10年前マルセイユの海に飛び込んだ時の様子を見せると言って、噴水に飛び込む。半狂乱になる清司を、敏夫と武は必死で抑え込んだ。
コンクールのために、敏夫は一日2時間しか武と練習する時間がない。武はそれでは足りないと言うが、清司がいる敏夫には、それ以上は無理だった。
そんな時、信一が武に相談する。華江の誕生パーティーで、華江に求婚するつもりであることを。そのために学長達に話を通しておいて欲しいと、頼んできたのだ。
武は、敏夫も華江を好きなことを知っており、悩む。
しかし、由美子は信一との結婚を薦める。敏夫は田代の血を引く男。感情が激しすぎて、結婚する女は、幸せになれないと考えていた。信一なら、落ち着いて、静かな家庭を築けると言う。武は敏夫に信一にないあったかさ、優しさがあると言うが、由美子は、敏夫では宮島家の跡取りである華江と結婚できるはずはないと言う。
武は宮島家に、信一のプロポーズを申し入れた。
あやは、法律家の信一なら大学の経営に向いていると言って賛成するが、叔父の正彦たちは、音楽家を夫にして学長にすべきと反対する。そして息子の明彦にも結婚の申し込みをさせると意気込む。
明彦は気の弱さから、困り果てるが、華江が自分を馬鹿にしていないことを知ると、結婚の申し込みをすることを決意する。
華江は、信一からも申し込まれると知って、敏夫にパーティーに来てくれるよう頼み、さらにその場で、結婚を申し込んでくれるよう頼むのだった。華江の想う相手は、敏夫だった。そんなこと出来るわけがないと笑う敏夫に、「女の私にこんなこと言わせるの?才能があるのに、自分の将来を決めないで」と詰め寄った。
華江のパーティーが始まった。行かないと言っていた敏夫はパーティーに潜り込む。その場で「エリーゼのために」をプレゼントし、自分も結婚を申し込んだ。敏夫の曲は、華江を感動させる。しかし、宮島学長から華江との結婚は絶対認めないと言われてしまう。非常識で、田代清司の息子である敏夫を受け入れられないと言う。あやも、宮島家を継ぐ男は、やはり敏夫ではだめだと告げる。
敏夫は傷つきながら、その場を立ち去る。
武と由美子はそのあとを追った。
恥をかいたと言う敏夫を、武は叱る。「華江が好きなら、どんなことがあっても結婚しろ、コンクールに優勝して一流ピアニストになれば、華江も無理ではない」と説得する。
そんな才能がないと笑う敏夫に、武は先ほどの曲に感動したと言う。2時間だけではなく、一日中練習しているはずと指摘する。それでもあきらめる敏夫を、武は「どうしてあきらめるのだ。私の弟子なら師の粘り強さを見習え。君なら必ずコンクールに優勝する。自分の持っているすべてを渡すから、あきらめるな」と説得。ついに由美子も、武を見習って頑張れと恋の応援をする。
敏夫は、決心する。武のすべてを自分のものにし、コンクールで優勝を目指すと。
そんな時、清司が敏夫の毎朝音楽コンクールの出場資格票を見つけ、怒りを爆発させるのだった。


感想

ようやく由美子の二重結婚に決着がついた。法律は時に残酷だが、それを行使するのは人間だ。すべての人が納得できるような結論がいつでも出せればこんないいことはない。しかしそれは夢物語なのだろう。
全てを事務的に裁く相談員を藤田弓子が演じていた。非常に若くかわいらしい。久米明の裁判官も一見事務的だが、大沢夫妻が納得できる答えを提供してくれた。大沢家の誠意に応えてくれたのだろう。
法律の冷酷さと、全てが四角四面にはいかない人生の一こまを簡単にうまく切り取ったエピソードだと思う。

さて、今回の重要ポイントは、華江の結婚問題だ。
華江の両親は既に他界しているようだが、華江が宮島家の直系である見なされている事から、どうやら華江の父が宮島学長の息子だったらしい。娘は健在であるにも関わらず、孫娘に宮島家を継がせる事しか考えていないというのも不思議な話だが、上流の血筋とはそのようなものなのだろうか。おそらく、菊子や武の前妻が結婚する頃は華江の父は生きており、正彦や武が婿養子に入る必要がなく、二人が他家に嫁いでしまったため、直系が華江しかいなくなったという事だろう。
とにかく、第一回目を見逃したためここらの事情は、はっきりした事が分からない。返す返すも悔やまれる。
今回は信一に少々笑わされた。
彼は華江にプロポーズするといいながら、華江本人には直接話した形跡が全くない。
彼が気にするのは、外堀を埋めていく事だけのように感じられる。
まず父から宮島学長に話を通してもらうというのも庶民の私から見ればなんだか奇妙だ。自分で行け。
とはいえ、昔の結婚の形とはこのようなものだったのだろう。
現代とは比べ物にならないほど、本人同士というより、家と家の結びつきという見方が大きかったのだろう。逆に言えば、家長が認めれば、本人の意思など関係ないのだ。だからこそ、信一は本人に確認せずに学長に話を通す事を優先させたという事だ。
いいとか悪いではなく、昔はある程度これが一つの文化として浸透していたのだと思う。それを忘れたり、非人間的などと言うのはたやすい。しかし長い歴史の中で、そのような結婚形態があった事は事実なのだ。
何が言いたいかというと、最近のドラマは、そこら辺を無理矢理現代の日本人が納得できるように作り過ぎではないかということだ。
戦時中や戦国時代、江戸時代でもお互い相思相愛になった者同士を結婚させようとする。それはそれで幸せなのだろうが、そうではない者もあった事を想像すると、薄ら寒い感情しか湧いてこない。感動できないのだ。
もちろんお互い気に入ったもの同士が結ばれる事ほど幸運な事はないし、見ている方も幸せになれる。しかしそれが必ずしも普通ではなかった時代に、それが普通であるような描き方をされると、もうね・・・。
まったく知らない者同士の見合い結婚でも、幸せな家庭を築いた人々もたくさんいるだろう。もちろん恋愛によって結婚した人も沢山いたのだろうが。
戦国時代の話など、もっと殺伐としていてもいいと思う。政略結婚を無理に愛情物語にしなくてもいいのではないのだろうか。何年か後には自然に夫婦になってました、みたいな物語をつくれないだろうか。

話がそれてしまった。申し訳ない。
とにかく、華江の結婚は、本人の意思とは関係のないところで進んでいくようだ。
ノブレス・オブリージュということだろうか。
しかし華江も負けていない。なんと、敏夫に向かって、「自分にプロポーズしろ」ときた。
相当鼻っ柱の強いお嬢様だ。
しかし今まで大沢家の味方だったおばあさまのあやは、自ら敏夫との結婚に反対してしまった。まぁ、それが格式ある家を守ってきた女の矜持であろう。

ここで負けない武はさすがだが、ちょっと待って欲しい。信一を忘れているのではないだろうか。はじめにプロポーズを言い出したのは信一なのに、武は敏夫しか応援していない。敏夫が結婚をあきらめる事で心がいじけ、ピアノのレッスンに支障が出ると危惧したのだろうか。結婚話を、やはりコンクールに結び付けて敏夫のやる気を引き出してしまった。表向き「好きな者同士が結ばれるのが当然で・・・」などと言っているが、敏夫が一流ピアニストになるまで、華江が一人で待っているとは限らないのだ。
そこをはっきりさせないで、話を進めるのは、やはりちょっとずれていると思える。
今回の武は、見方を変えれば、なかなかしたたかだった。

いつもは乱闘シーンをお笑いポイントに据えているが、今回の清司・敏夫・武の噴水で自殺再現シーンは、まったく笑えなかった。悲劇的過ぎて、清司の痛みがひりひりするほど伝わってきたからだ。

ちなみに、敏夫のエリーゼのためにだが、なんだか手がいつもと違って丸い気がする。別の人が弾いているのか、水谷豊本人がひいているのだろうか。

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