赤い激流・第二回 レビュー
第一回目が、まことにふがいない結果だったので、二回目をさっさとアップ。
第一回目レビューはコチラ
「育ちゆく愛にしのび寄る過去」
あらすじ
大沢武と由美子は再婚した。しかし、由美子の息子・敏夫は武を父の敵と信じて同居しようとはしない。大沢家の長男・信一もまた、父の結婚式をぶち壊した敏夫を嫌いぬいていた。
武は右腕の痛みがひどく、大学病院で友人である医師の診察を受けた。火事の時に敏夫を助けたことが原因で、腕をひどく痛め、このままピアノを弾き続ければ半年か一年のうちに、まったく動かなくなると宣告されたのだ。ピアニストである武にとって、ピアノを禁じられることは、死を意味していた。
武の弟で、世界的な名声を持つ指揮者・実(石立鉄男)は言う。「由美子さんの息子の敏夫にピアノを教えるんだ。」武と実は、敏夫にピアニストとしての計り知れない才能を感じてた。「敏夫を助けたおかげで兄さんの腕は動かなくなる、しかし、敏夫にピアノの技術をすべて伝えれば、敏夫の中に、兄さんのピアノは生き続ける」と。
武は由美子とともに敏夫のアパートを訪れた。敏夫を大沢家に迎い入れるためだ。しかし、敏夫は受け入れない。大沢武は、田代清司の敵。そう凝り固まってしまった敏夫の心を溶かすことはできない。武は、一流ピアニストになりたいなら、私の弟子になれと諭す。父の敵にピアノを習うことなどできないという敏夫に、武は、「君の才能が惜しい。私が敵でもいいじゃないか、私からピアノを習って、私を踏み台にして、一流になれ」と迫る。
その時、港に着いた船から一人の男が降り立った。
一旦は武と由美子を追い返した敏夫だが、悩んだ末、武の弟子になることを決心し、大沢家に住むことになる。武は喜んで彼を迎え、さっそくレッスンを始める。
敏夫のピアノを聞いて、宮島家の孫娘・華江(竹下景子)もその才能を確信する。しかし、信一が敏夫のジャズ仲間や由美子につらく当たるのを見て、敏夫は怒りを爆発させる。
武は、対立する二人をとりなし、敏夫に宮島音楽大学の編入試験を受けるように勧める。気が進まない敏夫だったが、信一に受かるわけがないと馬鹿にされ、意地でも合格すると意気込む。編入試験の課題曲はリストのハンガリアンラプソディ。武のしごきはきつかった。敏夫でも音を上げるほどだったが、武は、練習で傷ついた敏夫の指を自ら手当し、父の敵を討つなら、これくらいで音を上げるなと励ます。試験を控えて、敏夫は信一に、合格したら、由美子を母と呼ぶこと、自分を野良犬と呼ぶのをやめることを要求する。しかし、義理の妹・妙子にだけは、不安を吐露するのだった。
編入試験は実技の点数は最高だったが、学科試験によって不合格になってしまう。敏夫はそれを聞いて大沢家から出ていこうとするが、武と弟の実が学長に掛け合う。実技が最高なのに、国語と英語がわずかに足りないくらいで落とすなんて、とても受け入れられないと。武は学長に問う。「学長、音楽の教育ってなんですか。私は才能ある生徒を見つけて、すべてを伝える。生徒は、私の技術と精神をすべて吸収し、私に代わって成長していく。それだけです。私の考えが間違いならば、私は大学を辞めます」この言葉が学長の心を動かした。結果、敏夫は合格となった。
それを聞いた敏夫は、裏口入学だと言って武を責める。やはり学長と手を組んで、父を陥れたのだと。
そんな敏夫を武は力ずくで押さえつけ、説得する。「お前の生きる道は、ピアニストになることだ。それ以外のことは考えるな。おれなんか、足元にも及ばないピアニストになるために、小さいことはかまうな。おれは縄に括り付けてもお前を大学に引っ張っていく!」武の必死の説得を、敏夫は「ここは俺の部屋だ!出ていけ!」と、強がりながら受け入れる。初めて、武と敏夫の間に師弟、いや、親子の結びつきができた瞬間だった。
その時、敏夫のアパートに、港に降り立った男が現れた。大沢武と由美子の結婚を知り、部屋に入り込み、自分の若き日の写真を見つけて愉快そうに笑う男、その男こそ、10年前死んだはずの、田代清司。敏夫の父親だった。
感想
長いっつーの!
あらすじだけでこの長さって、もはやあらすじではないと言える。
取捨選択が出来なくてすみません。
しかし!
まだ二回目なので、状況説明もかねてあえて書きました。ここをはしょると、今後の展開に響いてくるのですよ。我慢して読んでくだされ。
それにしても濃い。とにかくエピソードを詰め込んでいる。普通のドラマだったら、今回だけで2話か3話分になったはずだ。たとえば、敏夫が大沢家に来るまでだけで1話分使ってもいいと思う。さらに、敏夫が大学受験するくだり。私はてっきり、大学の受験は次回に持ち越すもんだと思っていたが、あにはからんや、合否まで一話の中に詰め込んでしまった。すさまじいスピードである。
しかしそれだけに、無駄な部分が全くない。役者のセリフは膨大なのだが。
そして、今回思わず私は泣いてしまった。
まず宇津井健が、敏夫を合格させるために、学長に向かって演説をぶつ場面。教育者とはかくあるべしと、教えてくれる。さらに敏夫を無理やり説得し、大学に通うことを受け入れさせる場面。この場面は乱闘、格闘である。若い水谷豊を相手に大立ち回りする。しかも、説得の演技が感動的なのだ。まさに体当たりの演技。宇津井健が、ここまで激しい芝居をするとは、ちょっと予想してなかった。
それにしても、ピアニストがこんなに危険な乱闘をするとも思えないのだが・・・。
そして、敏夫だ。彼は散々傍若無人にふるまう。反発している相手には容赦しない。けれども、今回のエピソードで、彼が単なる乱暴で無礼なだけの人間ではないことがわかる。
彼が大沢家でピアノを習おうとしたのは、母の説得があったからだ。「母さん孝行のために、ピアノを習ってちょうだい」と言われると、母さんのために、と素直に大沢家に来る。そして、大学受験に失敗すると、確かに荒れ、出ていこうとする。しかしそれは、大沢家の長男、信一との賭けに負けたからではない。師である武に対して、恥ずかしくて顔向けできないからだ。そう、彼は素直で恩義を感じ羞恥心も持ち合わせた純粋な青年なのだ。
敏夫の大学行きが決まり、物事は順調に進むかに見えた。しかし、そうは問屋が卸さないのである。
ちなみに、大沢武が家で演奏していた曲は、ショパンの「木枯らしのエチュード」。「スチュワーデス物語」では、新藤真理子の得意曲だった。
第三回目レビューはコチラ。
第一回目レビューはコチラ
「育ちゆく愛にしのび寄る過去」
あらすじ
大沢武と由美子は再婚した。しかし、由美子の息子・敏夫は武を父の敵と信じて同居しようとはしない。大沢家の長男・信一もまた、父の結婚式をぶち壊した敏夫を嫌いぬいていた。
武は右腕の痛みがひどく、大学病院で友人である医師の診察を受けた。火事の時に敏夫を助けたことが原因で、腕をひどく痛め、このままピアノを弾き続ければ半年か一年のうちに、まったく動かなくなると宣告されたのだ。ピアニストである武にとって、ピアノを禁じられることは、死を意味していた。
武の弟で、世界的な名声を持つ指揮者・実(石立鉄男)は言う。「由美子さんの息子の敏夫にピアノを教えるんだ。」武と実は、敏夫にピアニストとしての計り知れない才能を感じてた。「敏夫を助けたおかげで兄さんの腕は動かなくなる、しかし、敏夫にピアノの技術をすべて伝えれば、敏夫の中に、兄さんのピアノは生き続ける」と。
武は由美子とともに敏夫のアパートを訪れた。敏夫を大沢家に迎い入れるためだ。しかし、敏夫は受け入れない。大沢武は、田代清司の敵。そう凝り固まってしまった敏夫の心を溶かすことはできない。武は、一流ピアニストになりたいなら、私の弟子になれと諭す。父の敵にピアノを習うことなどできないという敏夫に、武は、「君の才能が惜しい。私が敵でもいいじゃないか、私からピアノを習って、私を踏み台にして、一流になれ」と迫る。
その時、港に着いた船から一人の男が降り立った。
一旦は武と由美子を追い返した敏夫だが、悩んだ末、武の弟子になることを決心し、大沢家に住むことになる。武は喜んで彼を迎え、さっそくレッスンを始める。
敏夫のピアノを聞いて、宮島家の孫娘・華江(竹下景子)もその才能を確信する。しかし、信一が敏夫のジャズ仲間や由美子につらく当たるのを見て、敏夫は怒りを爆発させる。
武は、対立する二人をとりなし、敏夫に宮島音楽大学の編入試験を受けるように勧める。気が進まない敏夫だったが、信一に受かるわけがないと馬鹿にされ、意地でも合格すると意気込む。編入試験の課題曲はリストのハンガリアンラプソディ。武のしごきはきつかった。敏夫でも音を上げるほどだったが、武は、練習で傷ついた敏夫の指を自ら手当し、父の敵を討つなら、これくらいで音を上げるなと励ます。試験を控えて、敏夫は信一に、合格したら、由美子を母と呼ぶこと、自分を野良犬と呼ぶのをやめることを要求する。しかし、義理の妹・妙子にだけは、不安を吐露するのだった。
編入試験は実技の点数は最高だったが、学科試験によって不合格になってしまう。敏夫はそれを聞いて大沢家から出ていこうとするが、武と弟の実が学長に掛け合う。実技が最高なのに、国語と英語がわずかに足りないくらいで落とすなんて、とても受け入れられないと。武は学長に問う。「学長、音楽の教育ってなんですか。私は才能ある生徒を見つけて、すべてを伝える。生徒は、私の技術と精神をすべて吸収し、私に代わって成長していく。それだけです。私の考えが間違いならば、私は大学を辞めます」この言葉が学長の心を動かした。結果、敏夫は合格となった。
それを聞いた敏夫は、裏口入学だと言って武を責める。やはり学長と手を組んで、父を陥れたのだと。
そんな敏夫を武は力ずくで押さえつけ、説得する。「お前の生きる道は、ピアニストになることだ。それ以外のことは考えるな。おれなんか、足元にも及ばないピアニストになるために、小さいことはかまうな。おれは縄に括り付けてもお前を大学に引っ張っていく!」武の必死の説得を、敏夫は「ここは俺の部屋だ!出ていけ!」と、強がりながら受け入れる。初めて、武と敏夫の間に師弟、いや、親子の結びつきができた瞬間だった。
その時、敏夫のアパートに、港に降り立った男が現れた。大沢武と由美子の結婚を知り、部屋に入り込み、自分の若き日の写真を見つけて愉快そうに笑う男、その男こそ、10年前死んだはずの、田代清司。敏夫の父親だった。
感想
長いっつーの!
あらすじだけでこの長さって、もはやあらすじではないと言える。
取捨選択が出来なくてすみません。
しかし!
まだ二回目なので、状況説明もかねてあえて書きました。ここをはしょると、今後の展開に響いてくるのですよ。我慢して読んでくだされ。
それにしても濃い。とにかくエピソードを詰め込んでいる。普通のドラマだったら、今回だけで2話か3話分になったはずだ。たとえば、敏夫が大沢家に来るまでだけで1話分使ってもいいと思う。さらに、敏夫が大学受験するくだり。私はてっきり、大学の受験は次回に持ち越すもんだと思っていたが、あにはからんや、合否まで一話の中に詰め込んでしまった。すさまじいスピードである。
しかしそれだけに、無駄な部分が全くない。役者のセリフは膨大なのだが。
そして、今回思わず私は泣いてしまった。
まず宇津井健が、敏夫を合格させるために、学長に向かって演説をぶつ場面。教育者とはかくあるべしと、教えてくれる。さらに敏夫を無理やり説得し、大学に通うことを受け入れさせる場面。この場面は乱闘、格闘である。若い水谷豊を相手に大立ち回りする。しかも、説得の演技が感動的なのだ。まさに体当たりの演技。宇津井健が、ここまで激しい芝居をするとは、ちょっと予想してなかった。
それにしても、ピアニストがこんなに危険な乱闘をするとも思えないのだが・・・。
そして、敏夫だ。彼は散々傍若無人にふるまう。反発している相手には容赦しない。けれども、今回のエピソードで、彼が単なる乱暴で無礼なだけの人間ではないことがわかる。
彼が大沢家でピアノを習おうとしたのは、母の説得があったからだ。「母さん孝行のために、ピアノを習ってちょうだい」と言われると、母さんのために、と素直に大沢家に来る。そして、大学受験に失敗すると、確かに荒れ、出ていこうとする。しかしそれは、大沢家の長男、信一との賭けに負けたからではない。師である武に対して、恥ずかしくて顔向けできないからだ。そう、彼は素直で恩義を感じ羞恥心も持ち合わせた純粋な青年なのだ。
敏夫の大学行きが決まり、物事は順調に進むかに見えた。しかし、そうは問屋が卸さないのである。
ちなみに、大沢武が家で演奏していた曲は、ショパンの「木枯らしのエチュード」。「スチュワーデス物語」では、新藤真理子の得意曲だった。
第三回目レビューはコチラ。