赤い激流 第四回 レビュー
第三回のレビューはコチラ
本日続けてのエントリーです。今回も濃い。そして涙・・・。
「同居する二人の父」
あらすじ
宮島家では、毎朝音楽コンクールの話題で盛り上がっていた。宮島学長が、毎朝音楽コンクールに優勝した男に、孫の華江と結婚させ、大学も継がせると言ったのだ。東山正彦の妻で学長の娘・菊子は息子の明彦を出場させて、優勝するようにはっぱをかける。そうすれば、宮島家と大学は、東山家のものになるのだ。父の正彦のもと、明彦の特訓が始まるが、敏夫と明彦、優れているのは、明らかに敏夫だった。
明彦は両親に比べて気が弱く、そのためにピアノも上手くいかない。それに悩んでライバルであるはずの敏夫に相談するが、それが却ってあだになり、東山夫婦の怒りを買う。
大沢武の息子・信一は昔から華江のことが好きだった。しかし敏夫が来てから華江の態度が冷たいことに悩んでいる。東山家とのいさかいを見て、敏夫がいることで、今に父はひどい目に遭うと、信一は警告する。侮辱されても何も口答えしない敏夫に、武は感心するが、敏夫は「コンクールで優勝して、先生を見返すことしか考えていない」と答える。それを聞いても、武は笑ってレッスンを続けるのだった。
しかし、腕の痛みは容赦なく武を襲う。痛みに耐える武を見かねて敏夫は「先生は、弾かないで、言葉で指導してくれ」と言うが、武はやめない。「口先だけの指導で、私のピアノの技術と精神は受け継がれるわけがない」と、自ら演奏してみせるのだった。
「腕の痛みはだんだんひどくなっている。やはりあと半年ほどで動かなくなるだろう」弟の実に、武はそうつぶやいた。だが、敏夫の話題になると、表情は一変する。敏夫の成長の速さがうれしくて仕方ないのだ。実も、兄のピアノを受け継ぐ敏夫の存在がうれしかった。しかし武は腑に落ちなかった。敏夫がやけに素直なことに。実が腕のことを話したのではないかと疑うが、実は白を切り、「兄貴の誠意が伝わったんだ」と言って励ました。
敏夫がアパートに戻ると、父清司はピアノを弾いていた。やはり妻・由美子のことがあきらめられず、迎えに行くと聞かない。敏夫は必死で止めるが、ついに勝手に出て行ってしまう。敏夫はジャズ仲間の三郎と良介を連れて、大沢家の前で見張ることにしたが、父は現れなかった。朝、敏夫を発見した大沢家の人々は、信一を除いて敏夫たちを歓迎する。
そのまま大沢家でピアノのレッスンを始める武だが、敏夫はいつ清司が来るかと、気が気でない。そんな態度を武は叱るが、華江からの電話で、毎朝音楽コンクールで優勝するように励まされる。そんな時、果たして清司は大沢家の玄関をくぐった。
敏夫は家人に知られる前に清司を空地に連れ出し、母さんを不幸にしないでくれと頼むが、清司は聞く耳を持たない。そんな清司に、敏夫は訴える。10年前、清司が蒸発してから、どれほど苦労して母が自分を育てたか。まだ28だった母は、女であることを忘れて必死で生きてきたこと。その母が、やっと武と幸せになったことを訴えた。
清司は、一瞬やるせない表情になるが、すぐに気を取り直し、由美子のもとに行こうとする。敏夫は必死でそれを止めた。
敏夫を心配する武に、信一が敏夫は空地で浮浪者と乱闘していると伝える。
武が駆けつけると、乱闘に疲れて倒れている敏夫がいた。武が敏夫を抱き起こして訳を尋ねていると、傍らの男が話しかけた。
「大沢、俺だよ。しばらくだな」
そこには、死んだはずの男・田代清司がいた。
思わずへたり込む武。
そこに遅れて由美子が駆けつけた。
「由美子・・・」
4人の人間が、言葉もなく、立ち尽くしていた。
大沢家で、信一が妹・妙子に語りかけた。
「妙子・・・兄さん最初からわかっていたんだ。父さんの再婚は完全な失敗だ。ひどいことになるって・・・」大沢家に戻った4人は、ピアノの前で、不毛な論争を続けた。
ピアニストという地位だけでなく、妻と子供を奪ったと武を責める清司。敏夫は、母を捨てた父に、夫を名乗る資格はないという。武は、未亡人であった由美子と敏夫を幸せにしたかったと訴える。しかし、武は由美子に聞いてみる。清司のもとに戻る気があるのか?と。
由美子は毅然として答えた。清司のもとには戻る気がないこと。自分の中で、清司は死んだ人間であること。自分は武の妻であり、大沢家から出るつもりはないこと。
そこへ武の弟・実が入ってきた。敏夫は一旦清司を別室に連れて行き、落ち着かせようとする。しかし、清司は全く聞こうとしない。
武は敏夫に聞いた。自分から離れて、清司とともに暮らすのか、と。
敏夫は答える。「離れない!どうして自分が先生から離れられるんですか。先生の手は、俺の命を救ってくれたせいで動かなくなる。それなら、自分が先生の音楽の技術と精神すべてを受け継いで、先生の右腕になるしか恩返しの方法はない。おれは一生、先生のそばにいます。離れません!俺の父は、田代清司だ。でも、俺を本当に育ててくれるのは・・・あんただ!ピアノを教えてくれるのは、先生しかいない!俺を見捨てないでください!俺にピアノを教えてください!」武はそんな敏夫を抱きしめた。「わかった!離さん、離さんよ!」
師弟が、本物の師弟として心で結びついた瞬間だった。
実は清司に物の道理を説くが、それも聞く相手ではない。実は昔天才と呼ばれた男ならば、二人を捨てた事実と向き合い、ちゃんと生きてほしいと訴える。実の誠意ある態度にようやく清司も動いた。当面由美子たちをあきらめる代わりに、大沢家に、自分を匿うよう要求してきた。実は当然怒るが、武はそれを受け入れる。清司だけを悲しませることはできないと、当分、大沢家で同居することを認めた。
感想
泣けたー(ToT)
感動の嵐だったよ・・・。
その前もやっぱり乱闘で笑ったんだが・・・。
一つずつ見ていこう。(笑)
今回の泣き所は、なんといっても敏夫が武に
「血のつながった父は田代清司だが、俺を育ててくれるのは、あんただ!」
と宣言する場面。
今までの流れに乗ってきて、これほどカタルシスを得るセリフがあるだろうか?
まさに、武はこのセリフのために、東奔西走してきたと言ってもいい。
また、水谷豊の演技も最高に泣かせる。
これ以上ないほど切羽詰まった表情。自分が必要とするものを、ひたすら求める純粋さ。
今までの傍若無人な演技は、この場面で最大限に生きてくる。
あれほど武に反抗していた敏夫の変化と成長を、視聴者はまざまざと見せつけられるのだ。
くさいとか、大げさとかいう評価は、この演技の前には沈黙するしかない。それだけの迫力がある。
これぞ師弟愛。
名場面だ。
次に、緒方拳演ずる田代清司が本格参戦である。
今回の乱闘の場面は、この緒方拳と水谷豊の乱闘だ。どうしても妻に会いたい父と、母に会わせたくない息子のぶつかり合いだ。
いやー、すごい。
唖然茫然である。
ピアニストが乱闘をするな!と言うのもむなしくなるほどのすさまじさだ。
どうしても笑える。
緒方拳はこれ以上ない濃い演技だ。
一昔前のチンピラのイメージって、こんな感じだよなぁ・・・とオモタ。
とにかく、人のいうことを聞きやしない。敏夫が何を言っても、「大沢が憎い。由美子に会いたい」そればっかりである。
彼は天才と呼ばれたピアニスト。その彼が10年間一人の男を憎み続けたのだ。もはや強迫観念に取りつかれていると言ってもいいだろう。しかも、彼には金も、地位も、国籍すらない。自分を天才足らしめたピアノの技術すら、もはや意のままにならないのだ。
そんな彼が、自由になるのは、大沢を憎み、由美子を求める心だけだ。
これからが本当の闘いです。
緒方拳、とにかくすごい演技です。とても晩年の枯れた演技を同一人物がやっているとは思えません。怖いです。
ちなみに、敏夫のアパートの大家さん(?)は初井言榮である。大映ドラマでは非常にお世話になった方。厳格な祖母の役などがはまり役だったが、このドラマではコミカルな演技を見せてくれる。わかりやすく言うと、天空の城・ラピュタのドーラの声の人です。
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本日続けてのエントリーです。今回も濃い。そして涙・・・。
「同居する二人の父」
あらすじ
宮島家では、毎朝音楽コンクールの話題で盛り上がっていた。宮島学長が、毎朝音楽コンクールに優勝した男に、孫の華江と結婚させ、大学も継がせると言ったのだ。東山正彦の妻で学長の娘・菊子は息子の明彦を出場させて、優勝するようにはっぱをかける。そうすれば、宮島家と大学は、東山家のものになるのだ。父の正彦のもと、明彦の特訓が始まるが、敏夫と明彦、優れているのは、明らかに敏夫だった。
明彦は両親に比べて気が弱く、そのためにピアノも上手くいかない。それに悩んでライバルであるはずの敏夫に相談するが、それが却ってあだになり、東山夫婦の怒りを買う。
大沢武の息子・信一は昔から華江のことが好きだった。しかし敏夫が来てから華江の態度が冷たいことに悩んでいる。東山家とのいさかいを見て、敏夫がいることで、今に父はひどい目に遭うと、信一は警告する。侮辱されても何も口答えしない敏夫に、武は感心するが、敏夫は「コンクールで優勝して、先生を見返すことしか考えていない」と答える。それを聞いても、武は笑ってレッスンを続けるのだった。
しかし、腕の痛みは容赦なく武を襲う。痛みに耐える武を見かねて敏夫は「先生は、弾かないで、言葉で指導してくれ」と言うが、武はやめない。「口先だけの指導で、私のピアノの技術と精神は受け継がれるわけがない」と、自ら演奏してみせるのだった。
「腕の痛みはだんだんひどくなっている。やはりあと半年ほどで動かなくなるだろう」弟の実に、武はそうつぶやいた。だが、敏夫の話題になると、表情は一変する。敏夫の成長の速さがうれしくて仕方ないのだ。実も、兄のピアノを受け継ぐ敏夫の存在がうれしかった。しかし武は腑に落ちなかった。敏夫がやけに素直なことに。実が腕のことを話したのではないかと疑うが、実は白を切り、「兄貴の誠意が伝わったんだ」と言って励ました。
敏夫がアパートに戻ると、父清司はピアノを弾いていた。やはり妻・由美子のことがあきらめられず、迎えに行くと聞かない。敏夫は必死で止めるが、ついに勝手に出て行ってしまう。敏夫はジャズ仲間の三郎と良介を連れて、大沢家の前で見張ることにしたが、父は現れなかった。朝、敏夫を発見した大沢家の人々は、信一を除いて敏夫たちを歓迎する。
そのまま大沢家でピアノのレッスンを始める武だが、敏夫はいつ清司が来るかと、気が気でない。そんな態度を武は叱るが、華江からの電話で、毎朝音楽コンクールで優勝するように励まされる。そんな時、果たして清司は大沢家の玄関をくぐった。
敏夫は家人に知られる前に清司を空地に連れ出し、母さんを不幸にしないでくれと頼むが、清司は聞く耳を持たない。そんな清司に、敏夫は訴える。10年前、清司が蒸発してから、どれほど苦労して母が自分を育てたか。まだ28だった母は、女であることを忘れて必死で生きてきたこと。その母が、やっと武と幸せになったことを訴えた。
清司は、一瞬やるせない表情になるが、すぐに気を取り直し、由美子のもとに行こうとする。敏夫は必死でそれを止めた。
敏夫を心配する武に、信一が敏夫は空地で浮浪者と乱闘していると伝える。
武が駆けつけると、乱闘に疲れて倒れている敏夫がいた。武が敏夫を抱き起こして訳を尋ねていると、傍らの男が話しかけた。
「大沢、俺だよ。しばらくだな」
そこには、死んだはずの男・田代清司がいた。
思わずへたり込む武。
そこに遅れて由美子が駆けつけた。
「由美子・・・」
4人の人間が、言葉もなく、立ち尽くしていた。
大沢家で、信一が妹・妙子に語りかけた。
「妙子・・・兄さん最初からわかっていたんだ。父さんの再婚は完全な失敗だ。ひどいことになるって・・・」大沢家に戻った4人は、ピアノの前で、不毛な論争を続けた。
ピアニストという地位だけでなく、妻と子供を奪ったと武を責める清司。敏夫は、母を捨てた父に、夫を名乗る資格はないという。武は、未亡人であった由美子と敏夫を幸せにしたかったと訴える。しかし、武は由美子に聞いてみる。清司のもとに戻る気があるのか?と。
由美子は毅然として答えた。清司のもとには戻る気がないこと。自分の中で、清司は死んだ人間であること。自分は武の妻であり、大沢家から出るつもりはないこと。
そこへ武の弟・実が入ってきた。敏夫は一旦清司を別室に連れて行き、落ち着かせようとする。しかし、清司は全く聞こうとしない。
武は敏夫に聞いた。自分から離れて、清司とともに暮らすのか、と。
敏夫は答える。「離れない!どうして自分が先生から離れられるんですか。先生の手は、俺の命を救ってくれたせいで動かなくなる。それなら、自分が先生の音楽の技術と精神すべてを受け継いで、先生の右腕になるしか恩返しの方法はない。おれは一生、先生のそばにいます。離れません!俺の父は、田代清司だ。でも、俺を本当に育ててくれるのは・・・あんただ!ピアノを教えてくれるのは、先生しかいない!俺を見捨てないでください!俺にピアノを教えてください!」武はそんな敏夫を抱きしめた。「わかった!離さん、離さんよ!」
師弟が、本物の師弟として心で結びついた瞬間だった。
実は清司に物の道理を説くが、それも聞く相手ではない。実は昔天才と呼ばれた男ならば、二人を捨てた事実と向き合い、ちゃんと生きてほしいと訴える。実の誠意ある態度にようやく清司も動いた。当面由美子たちをあきらめる代わりに、大沢家に、自分を匿うよう要求してきた。実は当然怒るが、武はそれを受け入れる。清司だけを悲しませることはできないと、当分、大沢家で同居することを認めた。
感想
泣けたー(ToT)
感動の嵐だったよ・・・。
その前もやっぱり乱闘で笑ったんだが・・・。
一つずつ見ていこう。(笑)
今回の泣き所は、なんといっても敏夫が武に
「血のつながった父は田代清司だが、俺を育ててくれるのは、あんただ!」
と宣言する場面。
今までの流れに乗ってきて、これほどカタルシスを得るセリフがあるだろうか?
まさに、武はこのセリフのために、東奔西走してきたと言ってもいい。
また、水谷豊の演技も最高に泣かせる。
これ以上ないほど切羽詰まった表情。自分が必要とするものを、ひたすら求める純粋さ。
今までの傍若無人な演技は、この場面で最大限に生きてくる。
あれほど武に反抗していた敏夫の変化と成長を、視聴者はまざまざと見せつけられるのだ。
くさいとか、大げさとかいう評価は、この演技の前には沈黙するしかない。それだけの迫力がある。
これぞ師弟愛。
名場面だ。
次に、緒方拳演ずる田代清司が本格参戦である。
今回の乱闘の場面は、この緒方拳と水谷豊の乱闘だ。どうしても妻に会いたい父と、母に会わせたくない息子のぶつかり合いだ。
いやー、すごい。
唖然茫然である。
ピアニストが乱闘をするな!と言うのもむなしくなるほどのすさまじさだ。
どうしても笑える。
緒方拳はこれ以上ない濃い演技だ。
一昔前のチンピラのイメージって、こんな感じだよなぁ・・・とオモタ。
とにかく、人のいうことを聞きやしない。敏夫が何を言っても、「大沢が憎い。由美子に会いたい」そればっかりである。
彼は天才と呼ばれたピアニスト。その彼が10年間一人の男を憎み続けたのだ。もはや強迫観念に取りつかれていると言ってもいいだろう。しかも、彼には金も、地位も、国籍すらない。自分を天才足らしめたピアノの技術すら、もはや意のままにならないのだ。
そんな彼が、自由になるのは、大沢を憎み、由美子を求める心だけだ。
これからが本当の闘いです。
緒方拳、とにかくすごい演技です。とても晩年の枯れた演技を同一人物がやっているとは思えません。怖いです。
ちなみに、敏夫のアパートの大家さん(?)は初井言榮である。大映ドラマでは非常にお世話になった方。厳格な祖母の役などがはまり役だったが、このドラマではコミカルな演技を見せてくれる。わかりやすく言うと、天空の城・ラピュタのドーラの声の人です。
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